2008年11月 9日 (日)

「同人雑誌評」「文學界」2008年12月号、担当・松本道介氏

《対象作品》「うさぎ」井藤藍(「法螺」59号/交野市)、清水信(「火涼」59号/鈴鹿市)、「JUST」ひわきゆりこ(「胡壷」7号/福岡市)、「暗い部屋にたどり着くまで」須崎隆志(「札幌文学」72号/札幌市)、「たまゆれ」青木創(「蠍」48号/諏訪市)、「幻の鳥」中津川良一(「ん」第10集/広島市)、「風景―山の家―」山口馨(「渤海」56号/富山市)、「坂の町の家族」難波田節子(「遠近」35号/東京都)、「存在価値」フランクリン水脈子(「北門文学」10号、秋田市)、「会津の女(後編)」宮原敏博、「川の匂い」河合愀三(以上「龍舌蘭」174号/宮崎市)、「ママの細道」鷹宮さより(「りりっく」18号/川口市)、「恋ひめやも」山名恒子、「戦時の作品を顧みるということ」石垣貴千代(以上「游」19号/東京都)、「ベルタ・フォン・サイコンハイム」岩崎芳秋(「文芸事始」26号/所沢市)、「猫の耳」藍崎道子(「こみゅにてぃ」79号/和光市)、「明日もまた」葉山弥世、「『放浪記』を創る 放浪の女(ひと) 林芙美子」、「戯曲 軍縮の人」天瀬裕康(以上「広島文藝派」23号/廿日市市)、「夏の修羅」服部進(「北狄」344号/青森市)
ベスト5=「うさぎ」井藤藍、「坂の町の家族」難波田節子、「暗い部屋にたどり着くまで」須崎隆志、「川の匂い」河合愀三、「存在価値」フランクリン水脈子。
2008年下半期同人雑誌優秀作
「イエスよ涙をぬぐいたまえ」江口宣(「九州文学」)
奨励作
「香花」米沢朝子(「高知文学」)、「教室はやり唄」亜木康子(「湧水」)
他候補作
「ミゼット」吉田典子(「サボテン通り」)、「JUST」ひわきゆりこ(「胡壷」)、「うさぎ」井藤藍(「法螺」)

ひわきさん作品は、またしても、快挙ですね。ベスト5に入らずに、優秀作候補に入っています。
なお、みなさんご承知のとおり、今号をもって、「文學界」での「同人雑誌評」は最終回だったので、評者4名による座談会「同人雑誌よ永遠に」が組まれ、「書きたい人のための全国同人雑誌リスト320」が掲載されています。320誌とは、意外に少ない気がしますね。「文芸同人誌案内」掲示板・よこいさんまとめ)。

| | コメント (0)

「文芸同人誌評」「週刊 読書人」08年11月14日、白川正芳氏

《対象作品》「ありがとう、ランディ」中山和江(「コスモス文学」354号)、「家」水島弥生(「翻」4号)、「俳句はパスポート」山本悦夫(「四人」82号)、「ことの尽くる限もなく」加地慶子(「まくた」261号)、「ホセイン」村瀬巷宇(「朝」26号)、「グランマにあらず」斉木ユカル(「R&W」5号)、「江差で」安永稔和(「ぱさーじゅ」20号)、「これからの文学」山中光一(「青稲」81号)。「文芸同人誌案内」掲示板・よこいさんまとめ)。

| | コメント (0)

2008年11月 7日 (金)

11月9日の第7回「文学フリマ」に、複数のメディア取材の予定。

文学フリマ事務局通信では、11月9日の第7回「文学フリマ」にメディアの取材がいくつか入るとしている。
 今回は講談社から、文芸評論家の東浩紀氏の「ゼロアカ道場」企画があるため、従来より多いことが予想される。この講談社とのタイアップによって、新しい何かをつかめれば、文学愛好家・作家の市場の形成に大きな力を持つlことになるかも知れない。
 参加者は、メディア取材に対するキャッチ言葉を用意しておくことも必要かも。
 新しい音楽は東京からは生まれなかったように、文学の潮流は地域にある。赤字覚悟で、東京に地域色の個性を教えに来た、とか、8割ほめて置いて、一言チクリとやると、記者は喜ぶだろうと思う。

| | コメント (0)

同人誌「日田文学」来年4月で休刊

休刊が決まった「日田文学」を手にする江川さん 日田市の同人誌「日田文学」が、来年4月発行予定の57号を最後に休刊する。投稿する作家の人数と売り上げの減少で、経費負担が増大しているためで、編集人の江川義人さん(74)(日田市竹田新町)は「日田の文化の発信者という自負があったが、残念」と話している。
 日田文学は1954年、小説「銀杏物語」で芥川賞候補(55年)になった作家・岡田徳次郎さん(故人)ら19人が創刊し、小説、随筆、詩などを掲載してきた。88年から約5年間休刊したものの、江川さんら9人が93年2月に復刊し、年2回発行していた。
 掲載された作品からは、約40作が文芸雑誌「文学界」の全国同人誌評で取り上げられ、文壇からの評価も高かったという。
 現在は1号当たり600部(1部800円)を発行し、同市内の書店に置いているが、売り上げは最盛期の半分の30部前後にとどまっている。発行経費は同人作家で賄っており、高齢化に伴う作家の減少とともに1人当たりの負担が増えたため、休刊を決めた。
 発行人の医師、河津武俊さん(69)(同市石井町)は「作家は高齢化し、創作意欲も減退していた。日田から文学の火が消えるのはつらい。いつの日か、若い人が志を引き継いでくれればうれしい」と話している。(2008年10月30日 読売新聞)

| | コメント (0)

2008年11月 6日 (木)

雑誌「季刊文科(鳥影社)が「同人雑誌季評」を開始し、同人誌を募集

「季刊文科」は、第43号より、「同人雑誌季評」欄を開設する。そこで、同人誌を募集している。2冊を送る。送付先は、〒392-0012長野県諏訪市四賀229-1、鳥影社「季刊文科」編集部宛。
 なお、雑誌「文学界」(文芸春秋)においても、新しい形態を考慮中なので、それを尊重し、協調してゆくことに変わりはないとしている。(「季刊文科」42号・編集後記より)

| | コメント (0)

2008年10月28日 (火)

「同人誌時評」「図書新聞」08年11月1日 志村有弘氏

《対象作品》「命根」相馬庸郎(「AMAZON」431号/宝塚市)、「現人神」諸知徳(「あてのき」34号/金沢市)、「くたばれ忠臣蔵」逆井三三(「遠近」35号/練馬区)、「庄屋の職分―摂津国高浜村・押領吟味一件」穂積耕(「法螺」59号/交野市)、「桃の花びら」武野晩来(「青稲」81号/松戸市)、「見る聞く歩く学ぶ―江戸」野村敏雄、「上野のお山」郡順史(以上「八百八町」8号/板橋区)、「闇の森心中」湯本明子(「文芸シャトル」63号/豊田市)、「迦陵頻伽」大掛史子、「巣林一枝」山本十四尾(以上「墓地」63号/古河市)、「フォールアウト」伊藤眞理子、「記憶」河野洋子、崔龍源(以上「COALSACK」61号/板橋区)、「国の歩み」下川浩哉(「九州文学」525号/中間市)、「葦の地帯」千早耿一郎(「騒」75号/町田市)、「十五歳の夏」天路悠一郎、「武田隆子さんはかけがえのない詩人であった」菊田守(以上「花」43号/中野区)、「出征の日が初対面往きしまま耳不自由な年嵩の従兄」滝口悦郎(「未来」680号/中野区)、「被爆者の手記に報復の記録なし深き悲しみを思はざらめや」矢野伊知夫(「新アララギ」11巻9号/千代田区)、暮尾淳、瀬山由里子、中里夏彦(以上「鬣」28号/前橋市)、特集「あの俳人の今」(船団」78号/箕面市)、「春はいいですね……」武田隆子(「りんごの木」19号/目黒区)、石鍋トリ追悼(「荒栲」3巻5号/台東区)、高橋徹追悼(「GAIA」25号/豊中市)、中西泰子追悼(「塔」644号/左京区)。「文芸同人誌案内」掲示板よこいさんまとめ)。

| | コメント (0)

