2018年8月 8日 (水)

芥川賞受賞・高橋弘希インタビュー「戦争を書く理由」

――戦争文学の傑作とも言われる大岡昇平の『野火』に似ている、という声もあったようですが、もともと読んではいたのですか?
高橋 いえ、読んだのは「似ている」と指摘されてからです。大岡作品に限らず、『指の骨』を書くまで、戦争文学と呼ばれるものはほとんど読んでいなかったんです。でも、『野火』は確かに読んでみると、局所的にすごい似ていてびっくりしました。
――どんなところですか?
高橋 自然描写の緻密さとか。まさに観察者の目線だと思いました。
――そのあと大岡作品をどんどん読み進めたりしたんですか?
高橋 いや、『野火』だけですね。
――他の作家の戦争文学はどうですか。
高橋 古山高麗雄『プレオー8(ユイット)の夜明け』を読みました。大学の図書館で「芥川賞全集」に収録されているのを、たまたま見つけたんです。古山さんはラオスの俘虜収容所に転属したところで終戦を迎え、戦犯容疑でベトナムのサイゴン中央刑務所に拘留されるんですが、そこでの監獄生活をコミカルに描いた小説ですよね。
――高橋さんは大岡昇平の対談集『対談 戦争と文学と』の文庫版に解説を寄せていますが、そこでも大岡・古山対談が興味深かったとして『プレオー8の夜明け』について触れていますよね。
高橋 そうでしたね。やはり観察者の視点が鮮やかな小説だなあと印象に残っていたんですね。特に、主人公がチーホア刑務所からサイゴン中央刑務所に移される時に小型トラックから見る風景。サイゴンの賑やかな街並みと、コンガイ(安南娘)を間近に見て、それに喚起されて自分の妻を思い出す場面とか。
人じゃなくて、場所も消えて行ってますよね
――高橋さんは79年生まれですが、子どもの頃、戦争に関する教育って何かありましたか?
高橋 道徳の授業かなあ。原爆のことを知るためのビデオを見たり、原爆の資料的な白黒のパネル写真を見たことはよく覚えています。小4くらいの時だったと思いますが、子どもにとっては過激な風景で、なかなか忘れられないです。あとは、『はだしのゲン』とか『火垂るの墓』とか。能動的に見るわけではなくて、夏休みの昼間、テレビでやっているのをなんとなく見ていたり、という程度ですが。

――ご家族に戦争体験者はいましたか?
高橋 父方の祖父が大陸方面で、母方の祖父が南方に行ってたそうです。直接話を聞くことはなかったんですけど、親経由でそういう話は聞いてました。
芥川賞が高橋弘希さんの『送り火』(『文學界』5月号掲載)に決定しました。1979年生まれにして、これまで『指の骨』『朝顔の日』など戦争を題材にした小説にも取り組んできた高橋さん。その思いを伺った「文春オンライン」2017年8月のインタビュー記事をあらためてどうぞ。
――ちょうどこの8月に『指の骨』が文庫化されましたが、2014年の新潮新人賞を受賞したこの作品はニューギニア戦線の野戦病院を舞台にした精緻な作品で、「戦争を知らない世代による新たな戦争文学」が突如出現したと話題となりました。でも、もともとはニューギニアを舞台にするわけでも、当時のことを書くわけでもなかったそうですね。
高橋 はじめは大学生がグアムに卒業旅行に行く話を書いていたんです。完全に現代の話として。それで、大学生がグアムに慰霊の旅に来ている爺さんに会って話している場面を書いていたら、どうも爺さんの話していることのほうが面白いぞ、と筆がのってきて。それで、書き直すことにして、結局は太平洋戦争中のニューギニア、負傷した一等兵が臨時野戦病院に収容されて、そこで体験したものを一人称で書くという小説にしたんです。
――病舎の屋根を直しに行った兵が屋根から落ちて死んでいた、という淡々とした描写の一方で、ジャングルの葉っぱの肉厚さや葉脈の色、食べると痙攣する「電気芋」を掘り出したときの様子など、風景が事細かに描かれているのが印象的でした。どうしてここまで微細に書けたんでしょうか。
高橋 自然の他にも、たとえば三八式歩兵銃はどんな型をしていたのか、弾はどんな感じだったかなんて想像で書けないですから、もちろん資料を参考にしました。できるだけ細かく書いたのは本当っぽく、見てきたかのように書こうと思ったからですね。特にこの作品は、主人公の目で見たものを書いたので。
―この作品で新潮新人賞を受賞されたとき、選考委員の中村文則さんが「観察者」「部外者の悲しみ」がある作品だ、と評されていました。