2008年10月25日 (土)

詩誌「騒」75号、「夜明け前」159号、「さわさわ」5号、「新・原詩人」20号の読後録

「騒」75号(町田市「騒の会」発行)は、30頁ほどの薄いものだが、文字が小さいので、内容は濃い。しかも評論も充実し、毎号読み応えがある。書評として、坂上清「坂上清詩集」を新倉葉音が「小鳥の棲む社会派詩人の狙うところ」がある。坂上氏の詩風は、単純な素材とやさしい表現のもが多いが、それが幾重にも重ねられた寓意を含むために、じつは難解であるという特徴がある。そのなかで小鳥に託した作者のイメージとビジョンがあることを、ここで降り起こしている。その他、千早執耿一郎「慎太郎氏のイチャモン」、7月に亡くなった詩人・梅田智江さんの追悼記、暮尾淳「梅田智江さんのこと」がある。

「夜明け前」159号(北群馬郡「群馬詩人会議」発行)は、73才で農家をし、先ごろ農民文学賞の詩部門の受賞者でもある大塚史朗氏の発行。毎号「野の民遠近」を執筆し、元気である。評論・エッセイで、久保田穣「群馬における私的詩史ノート」(68)という長期連載。梁瀬和男「萩原朔太郎の郷土詩人の思い」(下)が興味深い。

「さわさわ」5号は、森本忠紀発行の「重信房子さんを支える会(関西)会報」であるが、支援者の短歌や俳句の掲載が多い。重信房子「私の京都・大阪物語(5)」がある。組織の国際部に所属したことで、パレスチナ解放運動の情報を得るまでのいきさつが記されている。国内活動のときに彼女を逮捕した刑事が、後日、検察庁にいてそれが、最近朝鮮総連の建物の取引で逮捕された緒方元検事であったという話題もある。

「新・原詩人」20号は、現代詩人文庫「坂上清詩集」(砂子屋書房)を(抄)にして特集を組んでいる。この「新・原詩人」は、井之川巨(故人)の主宰する反戦詩人グループ「原詩人」のあとを、江原茂雄氏が継承したもの。井之川氏は、その時代から、獄中の重信房子氏に発行物を送付していたようだ。生前の井之川氏は、第2回文学フリマの文芸同志会コーナーに訪れて、それから間もなく亡くなった人だ。

| | コメント (0)

2008年10月12日 (日)

「文芸同人誌評」「週刊 読書人」08年10月17日号・白川正芳氏

《対象作品》「山帰来」菅礼子(「北門文学」10号記念号)、「『まぼろしの邪馬台国』映画化こぼればなし」宮崎和子(第七期「九州文学」三号)、座談会「日本の戦後文学再検討」(「中部ペン」15号)、詩「落下水」文月悠光(個人誌「月光」創刊号)、「涅槃月」衣斐弘行(「火涼」59号)、「吉村昭研究」三号、「名古屋市芸術賞記念号に寄せる」棚橋鏡代(「北斗」九月号)、「河林満さんのこと」高橋光子(「群青」73号)、「初秋吟」松雪彩(「木木」21号)。(「文芸同人誌案内」よこいさんまとめ)

| | コメント (0)

2008年10月 9日 (木)

「同人雑誌評」「文學界」08年11月号・松本道介氏

《対象作品》「教室はやり唄」亜木康子、「砂漠の雨」冬樹美緒(以上「湧水」40号/東京都)、「山葡萄のねじれ」篠原しのぶ(「修羅」57号/桶川市)、「アトランティックウエザー」塚越淑行、「彼岸桜の家」島永嘉子(以上「まくた」261号/横浜市)、「卯の花腐し」鈴木比嵯子、「秋の気配」田瀬明子(以上「ガランス」16号/福岡市)、「不惑」高橋綏子、「皇紀二六〇四年の中学生日記」木村和彦(以上「海峡派」113号/北九州市)、「大気圏外への孤独」佐伯敏光(「VIKING」691号/茨木市)、「妖精の庭」高田恵子(「だりん」57号/船橋市)、「残された本」酒井敏子、「クローズィング・ツゥナイト」大重道子(以上「私人」63号/東京都)、「かたすみの向日葵」田中信子(「樹林」523号/大阪市)、「地裏より―藪睨み能舞台―(五)」西澤建義、「平林彪吾とその仲間たち(十)―私抄『文学・昭和十年前後』―」松元眞(以上「文芸復興」19号/船橋市)、「成人男子のための『赤毛のアン』入門」山川浩介(「砂」108号/東京都)、「母の頼みごと」楠本耀子(「葉風」7号/東京都)、「こよなく愛すインターナショナル」竹原素子(「シリウス」18号/水戸市)。
ベスト5=「教室はやり唄」亜木康子、「山葡萄のねじれ」篠原しのぶ、「不惑」高橋綏子、「母の頼みごと」楠本耀子、「卯の花腐し」鈴木比嵯子。(「文芸同人誌案内」よこいさんまとめ)

| | コメント (0)

2008年10月 7日 (火)

11月9日の第7回「文学フリマ」秋葉原会場付近の状況

 雨であったが、文学フリマの会場の風景を撮ってみた。つくばエキスプレスの駅から上がって右側の通りに、工事現場があります。ワシントンホテルが解体され、神田川向こう岸の神社の屋根がみえます。解体工事の音もなく。静々と毎日ビルが消えてゆくのだった。またビルが建ったらこの光景は見られない。
 文学フリ会場は、この工事現場を左に行くと、東京都中小企業公社の細くて青い看板が2階にあります。というより、「浜町亭」(100席なんとやら)という赤白の看板の見える、居酒屋と同じ階です。たしか、トイレが共通場所で、5月には昼食を営業していました。今年はどうでしょう。Pj080930_002
Pj080930_003

出店参加者の常連に、名物男「幻魚水想記」を5円で販売する野田さんが居ます(文芸同志会員、PJニュース記事参照)。あの昔のアイドル作家・中沢けい法政大学教授が、思わず買ってしまったという読み物。

| | コメント (0)

2008年10月 5日 (日)

文芸時評 「讀賣新聞」10月3日夕刊(九州)・松本常彦氏

《対象作品》深田俊祐『スエ女覚書き』(梓書院)/「火山地帯」創刊50周年記念号(155号)から立石富生「履歴書もどき」 。(「文芸同人誌案内」日和貴さんまとめ)

| | コメント (0)

2008年10月 2日 (木)

西日本文学展望「西日本新聞」9月30日朝刊・長野秀樹氏

《対象作品》河合愀三さん「川の匂い」(「竜舌蘭」174号、宮崎市)、青海静雄さん「蛍火」(「午前」84号、福岡市)
「火山地帯」155号(鹿児島県鹿屋市)は創刊50周年記念号。同誌より迫田紀男さん「模型飛行機」、立石さん「履歴書もどき」、倉津和良さん「鳥を飼う」
「ガランス」16号(福岡市)よりミツコ田部さん「深紅のエルサレム」副題「小説『死海文書』」
第七期「九州文学」3号(福岡県中間市)より宮崎康平夫人の宮崎和子さん「こぼればなし」
出版は由比和子さん『月兎慕情』(花書院)、浜崎勢津子さん『帰宅』(株式会社マルニ)、暮安翠さん『ある英国作家の肖像-グレアム・グリーンの生涯』(葦平と河伯洞の会)。
                    ☆
「讀賣新聞」9月5日夕刊・時評・松本常彦氏
《対象作品》高崎綏子『マーガレット日記』(発表社)は同人誌「海峡派」に発表した作品を収めたもの。
「文芸山口」(280号)は創刊50周年特集号。桑原伸一をはじめ、福田百合子など同人諸氏の回想記。
(「文芸同人誌案内」日和貴さんまとめ)

| | コメント (0)

2008年9月14日 (日)

同人雑誌評『文学界』08年10月号松本道介氏

《対象作品》「風にのって」塚越淑行(「まくた」260号/横浜市)、「虚飾」豊田一郎(「孤愁」4号/横浜市)、「藤棚」後藤みな子、回想「燭台・常夏・下関(後篇)」吉田静代(以上「燭台」4号/下関市)、「それぞれの闘い(亀戸天神うらの少年 9)」岡山和男(「七十代」17号/東京都)、「海老カツバーガー」田中純子、「鳥雲に」坂本美智子(以上「森林鉄道」24号/函館市)、「冬のゆりかご」北原深雪(「じゅん文学」56号/名古屋市)、「チョコレート」津木林洋(「せる」78号/東大阪市)、「ミゼット」吉田典子(「サボテン通り」8号/函館市)、「富蔵の骨」出岡絢巳(「文学SOS」5号/鈴鹿市)、「如去(にょこ)」しん・りゅうう(「山形文学」95集/山形市)、「冬の蜂」藤山伸子(「飃」78号/宇部市)、「離別の譜」市尾卓、「ブラックホール」中里秋光(以上「季節風」106号/国分寺市)、「小川国夫と故郷」岩崎豊市(「燔」15号/焼津市)。ベスト5=「ミゼット」吉田典子、「富蔵の骨」出岡絢巳、「冬のゆりかご」北原深雪、「海老カツバーガー」田中純子、「藤棚」後藤みな子 。(「文芸同人誌案内」掲示板よこいさんまとめ)

| | コメント (0)

2008年9月 7日 (日)

文芸同人誌評「週刊 読書人」08年9月12日・白川正芳氏

《対象作品》「ノンフィクション 晴れ着」久高明子(「文芸広場」八月号)、「ラッキー」平沢ゆうこ(「文藝岩手」47号)、「カフカ『変身』想」吉貝甚蔵(「季刊午前」38号)、「中原中也生誕百年によせて」福田百合子(「文芸山口」二七九号)、「男の顔について」岡本信也(「象」61号)、「文学・ぷらぷら」庄司肇(「文学街」九月号)。(「文芸同人誌案内」掲示板・よこいさんまとめ)

| | コメント (0)

2008年9月 1日 (月)

同人誌時評「図書新聞」08年9月6日たかとう匡子氏

《対象作品》特集「言葉と声」、「言葉と声―音声芸術としての朗読」星義博(以上「日本未来派」217号/東京都)、特集「詩人・杉山平一」、「綿密と爆音」八木憲爾(以上「ぜぴゅろす」3号/北杜市)、特集「太宰治と三島由紀夫」、「太宰治・罰せられるものとしての自己―『俗天使』から『斜陽』『人間失格』まで―」野口存彌(以上「群系」21号/東京都)、特集『朱鞘』(「明治大正俳句雑誌レポート」3号/平塚市)、「鏡」松川元恵(「サボテン通り」8号/函館市)、「鳥の言葉」山浦敦子(「扉」11号/佐賀市)、「夏の河」田中庸介(「ミて」103号/東京都)、「視線」蛇石孝郎(「レーベ」19号/狭山市)

  いつ掲載になるのか、よくわからなかった「同人誌時評」ですが、「同人雑誌評」終了が決まって以来でしょうか、絶え間なく掲載されていますね。「図書新聞」、眼が離せません。ただし、「同人誌時評」は詩歌や評論にも目配りが行き届いているため、今回も小説は「鏡」1篇のみです。(「文芸同人誌案内」掲示板・よこいさんまとめ)

| | コメント (0)

2008年8月28日 (木)

憂楽帳:負けるな同人誌《渡辺亮一》(毎日新聞08年8月27日)

 月刊文芸誌「文学界」の「同人雑誌評」が12月号をもって終了する。全国各地の同人誌に掲載された作品の中から意欲作を取り上げ、文芸評論家が批評する名物欄。1951年に始まった。毎年、半期ごとに優秀作を選び、該当作は同誌に転載される。今年上半期の優秀作は「龍舌蘭」(宮崎市)172号に掲載された鮒田トトさんの「犬猫降りの日」だった。現在、同様の欄を持つ文芸誌はほかにない。「10年ほど前に比べ、送られて来る同人誌が半減した」(「文学界」編集部)ことが打ち切りの理由と聞いた。
 確かに同人の高齢化などにより、同人誌は全国的に衰退傾向にあるが、九州はいささか事情が違うようだ。老舗誌の再刊が相次ぎ、新興誌の台頭も目立つ。期待の若手だって少なくない。職場に届く同人誌に目を通す機会が多いが、どの作品も行間から「表現したい」「書きたい」という作者の情熱が伝わる。
 激励役の「同人雑誌評」がなくなるのは同人たちにとって痛手だろうが、めげないでほしい。同人誌での地道な取り組みが、地方の文学の地力向上につながると信じている。【渡辺亮一】(毎日新聞08年8月27日)

| | コメント (0)

西日本文学展望「西日本新聞」・長野秀樹氏

《対象作品》相加八重さん「馬の泪」(「二十一せいき」9号、大分市)、吉井恵璃子さん「あるものさがし」(「詩と真実」710号、熊本市)
「文芸山口」280号(山口市)は「創立五十周年記念特集号」、主催者である福田百合子さんの創刊時主催者、太田静一さんの思い出。堀江すすむさん「最後の少年兵たち」。
「すとろんぼり」5号(福岡県久留米市)は後藤みな子さん「樹滴」連作の五、岩下祥子さん「やごの日」。(「文芸同人誌案内」掲示板・日和貴さんまとめ)

| | コメント (0)

2008年8月21日 (木)

中部ペンクラブ主催「全国同人雑誌会議」を徳島・三好市で

三田村博史・中部ペンクラブ会長は、雑誌「中部ぺん」第15号の巻頭言において、昨年に「中部ぺん」が「第三回富士正晴全国同人雑誌賞・特別賞」を受けた際、主催の徳島県三好市・俵徹太郎市長に「全国同人雑誌会議」について次は、三好市で開催することを提案したところ、快諾をえたことを明らかにしている。これを受けて同人誌「文学街」と提携のアジア文化社「文芸思潮」が加わり、三好市の職員とも協議のうえ、10月には徳島市でプレイベントを開催する予定であるという。
 文芸同人雑誌の全国的な求心力では、中部ペンクラブが突出した実績をもっており、その連携の強化が期待できそう。

| | コメント (0)

2008年8月19日 (火)

「同人雑誌評」雑誌「文學界」08年9月号」勝又浩氏

《対象作品》名村和美(「KANSO」88号/鈴鹿市)、「編集後記」、「矢車の花」寺島茂、「花びらの行方」三沢充男(以上「こみゅにてぃ」78号/和光市)、「街」、「そんなことは」山崎文男(以上「文学街」116号/東京都)、「編集後記」&「ルバング島のおじさん」青木哲夫、「往来記」青木倫子(以上「アンプレヤブル宣言」14号/今治市)、「白檀色のトーラス」森口透(「あべの文学」7号/大阪市)、「遠泳―消えた海―」高月治朗(「八月の群れ」49号/明石市)、「のれんの陰」泉紀子、「日雇いの二人」牧之島純(以上「風の道」2号/東京都)、「拍子木」笹原実穂子(「山音文学」113号/札幌市)、「雛子」伊藤千佳子(「樹林」521号/大阪市)、「シルクロードの黒い嵐(カラブラン)」山本直哉(「文芸誌O」42号/佐久市)、「幸子二題」堀坂伊勢子(「文宴」109号/松阪市)、「母親」乾夏生(「槐」26号/佐倉市)、「呼ばわり山」もりたなるお(個人誌「回転寿司考」156号/武蔵野市)、「高齢者は剛いぞ」北大井卓午、「花の寺」安西昌原、「傾いた明日」難波田節子、「密葬」柚かおり(以上「遠近」34号/東京都)、「納屋の上」由比和子(「海」66号/福岡市)、「OJI NOTE」大池文雄、「湯ヶ島にて」栗原陽子(以上「丁卯」23号/駿東郡)、「西陣と南陣」園城弘(「滋賀文学」105号/大津市)、「やなさんの快挙に」山崎文男(「顔」65号/上田市)、「ころがる石」長倉茉利(「河」146号/東京都)、「トワイライト・デイ」本多明子、「月と雨と」池田みな美(以上「法政文芸」4号/東京都)、「ガラスに映る」うえのそら初、「無題」阪井智一(以上「カム」3号/桜井市)、「天竺川」あびる諒(「白鴉」22号/八幡市)、「カプセル・タイム」大西亮(「北斗」548号/名古屋市)、「かまきり」中島妙子、「ボランティアガイド エレジー」長浜要悟、「月光」福永タミ子(「安藝文學」76号/広島市)。
ベスト5=「白檀色のトーラス」森口透、「ルバング島のおじさん」青木哲夫、「月と雨と」池田みな美、「矢車の花」寺村茂、「母親」乾夏生。
今回が勝又氏による最後の「同人雑誌評」となりました。(「文芸同人誌案内」掲示板・よこいさんまとめ)

| | コメント (0)