高橋 確かに、なるほどそうだなあと自分でも思ったくらい、ありがたい言葉でした(笑)。先輩作家では、太平洋戦争を舞台にした『神器』も書かれている奥泉光さんにも何かのパーティで一度、お話を伺ったことがあります。
《参照:芥川賞受賞・高橋弘希インタビュー「戦争を書く理由」》

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2018年7月26日 (木)

「小説は、紙と鉛筆さえあれば書ける」高橋弘希氏

「小説は、紙と鉛筆さえあれば書ける」

 さまざまな本を読み込んで、「今度は自分が書きたい!」と小説を手がけ始める人も多いけれど、高橋さんは「自分はそういうのじゃないですね」とあっさり言う。

 ならば、なぜものを書き始めたのか。どうして小説だったのだろう。

「とりあえず小説は、紙と鉛筆さえあれば書けるんで。小説にハマっていた大学生のある時期に、そのままの流れで自分も書いてみて、そのまま書くことにもハマってしまった」

 動機はシンプル。その原動力となったのは?

「書いていて、うまくいった! という実感が持てたときはおもしろさを味わえるかな。ある場面を書いているとして、そこがうまくいけば、ああよかったなと満足します」

《参照:芥川賞受賞・高橋弘希インタビュー「小説と将棋は似ているかもしれない」

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2018年6月26日 (火)

文壇バー「風紋」が閉店ー東京新聞26日夕刊

無頼派作家の太宰治と交流があった林聖子さん(90)が東京・新宿で営むバー「風紋(ふうもん)」が二十八日、五十七年の歴史に幕を下ろす。太宰が入水自殺してから七十年の節目に、檀一雄や中上健次ら多くの作家に愛された文壇バーの灯が消えることを、常連客らは惜しんでいる。 (増井のぞみ)
22日に店で「風紋終幕の会」が開かれ、常連客が集まった。二十代のころから通う井本元義さん(74)は「林さんは静かに客の話を聞いてくれる。詩情や歴史、知性がある」。作家森まゆみさん(63)も「ピュアな人柄で、いつ来ても居心地がよかった」。口々に店との別れを惜しんだ。《参照: 太宰ゆかり 文壇バー「完」 小説のモデル女性経営半世紀 新宿の「風紋」あさって閉店
 文芸誌「海」第2期に執筆している井上氏も通っていることが、記事に出ている。
林聖子氏の話は昨年のコスモス忌で聴いた。《参照参照: バー「風紋」の林聖子氏が森まゆみ氏に父と文壇人を語る(上)》

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2018年6月21日 (木)

筒井康隆さん新刊「誰にもわかるハイデガー」を語る

今回の本は筒井さんが平成2年に行った講演が基になっている。その2年ほど前、後のベストセラー小説『文学部唯野教授』などの執筆に追われた筒井さんは、胃を痛めて入院。死が身近にある病院生活の中、手に取ったのが『存在と時間』だった。約1カ月で通読し「死を魅力的にとらえている。これを分かりやすく、面白く伝えたい」と思ったという。
 「死への恐怖は自分固有のものだから、どんなに仲間を集めたってやはり震え上がる。でも死が避けられず来ることを認識し、きちんと向かい合うことで自分のすべきことに『真剣さ』がうまれる-というわけです。将来死ぬということに落ち込む人は相当いるけれど、これで多少はね、気が楽になると思うんです」

 出版から90年が過ぎても『存在と時間』への関心は衰えず、国内でも入門書や新訳の刊行が相次ぐ。興味深いのは死をめぐる思想だけではない。〈世間に流通している普通の既成の解釈のパターンで何でもしゃべってしまうしゃべり方〉などと説明される〈空談(くうだん)〉への批判的なまなざしは、瞬く間にネット上で言葉が拡散するSNS全盛時代に重く響く。
  
《参照:産経=筒井康隆さん新刊「誰にもわかるハイデガー」 死を思い、生を見る

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2018年6月 5日 (火)

村上春樹さんTOKYOFM放送でDJ番組を開始へ

  人気作家の村上春樹さん(69)が、初めてラジオのディスクジョッキー(DJ)を務めることになった。
  TOKYO FM(全国38局ネット)で8月5日に放送される番組「村上RADIOレディオ」で、「RUN&SONGS」をテーマに自ら選曲も行い、くつろいだ雰囲気で話す。村上さんはこれまで国内のテレビやラジオに出演したことがないといい、肉声が聴ける貴重な機会として注目を集めそうだ。
 放送は午後7時からの55分間(一部地域で時間帯が異なる)。村上さんはラジオに愛着を持っており、若い頃にはジャズ喫茶を経営するなど、音楽への造詣も深い。一方でランニング歴も長く、フルマラソンを何度も完走するほど。
《参照:村上春樹氏がラジオDJ挑戦へ