2008年8月 9日 (土)

「文芸同人誌評」「週刊 読書人」08年8月22日、白川正芳氏

《対象作品》「青春の煌き」山岡早春(「コスモス文学」三五一号)、「桜並木の向こう」山田敦心(「城」94号)、「佐伯祐三の妻『米子』」(「新現実」97号)、「私小説研究」九号、「駅舎」折口真(「穀雨」二号)、「夢の人」北村順子(「婦人文芸」85号)、「港の骨董屋」川島昭子 (「ペン」三号)、「還暦」相加八重(「21世紀」八号)、「佐藤友哉とアヴァン・ポップ」(「メルキド」五号)、「Light & Dark」(「ゆ・ちゅぺる」創刊号)。(「文芸同人誌案内」掲示板・よこいさんまとめ)

| | コメント (0)

個人誌「孤愁」第4号(横浜市)の編集後記から

 「孤愁」第4号に、豊田一郎氏の「編集後記」がある。なんでも「フリーターとしての小説家」という一文を読んだそうである。そのなかに「文学というものは、お金のためにやっているわけではないので、それでもいいと割り切るしかない。しかしそんな割り切り方をしてしまうと、売れなくてもいいというアマチュア的な気分になって、作品が独善的、閉鎖的になり、本当に売れないものしか書けなくなるおそれがある」とか、「小説家はフリーターであると同時に、独立採算の業者みたいなものだから(青色申告で妻に給料を払っている)、経営の安定のために、業務の計画を立お頃から、わたしは文学にこだわらなくなり、文学にこだわる人に特有の傲慢さと無縁になった」とか書いているらしい。
 豊田氏の説明によると、「この人は大学の客員教授として小説の書き方を教え、その教室から、いわゆる売れる小説家を輩出している」らしい。これに対し、豊田氏は、文学は自動車を作り売ることとは異なるのではないだろうか、とし、文学はそれでいいのか? と疑問を呈している。

 自分は、豊田氏の紹介している「フリーターとしての小説家」の理屈にそれほど違和感はない。売れる、売れないは、時代に合っているかどうかの問題で、車だって時代にあっていなければ売れない。ガソリン高騰で、エタノール、天然ガス、電気などをエネルギーとするものが脚光を浴びてきた。時代がそこに向いてきたからである。ただし、品質がわるいと売れない。品質がよいことが必要条件である。小説でも品質の良いことが必要である。それでも時代に合わなければ売れない。

 現代において、文芸同人誌のあり方と、文学的芸術的な行為との結びつきは、実はそれほど強くない。それを、いかにも芸術性だけを協調する人に出会えば、たいてい傲慢な人に見える。
 自分は、社会的な関心から文芸同人誌を読んできたが、日本人がものを書くということに、大変な価値を見出していることを知った。では、なぜなのか。一番大きいのは、書くことが心のツカエや憂鬱、うっぷんを解消することにあるからだと思う。精神を安定させ、充実感が得られる手段である。
 あとは、サークルの仲間意識の充足であろう。だから、出来上がった作品は、その過程で「出来てしまったもの」で、市場で売るなどということは考えていないものが、ほとんどである。そのなかで、たまたま社会的なニーズに出会ったものが売れているのである。自分は、同人誌の作品に、つまらないものや、くだらないようなことが書いてあっても、別に文句を言う気にはならない。あって当然であると思うからである。
 そういう作品を安易に批判してはいけないような気がする。その作品に自信がないからこそ、批判されると激怒することが多いようだ。自分で、書いてみれば、その気持はよくわかる。また、批評しやすいものだけを批判して、よい面を見出せない読解力不足の人しかいない文学仲間は、さびしい気がする。
 「売れる、売れない」の市場性からみると、文芸評論家や小説公募の審査員は、その芸術性の深さを見ながら、同時に小説の品質を吟味していることになる。

| | コメント (0)

2008年8月 6日 (水)

文芸同人誌時評「讀賣新聞」西日本版・夕刊8月1日付・松本常彦氏

《対象作品》「燭台」<昭和2年、下関で創刊された同人誌の誌名を継ぐ。当時は泉鏡花、横光利一、北原白秋、金子みすゞなどが寄稿。>第4号、北川透の詩「亀裂についてのノート」、石田比呂志の短歌「万愚節」、上野燎の俳句「あずまはや」、星加輝光・佐木隆三・古川薫・後藤みな子の対談「九州文学と岩下俊作」、吉田静代(常夏夫人、H4年101歳で他界)の口実筆記「燭台・常夏・下関」、後藤みな子「藤棚」。「遍歴」49号、伊福満代「框の傷」、鶴ヶ野勉「中央構造線」(「文芸同人誌案内」掲示板・日和貴さんまとめ)

| | コメント (0)

2008年8月 4日 (月)

「同人誌時評」「図書新聞」08年8月9日志村有弘氏

《対象作品》「時計」葉山修平(「風の道」2号/荒川区)、「該当作なし」高橋直之(「残党」27号/茅ヶ崎市)、「末期の花ー美佐乃覚書」崎村裕、「にんげんの加害力ー島尾敏雄の〈特攻待機〉体験ー」岩谷征捷(以上「構想」44号/東御市)、「とくだみ」波佐間義之(「九州文学」七期二号/中間市)、「吉備大臣変異譚」蒲生一三(「文芸中部」78号/東海市)、「真澄の鏡」吉田弘秋、長篇詩「わが代」大野文也(以上「名古屋文学」25号/名古屋市)、詩「地面の来歴」菊田守(「花」42号/中野区)、「自殺者」前田純敬、座談会(以上「久坂葉子研究」4号・生誕七十七年記念号/芦屋市)、「明治・大正期における『今昔物語集』受容状況」西山康一(「芥川龍之介研究年誌」2号/船橋市)、「阿部知二研究」15号(姫路市)、湯本明子(「文芸シャトル」62号/豊田市)、永野悟(「群系」21号/江東区)、「加計呂麻島の墓碑」&「島の墓碑」遠藤秀子(「塩」4号/佐倉市)
《創刊>「銀聲」(西宮市)《追悼》川田俊夫(「一宮文学」/一宮市)、芳地修(「うもれび」32号/京都市)、星加輝光(「九州文学」七期二号/既出)、河林満(「穀雨」2号/武蔵村山市)、都筑辰己(「山音文学」113号/虻田郡豊浦町)、阿部英雄(「東京四季」94号/八王子市)、林俊(「文芸誌O」42号/佐久市)、浜畑幸雄(「別冊關学文芸」36号/西宮市)、筧槇二(「山脈」124号/横須賀市)。(「文芸同人誌案内」掲示板よこいさんまとめ)

| | コメント (0)

2008年8月 2日 (土)

西日本文学展望「西日本新聞」7月30日朝刊・長野秀樹氏

《対象作品》後藤みな子さん「藤棚」(「燭台」四号、山口県下関市)、山田敦心さん「桜並木の向こうのクニ」(「城」九十四号、佐賀県みやき町)
「九州文学」第七期二号(福岡県中間市)は「星加輝光追悼特集」。古川薫、佐木隆三をはじめ、同人の追悼文を掲載。
「燭台」(前出)の岩下俊作特集にも、星加さんの座談会(古川さん、佐木さん、後藤さんがメンバー)を掲載。
「あかね」(鹿児島市)は八〇号記念号。「『あかね』と私」というタイトルで同人の文章が寄せられている。(「文芸同人誌案内」掲示板日和貴さんまとめ)

| | コメント (0)

2008年8月 1日 (金)

「同人誌時評」「図書新聞」08年8月2日福田信夫氏

《対象作品》「ロシアという魁偉―内村剛介の帰還―」陶山幾朗(「VAV(ばぶ)」12号/日進市)、「長い残余の生(一)」前之園明良(「酩酊船」23集/穴粟市)、「青狐の賦(上)―火野葦平の天国と地獄―」暮安翠(「九州文学」第七期第一号(通巻523号)/中間市)、「わたしの源氏物語」橘川雅子(「てくる」3号/大阪市)、「アウシュヴィッツ収容所」中村淳子(「四国作家」40号/琴平町)、創刊45周年記念号・秋田稔個人誌(「探偵随想」97号/泉南市)、「ゲーテとトルストイの『光』考」&「菫漫談」大谷いわお(「海」77号/四日市市)、「言いそびれた言葉」いとうむつみ(「私人」62号/北本市)、「残党」27号(茅ヶ崎市)、「猫恋記」西本薫、俳句「虚虫」山下定雄(以上「海馬」31号/稲美町)、「三好十郎の反戦・平和―プロレタリア作家時代」今井勇、「三好十郎論―三好十郎と葉山嘉樹(その一)」鈴木章吾、「秋元松代は三好十郎を超えたか」田中單之、「三好十郎の翻訳」鈴木美和子(以上「三好十郎研究」創刊号/横浜市)、「仮装結社」あらきこうすけ、「川端康成『弓浦市』を素読する」坂本良介(「坩堝」創刊号/青梅市)、短歌・東野登美子、田中教子、巌浩(以上「ナヅノキ」創刊号/大阪市)
<追悼号>賈島憲治追悼(「創造家(トリスメジスト)」16号/本巣町)、鴻みのる追悼(「凱」30号/練馬区)、さこう祥二追悼(「小説図鑑」18号(通巻27号)/横浜市)、八幡政男追悼(「碑」90号/横浜市)(「文芸同人誌案内」掲示板よこいさんまとめ)

| | コメント (0)

2008年7月26日 (土)

九州地区の新聞が文芸同人グループを紹介

地域の新聞は同人誌の文芸活動の記事をよく取り上げている。
《参照: 「文芸同人誌案内掲示板」》
 東京地域では、同人誌を紹介する新聞はないが、通常の文芸時評を夕刊に掲載したものを朝刊に掲載するようになった新聞社が出てきた。これは、同人誌に興味を持つ人は新聞をよく読むので、重要な読者として重視するようになったためではないか。それだけ新聞を読む人が減ったということであろう。
 東京地区のマンション販売には、頭金なしで月に8万円程度のローンで購入できるようなものもある。マンションを販売すると新聞勧誘員がやってくるのは、昔の話で、今は、茶髪、ケイタイ、新聞読まずの若者が増えたため、新聞販売員がこないという噂だ。
 文芸時評のリストをまとめている自分には、迷惑な話で、分厚い朝刊を全部見て、どこに文芸時評があるかなどウォッチしていられないのは、困ったものだ。

| | コメント (0)

2008年7月18日 (金)

同人誌「砂」第107号の作品を読んで(3)

(評・中村冶幸)
【「封印されたスケッチブック」夢月ありさ】
 雄司が父の書斎に入って、自分の希望を「一気にまくしたてた」というのはよい表現です。できれば「考えあぐんでいた雄司」のその顔が、どういうふうだったのか、身体の姿勢など描写があれば、もっと生きて見えてくるのではないかとおもいます。
 前半の兄弟の会話について。小説は、いつどこでだれが、なにを、なぜという五つの法則が必要ということを念頭においてもらいたいとおもいます。会話を多く用いるのは、作品を生き生きとしてよいです。
【「遥かなる遠い道」行雲流水】
 構成のうまさを感じた。輝子が多発性骨髄腫のため内科病棟に入院するところで今回は終わるが、その不幸なできごとを描くためか伏線があちこちに張られているように感じる。先ず冒頭に兄の大川正二郎が逝去するところからはじまる。春日先生との久し振りの出会いと奈良の秋篠寺に技芸天をみにいくのもそれだ。
 技芸天をみたことで、隆の嫁とのいさかいを解消しようと輝子にいわせる。輝子の心の内でなにかが変わっていくさまを感じる。輝子は夫の正三郎と日本を旅行し、子供たちの家々をめぐる。のちに病気でベッドに縛りつけられるのを予期しているかのような、あわただしさだ。そして海外へも行きたいとおもうが、残念ながらそれは許されなくなってしまう。哀れでならない。長女清子が母の痩せかたがひどいのとヘルペスがでているのを気にし父に相談する。それで正三郎が輝子を病院に精密検査を受けさせに行くが、それからの正三郎の苦悩と輝子の不安が良く描けていて読者を惹きつける。ヘルペスがどのようなものか描写があるともっとよかったとおもう。P75下段の電灯がついているのに暗い部屋が印象的だ。P82上段後ろから二行目「病院の玄関が判決を下す法廷のように」とあるが、病気の宣告は不条理に受けとれ、それだけに重く深く胸に響くのであろう。

| | コメント (0)

2008年7月16日 (水)

同人誌「砂」第107号の作品を読んで(2)

(評・中村冶幸=「砂」の会会員・文芸同志会員)

【ブログ「文芸同志会通信」日誌(一)伊藤鶴樹】
 以前「文芸研究月報」紙を毎月愛読していたので、その裏話として楽しく読めた。パソコンを持っていないので、ブログの情報を読めないのが残念におもう。ペンネームの由来には書く姿勢の懸命さを感じることができた。文芸情報を集めることに「社会観察のフィールドノート」になっているという考えは卓見だとおもう。ブログのアクセス数や情報の原稿枚数などの数字を出しているのが具体的で判りやすい。情報の入手先を探す方法も直ちに判明するよう工夫がしてあるのがよいシステムとして感心した。末長く続けてもらいたく期待します。

【紀行文「佐渡紀行 その一」木下 隆】
 読んでいて臨場感がある。それは観察が行き届いているからに違いない。大野亀が高さ百七十メートルほどのおむすび型大岩といった具体的な表現。尖閣湾で強風に遭い「前より凄みがある。強風のおかげで」という浅井さんの言葉が真に迫っている。
 作者が小学一年のとき疎開にきたことで、佐渡により親しみがあることが随所にあらわれている。
 それゆえ「鬼太鼓」や「佐渡おけさ」をみたとき、ほんらいは精霊を慰める儀式のはずのものが、ショウ化してしまうことを憂えていることでわかる気がする。
 ただ漢字が多いので、もうすこし(ひらがな)で表現してみてはいかがだろうか。
 文章は品格があって読みやすいです。

【小説「タイムリミット」牧野 誠】
 主人公の男性が自殺を遂げようとする話だが、その理由が、末期ガンを苦にしてでなく、先立たれた妻を追ってでもない。四十二年まえ、心中をしたが生き残ってしまったので、その完結のためというのがロマンチックだ。
 死ぬ場所は、月光をあびた桜の満開のもとで、その情景はあたかも西行の和歌をおもわせる。ただ惜しむらくは月と桜の描写が弱い。「桜の木を見上げるとまだ散ってはいなかった。──今を盛りと月光に映えていた。だけでは物足りない。もっと描写してもらいたかった。P44下段前より三行目「判決を待つ犯罪者の気持ち」という表現がうまい。
 P45上段一行目「痩せた白衣の」の箇所にその医師が女性であることを記してもらうと、下段七行目──九行目の表現がよくわかるとおもう。

| | コメント (0)

2008年7月15日 (火)

同人誌「砂」第107号の作品を読んで(1)

(評・中村冶幸=「砂」の会会員)
 このところ表紙に矢野さんの絵が飾られていますが、今号は艶っぽい女性が読書をしていて表紙をみるだけでも楽しくなります。
【随筆・エッセイ「出水平野の鶴」渡辺千葉】
 簡潔で的確な表現をして読ませます。P3上段、後ろから五行目から四行目にわたって「人間社会の……見守っている」という文章に描かれている。近ごろの社会のありさまにたいし、おなじ段の真ん中あたりの鶴の身内に対する思いやりを描くことで、人権批判をしている。このような思いを抱く人がいることが心強い。世の中、見捨てたものではない。
 ただそのおなじ段の最終行の「観光地のーーガラス窓」はなんの建物をさしているのかを書かれると、もっとわかりやすくなると思います。
【「寂しい遠足」望月雅子】
 作者が65年前の小学二年の遠足のことを思い出し、客観的に少女の心中をみつめそのようすを描いているのがよいです。昭和18年の戦争中に遠足があったというのが発見だが、節約一点張りだったのが、いかにも戦中を物語っているようです。乾燥卵というのが珍しい。茹で玉子が潰れて寂しい思いをするのが象徴的に描かれていて、内省の深さををおもいます。少女が弁当や服装について、いろいろ葛藤してますが、いまの豊かになった社会でも考えられることで、その普遍性を通して、戦争の悲惨さ、平和のありがたさを訴えているのが見事です。

| | コメント (0)