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2018年5月17日 (木)

坂本龍馬ファンに問題提起する穂高健一

 幕末、明治維新に新資料を提示して歴史小説「芸州広島藩 神機隊物語」を書き、話題になっている穂高健一が、坂本龍馬ー「龍馬の真贋ならば」、「芸藩志・第81巻」を読みたまえ」--を説いている。歴史は書き換えられていくということか。

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2018年4月10日 (火)

柳美里さんが書店「フルハウス」を福島で開店

  芥川賞受賞作家で福島県南相馬市在住の柳美里さん(49)が店長を務める書店「フルハウス」が9日、同市小高区東町にオープンした。柳さんは、書店が近くのJR小高駅で電車を待つ高校生の居場所になったり、市外の人が訪れる新たなきっかけになったりすればと願っている。
  夏ごろには、カフェを併設も考えも。「つらいときに別世界の扉をあけられるような本を選んだ」という。開店にあたっては、昨年クラウドファンディングで募金を募ったという。

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2018年4月 8日 (日)

赤井都さん~桜色の時間が通り過ぎたらもっと春色満開号~

  ■「そっと豆本、ふわっと活版、ほっこりお茶4」ご案内(2018年4月26日~5月16日) 
  風薫る五月、今年も8階茶道具売場にて、豆本と活版印刷の展示販売会と ワークショップを開催致します。 会場には赤井都による豆本作品と、Bird Design Letterpressによる活版作品とステーショナリーが並びます。 繊細な技術による作品と、特別開催のワークショップをこの機会に是非 お楽しみ下さい。皆様のお越しを心よりお待ちしております。
  会 期:2018年4月26日(木)~5月16日(水)※最終日は16:00まで
  ※5月12日(土)、13日(日) 活版ワークショップ・ローマ字名とワンポイントを入れたメッセージカードを活版印刷 ・2,000円(税込)予約不要(随時受付)所要時間約20~30分
  ※5月6日(日) 豆本ワークショップ
  ‣赤井都のオリジナル超短編を「布表紙のアコーディオン折豆本にします。・3,240円(税込)所要時間約40分予約優先(予約・問合せ052-264-5387)会 場:あーと・すぽっと(丸栄8階茶道具売場 名古屋市中区栄3-3-1)
出展者:赤井都、Bird Design Letterpress 協力:andantino、弘陽(三木弘志)
  ■アリス初版本を触ったこと
  国際古書市が銀座で開かれたので、かげろう文庫さんにご案内をいただき、雰囲気を見ようと行ってみたら、カタログには掲載されていなかったアリス初版本が出品されていました。「博物館と違って、何でもお客として、触
れるのが古書市のすごいところなんですよー」と聞いていたので、思い切って、イギリスから来たそのお店の方
に、ガラスケースから出してもらいました。見て、触れてみたら、うっかり、買いそうになりました。150万円。
買えなくはないけれど、そのあと、むっちゃ貧乏生活になりそうでした。頭を冷やすようにその場を離れました。
赤い布表紙のマクミラン版。扉の絵とタイトルの間にはグラシン紙が綴じ込まれていました。テニエルが気に入らなくて、アメリカへ行って刷り直しになったという挿絵は、小口木版の小さなサイズでインク少なめな繊細な線でした。表表紙には金線で四角い枠、裏表紙の中心に丸でチェシャ猫の顔が金箔押しされていました。いい体験をさせてもらいました。アリス初版本がうちにあっていいかも、という、夢を見させてもらいました。キャロルが一生懸命作った本だから、魅力を感じたんだろうか? 本の魅力って何だろう? と、改めて考えさせられる出来事でした。 本の魅力って、何なんでしょう?
 《参照:サイト言壺
   ■オーダーメイドについてFAQ
   これまでずっと自分が作りたいように豆本を作ってきて、今はデザインやテーマから、人様のご要望に応えて作りたい心境になっています。
    「こんな豆本を私のために作ってほしい」というご要望は、自費出版の豪華版のミニ版になりますので、30万円くらいのご予算をお考え下さい。 オーダーメイド製本・修理・改装は、カウンセリング・ご提案・デザイン料・材料費・印刷代・手製本費用等がかかってくる、お一人のための製本プロジェクトとなります。赤井都のノウハウを、あなたの新しい本のためにお役立て下さい。 メール、お電話、お手紙などでお気軽にお問合せ下さい。
お電話は、平日毎日13時頃、大丈夫です。
   「こんな豆本を作って売ってほしい」という出版のリクエストでしたら、どう実現するかはわかりませんが、言ったものがちとして、いつでもご希望を囁いて下さい。『銀河鉄道の夜』『近代ミステリ』『絵本』、リクエストはちゃん
と覚えています。まだ着手しませんすみません。