2008年7月 9日 (水)

同人雑誌評「文學界」08年8月号勝又浩氏

《対象作品》河林満追悼特集(「文芸思潮」23号/東京都)、八幡政男追悼特集、「懐中のベレー帽ー八幡政男とその周辺」上坂高生(以上「碑」90号/横浜市)、「虫のこと、学問のこと、絵のこと」石崎宏矩、「日々に新たなり」田中貞夫(以上「零」17号/奈良市)、「最後のホームワーク」堀川佳、「『ポンパ』考」大森捷二(以上「四国作家」40号/琴平町)、「青空の嘘」浅田厚美、「栃錦が飛んだ、あの九月」森岡久元(以上「別冊關學文藝」36号/西宮市)、「出口のない部屋」安田ちかよ(「あしたば」48号/津市)、「フラミンゴグレイ」池田純子、「鬼火」立石富生(以上「火山地帯」154号/鹿屋市)、「知覧ー六月三日の邂逅ー」西山慶尚(「海峡」20号/今治市)、「慎ましやかな虫たち」梶川洋一郎、「満開の桜の下で」十八鳴浜鴎(以上「新松柏」21号/柏市)、「私は忘れない」柳原忠行、「乱雲」 山川文(以上「佐賀文学」25号/神埼市)、「クリスマスの記憶」松原栄、「父の自画像」下地芳子(以上「南涛文学」23号/浦添市)、「ブラジル・ジョーク」ナカムラマゼランタロウ、「金色の虹」塩崎勝彦(以上「樹林」520号/大阪市)、「いつか金色の馬車に乗って」三澤章子(「橡」9号/伊勢崎市)、「香花」米沢朝子(「高知文学」34号/高知市)、「父の居た街」谷沢信熹(「風」79号/岡谷市)、「まくらのとが」ほりきせいこ(「河108」24号/江別市)、「雪」新村苑子(「文芸驢馬」55号/東京都)、「贋夢譚 百夜」稲葉祥子、「ボンと歩けば」南奈乃(以上「てくる」9号/大阪市)、「三毛猫三毛子」北川佑、「冬女夏草」よこい隆、「転落」十河順一郎(以上「木曜日」24号/東京都)、「ゆうどうえんぼく」渡辺光昭、「髷」佐佐木邦子(以上「仙台文学」72号/仙台市)、「移ろうとき」野沢薫子(「長崎文学」57号/長崎市)、「師弟」高木國雄(「海」77号/四日市市)、「心をこめて賽を振れ」青海静雄(「午前」83号/福岡市)、「遅い雪」K・ドリー(「原点」96号/松山市)
ベスト5は、「香花」米沢朝子、「青空の嘘」浅田厚美、「フラミンゴグレイ」池田純子、「出口のない部屋」安田ちかよ、「贋夢譚 百夜」稲葉祥子

すくなくともひとつ誤字があります。見付からなかったんです。「熹」は下が「心」です。申し訳ありません。
(「文芸同人誌案内」掲示板・よこいさんまとめ)

| | コメント (0)

2008年7月 4日 (金)

文芸同人誌評「週刊 読書人」08年7月11日白川正芳氏

《対象作品》「針桐の道―篆刻家 歌人 瀧波善雅―」興津喜四郎(「丁卯(ていぼう)」23号)、「彼岸獅子舞の村」前田新(「農民文学」二八一号・第51回農民文学賞受賞作)、「駄目主婦日日」成瀬露子(「四人」81号)、「岸田劉生のコレクター・浜松の山本貞次郎の研究」寺田行健、表紙絵「南瓜」小川国夫(以上「秦」16号)、「過激な暇つぶし」坪内稔典(「船団」77号)、「猫が来た」渡辺美知穂(「女人随筆」一一四号)、「がんきゃあさんが通る」坂本紀美子(「佐賀文学」25号)、「銀聲」創刊号。(「文芸同人誌案内」掲示板・よこいさんまとめ)

| | コメント (0)

2008年7月 1日 (火)

「西日本新聞」西日本文学展望6月30日朝刊・長野秀樹氏

有森信二「波の歌」(「海」66号・福岡市)、木下恵美子「母型」(「詩と真実」708号・熊本市)。「西九州文学」(長崎市)から、山本思外里「歯の話」、宮崎栖吾郎「ふたりで歩いて」
織坂幸治「新ぼんくら談義『現代カタカナ考』」(「海」前出)。出版:小笠原瑛次『三角形の鍵』(文芸社)(「文芸同人誌案内」掲示板・日和貴さんまとめ)

| | コメント (0)

2008年6月14日 (土)

文芸同人誌評「週間読書人」08年6月20日・白川正芳氏

《対象作品》「田園風景」坂上弘(講談社文芸文庫)、「ボンと歩けば」南奈乃(「てくる」三号)、「秋に還りぬ」庄司泰子(「全作家」69号)、「懐中のベレー帽」上坂高生(「碑」90号)、「川上未映子「乳と卵」について」間瀬昇(「海」77号)、「クスリ」長谷良子(「凱」30号)、「流された日々」和田浩明(別冊「関学文芸」36号)、「ノイズ」平野潤子(「時空」29号)、「アフリカの旅」諸井学(「播火」67号)。(「文芸同人誌案内」掲示板・よこいさんまとめ)

| | コメント (0)

2008年6月 9日 (月)

「同人雑誌評」「文學界」08年7月号・勝又浩氏

《対象作品》「全国同人雑誌会議」三田村博史(「文藝家協会ニュース」680号)、「中部ペン」(名古屋市)、「文学街」(東京都)、「同人雑誌全国会議意見交換会」名村和実(「KANSO」86号/鈴鹿市)、「全作家」(東京都)、「信州文藝」(上田市)、「文芸思潮」(東京都)、「文芸東北」(仙台市)、「イエスよ涙をぬぐいたまえ」江口宣(「九州文学」523号/中間市)、「聖母子と廃本」渡辺勝彦、「旅先の界隈」谷澤弘昭、「華麗なる金鯱物語」森田ちゑ(以上「R&W」4号/愛知郡)、「五女」片山峰子(「岡山文芸」98号/総社市)、「青空と軽便鉄道と」原口登志子、「母との旅」高橋光子(以上「群青」72号/武蔵野市)、「葡萄の杖」山之内朗子、「アイリス」塚越淑行、「般若の道」城田彩香(以上「まくた」259号/横浜市)、「最終バス」秦斗志三、「陽炎」山口道子(以上「南風」23号/福岡市)、「路地裏の温泉バナナ」山人海人、「侵入者」中山直美(以上「日田文學」56号/日田市)、「編集後記」、「星が見えない」大石國行(以上「彩雲」創刊号/浜松市)、「私の恋は」吉田啓子(「勢陽」20号/伊勢市)、「子生(こなじ)―私鉄廃線跡探索奇談」羽黒英二、「宝の/はこ」坂本良介、「虫達への挽歌」高橋ひとみ(以上「文藝軌道」4月号/大磯町)、「骨かじる」さとう裕、「十三夜月」宮崎眞弓(以上「グループ いかなご」4号/明石市)、「兄の番」関幸子、「私だけの赤」飛田一歩(以上「湧水」39号/東京都)、「伝言」宮本誠一(「詩と眞實」707号/熊本市)、「蝶の帰り道」古木信子(「季刊午前」38号/福岡市)、「朱光院」稲垣瑞雄、「白鷺の女」楢信子(以上「双鷲」69号/八王子市)、「『突貫小僧』の末っ子実」岡山和男(「七十代」16号/東京都)、「漂白」豊田一郎(「孤愁」3号/横浜市)、「VIKING(一)」中尾務(「VIKING」688号/茨木市)、「ランナウェイ」谷口浩、「眺望レストラン」中村建夫(以上「文学地帯」105号/堺市)、「ステンカ・ラージン―凍土の恋―」矢内久子(「風姿」3号/上尾市)、「家の繕い」小野誠二、「蜘蛛男」服部進(以上「北狄」342号/青森市)、「神々の涙と微笑みの満ちるところ」伊吹萌、「歌姫が去った日」仙波進太郎(「私人」62号/東京都)、「ZEAMI」野上周(「YPSILON」春増刊号/三島市)
ベスト5は、「イエスよ涙をぬぐいたまえ」江口宣、「子生」羽黒英二、「侵入者」中山直美、「最終バス」秦斗志三

なお、今回の見出しは「同人雑誌ネットワーク」と題し、冒頭で、全国同人雑誌会議や信州文芸誌協会、九州芸術祭文学賞などの例をあげて、ネットワークの可能性に触れ、下記のとおり、それを結んでいます。
「・・・何らかの条件、きっかけさえあれば、現代同人雑誌ネットワークが一つの組織的力、つまり“予備軍”ではなく、れっきとしたもう一つの“文壇”を形成するのも決して夢ではないであろう。そして、そのきっかけの一つが、本年いっぱいでのこの欄の廃止という“事件”になるだろうか、というのが、私の目下の夢想である。」(「文芸同人誌案内」掲示板・よこいさんまとめ)

| | コメント (0)

2008年6月 7日 (土)

同人誌作品紹介「木曜日」第24号(さいたま市)(3)

【「病院(ホスピタル)幻想曲 その後」菅原英理子】
 「ここに行って来て下さい。/病院のベッドの上で先々月のカレンダーを小さく破って作った紙切れには、祖父が震える手で書き付けたたどたどしい文字と切った」

 幻想曲であるためか、主人公が写真家であったらしい祖父が入院中で、何かを頼まれて、外出するところから始まる。しかし、何を頼まれたかは、読者にはわからない。幻想だからか、どうか。仕掛けがありそうな予感で読み進む。お使いの途中の風景には、街の裏通りの墓地という景色もある。
  回想のなかで、今にも死にそうな祖父の姿を浮き彫りにする。そのなかに庭の手入れをする業者の女が出てくる。この女の書き方はなかなか面白く、個性をよく表現している。結局、主人公は、祖父が展示会に出した作品を受け取りに来たらしいことがわかる。その写真をもって、病院へ向かう途中の車窓から見える棕櫚の樹を眺めるところで終わる。祖父の死に際の視線を受け継いで見た風景なのかも知れない。
 身内の死に際を知ったときに抱く、言いようのない死への違和感のようなものが表現されている。技巧派らしい手法を意識した書き方に個性を感じる。

【「小説は書かなくてよい」井上雅弘】
 作者は、年に1度、小説を書いてきたが、長いものが書けない。30代後半になって、自分が小説を書きたいのではなく、「ただ単純に自分の言葉を残したいだけなのではなかろうか」と思い至るのである。原点にもどると、たしかにそうである。同人誌は自己表現の場であるから、身辺雑記でもいいことになる。特に、働き盛りの人間には、落ち着いてじっくり物を書く時間はないかもしれない。夫を気づかう優しい妻や、生活上の感想を述べる。

【「冬女夏草」よこい隆】
「ぼく」は、中国人のホステスの「おまえ」を愛し、その行動を見つめる。ホステスである「おまえ」は、つねに男からの誘惑のど真ん中で仕事をする。「わたし」(「ぼく」を訂正しました=鶴樹)は、それを気にかけて、詮索する視線を向ける。シフトを変えたスタイルの独白体小説になっている。
 出だしの第一行目は、考えすぎか力みすぎで、石川淳スタイル悪影響か。文体の魔術から脱け出せていない形跡がある。
 しかし、こうした文体とスタイルは、それに見合う話の組み立てが要求され、その規制によって、まとまりのある物語になっている。この作者の作品を読むのは、三作目であるが、前の二作はイレギュラーな運びが随所にあり、意図がよく理解できなかった上に、その舞台となる背景も未知なるもので、出来が良いのか悪いのかさっぱり見当がつかないものであった。
 今回は、文体と舞台設定に凝ったことから、普通のお話になっている。なにやら中国人女性との愛の物語がなかにあって読みやすい。果たして、舞台が新宿で、女が客の男に渡されるものが、麻薬でなければならないものかは、わからないが、非日常性の世界を舞台にしたことで、愛の世界がドライに浮き上がるので、ウエットな部分が引き立ち効果があった。小説は書いてみないとわからないものである。なにやら優しい心の交流まで垣間見える。同時に、二人の愛の行方はわからないながら、闇に消えるものではなさそうだ。

| | コメント (0)

2008年6月 2日 (月)

同人誌時評「図書新聞」08年6月7日たかとう匡子氏

《対象作品》「古典と現代詩」藤井貞和、「劉震雲『携帯電話(手機)を読む」劉燕子、「戦後の竹中郁の方向性―第七詩集『動物磁気』を中心にして」冨上芳秀、「孤高をめぐって―金素雲おぼえがき(1)」倉橋健一、岩成達也、新井豊美、北川透(以上「イリプスⅡnd」創刊号/香芝市)、「私の作家論」庄司肇(「文学街―別冊・第四巻/東京都)、「漂白」&「あとがき」豊田一郎(「孤愁」三号/横浜市)、「軍医と戦争」千早耿一郎(「象」60号/名古屋市)、「生還(泥だらけの青春)」千田一郎(「風」10号/太宰府市)、「階段の尽きるところ」荒井隆明(「出入口」7/東京都)、「草の葉」荻悦子(「るなりあ」潤・0/相模原市)、「高千穂神楽 神いますなら神いませども」美濃和哥(「彗星」Ⅲ号/掛川市)。なお、たかとう氏は「文學界」同人雑誌評の打ち切りについて、冒頭と末尾で下のように書いておられます。
冒頭
「たまたま、半世紀以上もつづいた月刊文芸誌「文學界」の同人雑誌評が年内で打切られるのを読売新聞の記事で知った。理由は高齢化がすすみ老人雑誌になったことと、寄せられる雑誌の数が減ったからだという。近代社会の中に出てきた同人雑誌は、もともとそれ自身が自立しており、この雑誌評の消滅によって、力をなくしてしまうとは考えにくい。」
末尾
「冒頭に書いた「文學界」の同人雑誌評、年内打ち切りは、商業ジャーナリズムによって文壇予備軍としての同人雑誌が役割を果たせなくなったと思うほうがよい。こういうときだからこそ、ここでゆっくり腰を落ち着けてやるべきだと思う。私は詩を書くのでその立場からいうと、詩の同人雑誌はけっして老人雑誌になっていない。若い人の雑誌はたくさんある。」(「文芸同人誌案内」掲示板・よこいさんの投稿より)

| | コメント (0)

2008年5月22日 (木)

同人誌作品紹介「木曜日」第24号(さいたま市)(2)

【「竜善」小梢】
竜善和尚は、北国のお寺の住職である。寺は幼稚園も経営している。竜善は、胃がんの摘出手術のあと、肺炎を恐れ、病気をおそれて暮らす。小心ではあるが、正直な性格である。作者は、巧みな語り口でこうした性格をユーモアをもって活写する。夫婦の関係、幼友達の春江との交流、友達との付き合い方が具体的なエピソードで紹介される。滑稽味のある表現力は、才気才能を感じさせるものがあり、面白く読める。竜善は病気の心配をしながら、人間関係に右往左往し、ある日、蜂に刺されてショック死してしまう。人間的、人格的に偉大ではないが、仏道に沿った真っ当な人生のあり方を示してみせている。軽い調子の語りにもかかわらず、作者の宗教的な造詣の深さを感じさせる良質な作品に思えた。
【「腐った水」坪倉亜矢】
ボクサーの心理、その観客の心理、阪神淡路大震災の体験、会社内パワーハラスメントの体験、女性同士の友情など、さまざまな要素を盛り込んで、題材ごとにそれぞれの人々の内面を語る一人称多視点のモザイク形式の小説。いろいろな素材をミックスしてサラダボールに入れて食べるような面白さがある。語り手の内面もかなり工夫をして深みが出ている場面もあり、読みやすく面白く感じた。このような手法は、複雑なストーリーを分かりやすくするために採用されることが多く、娯楽小説の読者サービスに向いている。よほど高度な技術でないと純文学的な深みを与えるのが難しいようだ。この作品は力作感が充分あり、現代人の肌合いをよく表現している。同時にその表現内に留まっている、とも感じた。

| | コメント (0)