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2018年3月12日 (月)

絶版の穂高健一「二十歳の炎」(日新報道)の高騰が収まるか

  明治維新の歴史を解明した穂高健一の「二十歳の炎」(日新報道)が、アマゾンなどでは絶版本として希少価値が出て、いっとき3万円台まで暴騰した。作者が手持ちや在庫をかき集めて市場に流し、3000円台まで下がった。  それも、焼け石に水で、現在は8250円である。(2018.3.10)。
 珍しい事例だが、これからどうなるか?
 穂高健一著『広島藩の志士』(1600円+税)が広島・南々社から、3月12日に全国の書店・ネットで販売される。同書は、「二十歳の炎」(日新報道)の新装版である。「まえがき」「あとがき」「口絵」が付加されている。《参照:穂高健一ワールド
 「二十歳の炎」の帯には『芸州広島藩を知らずして幕末史を語るなかれ』と銘打った。絶版本が高額のために、大勢の方々に幕末の広島藩の役割を知ってもらうことができなくなった。
こんどそれが、『広島藩の志士』(1600円+税)として出る。3月12日に全国の書店・ネットで販売される。同書は、「二十歳の炎」(日新報道)の新装版である。「まえがき」「あとがき」「口絵」が付加されている。

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2018年3月 3日 (土)

赤井都「言壺便り」~桃色の時間に爪の先ひっかかる号~

  言壺便り(メールマガジン)2018.3.2 No.146。
■蔵書票のオーダー承ります=1月のLe Petit Parisienでの展示の後、蔵書票のオーダーをいただきまして、お名前刷りなどを初めてしてみました。
 製本に何かつなげようと、刷りあがった蔵書票を、単に紙束としてお渡しするのではなく、ピッタリサイズで函を作ってみました。クラシカルな雰囲気にしました。革と金がとにかく今は好きなので。票主になる方は本好きで蔵書票をオーダーされるわけなので、お名前を著者名のような雰囲気でタイトルと一緒に箔捺したらよいよねと、やってみました。
  作ってみて、喜んでいただけて、私自身も、「あー本じゃなくても楽しいんだー」と、刷りと製函の魅力に気づきました。この調子で、あと二件くらいなら、蔵書票を刷れそうなのでもし、「私も欲しい!」という方がいたら、メールを下さい。28000円+送料1000円で30枚ずつ二種60枚、お名前入りの函つきで、4月頃の出来上がりとなります。
  色は青系、赤系、紫、緑、茶などざっくりご指定いただき、紙は和紙、お名前はローマ字センチュリー12ポイントでデザイン詳細はお任せ下さい。先着順に受け付けします。ご遠慮なくどうぞ!
■二月から三月へ
 2月28日に、オヤ今月最後の日だ! 言壺便りを発行しよう、と思ってから、なぜ今日が3月2日なのか? 謎が深い言壺便り・桃の節句前日号となっています。時間が流れ去る方に、爪の先をひっかけてしがみついて仕事を進めているようなかんじがします。
でも、ひとつずつの時間はゆったりと流れていて、人と会ったり、本を修理したり、印刷したり、ひとつずつ焦らずに、集中して楽しんでいます。
手作りにふさわしい小さなオーダーをいただき、手作りで小さく応えています。「今・ここ・自分」に集中するのはできています。ただこの方式だと、刹那的に生きているので、先のことがいまひとーつ考えにくくなって、ある意味、「のんびりしてる」に近い状態になっています。それくらい、先のことを考えず、今を楽しめています。良いのか悪いのか、ともかく、これまでの時間の流れとは違ったフェーズに出てきていて、時間の滝は桃色の山に流れていて、私は爪の先で爪渡りしています。
■言壺便りについて
掃除機を買い替えました。ハンディでも吸えて、仕事部屋から謎の灰色の綿埃的なものをどんどん吸い取っています。もしかしてやすりかけしたボードのかすが、あちこちに降り積もっていたのかなー。でもこれで安心。進化した新しい掃除機で、部屋をピカピカにしています。
バレエは、ちょこっとうまくなってきたみたいですよ! 今月からポワントシューズを履き始めますよ。怪我しないように、趣味として楽しみます。~毎月ほぼ25日
《参照:赤井都・言壺

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