同人誌「小説藝術」47号(新座市)作品紹介

【詩「いとしくて」犬山六郎】
80幾年か役に立ってきた犬歯が、朝目覚めたら抜けていた。かつては白かった色も黄色くなり、根は黒ずんでいる。くたびれ果てた己の姿そのもので、いとおしい、という内容。
【詩二題「春のとき」「朝の食卓」長谷川冨貴】
「春のとき」は、草色に染められる気配を覚えながら/恋慕や嫉妬の感情もあったことを蘇らせる/この 春のときーーという。「朝の食卓」は、毎日、夫の同じ顔、同じ献立。今日の出来を論評しあう。“だけど 平和な世の中っていいね”“落ち着いて食事していられるもの”あと求めるのは、藝術に対する己のエネルーの強さだという内容。
【「ドストエフスキー小論」高杢一正】
筆者の文学へのかかわる話(小説よりも評論をすることにした経緯)と、西洋のフローベルやモーパッサン、日本の漱石や菊池寛、芥川龍之介の話題がある。筆者は、生活を犠牲にする藝術至上主義より、人生至上主義なので、小説より評論をする方を選んだという。そのあと「貧しき人々」の梗概をする。
【随筆「甲州街道」和田聖子】
もと、衆議院議員の私設秘書をしていて、同人誌に小説を書く人の高級老人ホームの生活の日誌。その生活ぶりが描かれていて興味深い。
「小説藝術」発行所=〒352-0032新座市新堀1-7-26、竹森方。

| | コメント (0)

2008年5月20日 (火)

同人誌作品紹介「照葉樹」第5号(福岡市)

現在、紹介者も同人誌向けの作品を書いているので、他者の作品への言葉は、みな自分に突き刺さってくる。どうしても、批評的な視点が不足しがちだ。自分も書くという視点では、その作品の長所があれば自分も真似したいという気持がどこかにある。そういう視線では、文芸批評的なものは、成立しないのである。今回の「照葉樹」の二作は、真似したくなるところが多くあり、参考になる。
【「不器用な愛しさ」水木怜】
 語り手の「私」は、夫が他の女のもとに去り、別れている。捨てられた思いで、幼い子どもを連れ、母のいる実家に帰る。父親は戦死している。時代は1960年代後半か。実家で肩身せまくして暮らす。すると40代まで独身であった佳子叔母が、50歳過ぎの絵描きさんと結婚し、独身でいた時よりも幸せとは見られない状況にあることを知る。また、隣に住む母親の兄の純一郎は医師で、戦場を体験したことから独特の死生観をもち、それに従う妻の志津代の姿も描かれる。
 不幸の影のさす中で、「私」の夫の宏志が、反省してよりを戻そうとする様子が描かれる。それらの出来事から、好しにつけ悪しにつけ、女性の運命は男の生活ぶりの影響下にあることが示されている。
後半に入ると、佳子叔母の女友達が、超能力を売りにした宗教を持ち込み、佳子叔母はそれにのめりこむ。やがて彼女は精神に変調をきたし、ついに人格が崩壊してしまう。志津代叔母は、夫の独自の死生観から、ガンになっていても知らされず、手遅れになって亡くなってゆく。
 この二人の女性にくらべ、夫が子どものもとに戻り、「私」の円満家庭の再現と母親の幸せ生活のはじまりを描く。
 小説のスタイルとしては、導入部がもたもたししているが、その分、後半での生活のなかの修羅場がイキイキとし、表現力が光る。オーソドックスな純文学作品。
 なかで、印象的なのは、自分の与えられた環境に殉じて、忍従の生活をして死んでいく志津代の姿である。作者の費やした文字数は、それほど多くないが、その精神の美のようなものを表現している。字数を多く費すことだけが表現のすべてではないことが、ここに示されている。

【「中有の樹」垂水薫】
 どういうわけか、語り手は森の中の大樹の枝に宙吊りになっていることに気づく。どうやらそこは霊界と現実の交差する幽界付近らしい。
 そこで語り手は、38年にわたる自分の人生を見つめなおし、洗い出しをする。
 うまい手法を編み出したものである。この手法であるからこそ表現できた作品と思わせる。作者の樹木好みの嗜好がよく感じられるし、世俗的な生活では、意識下にある死と隣接した感覚をうまく表現している。幻想的でありながら、森のイメージのディテールがリアルで、清涼感と森林浴感覚に満ちている。いつも大木に宙吊りというわけにいくまいが、森林浴感覚の新境地が期待できる。大江健三郎の初期作品には、四国の森林浴感覚の作品があるが、またべつ風味の森林浴感覚作品が期待できそう。
「照葉樹」発行所=花書院〒811-0852福岡県久留米市高良内町2347-182。℡/fax0942-43-9089。

| | コメント (0)

2008年5月13日 (火)

「同人誌時評」志村有弘氏「図書新聞」08年5月17日「同人誌時評」志村有弘氏

《対象作品》「否定」青柳俊哉(「PARNASSIUS」150号/福岡市)、「赤貧洗うが如し」中原洋一(「大衆芸能」68巻4号/東京都)、「芥川龍之介と「広瀬のおじさん」」塙宣子(「韻」5号/東京都)、「青葉の笛」平沼超人(「果樹園」10号/豊川市)、「汚された神女―井上内親王のひとつの風景」佐藤明子(「豊中文学」29号/豊中市)、「青狐の賦―火野葦平の天国と地獄(上)」暮安翠、「放恣の時代の中で」秋山喜文(以上「九州文学」7期1号/中間市)、「妻夫は輪廻の絆」西村啓(「季刊作家」64号/豊田市)、「御旧地探索」武野晩来(「青稲」80号/松戸市)、「弁天夢幻」五十嵐崇(「断絶」102号/東京都)、「春の修羅」藤原響(「かばん」2008年3月号/東京都)、「華やぎて リコリス」伊藤恭子(「渤海」55号/富山市)、「朝の橋」穂積生萩、「反歌」小山富美子(以上「火の群れ」105号/東京都)。創刊号「九州文学」第七期創刊号(中間市)、「星座盤」創刊号(豊中市)。追悼・阿部英雄(「岩漿」第二期創刊号/伊東市)、桜井恵志(「象」60号/名古屋市)、北川荘平(「雑木林」11号/枚方市)、大場正男(「PARNASSIUS」150号/福岡市)、小倉三郎(「火の群れ」105号/東京都)、栗原久(「文学世紀」34号/東京都)。 ( Pj_010
(「文芸同人誌案内」掲示板よこいさんまとめ)
【写真は「春の文学フリマ」での同人誌見本】

| | コメント (0)

2008年5月 8日 (木)

同人雑誌評「文學界」08年6月号大河内昭爾氏

上半期優秀作=「犬猫降りの日」鮒田トト(「龍舌蘭」)。
奨励作=「潮どき」桐山みち代(「河」)、「蜘蛛の部屋」谷口葉子(「カプリチオ」)
「ブルーシートの下で」清水園、「あとがき」(以上「星座盤」創刊号/豊中市)、「お見合いゲーム」望月廣次郎、「編集後記」(以上「淡路島文学」2号/淡路市)、「鷺」寺本親平、「バスを待つ」馬込太郎、「上海」太田京子、「キャンドルナイト」池本朱希、「野々宮さんの恋」折金紀男、吉田知子、吉良任市(以上「遠州豆本別冊短編小説集13」/浜松市)、「冬立つ日に」西向聡(「法螺」58号/交野市)、「その怒りと静謐」田中冬吉(「アミーゴ」59号/松山市)、「たたら火」&「編集後記」木辺弘児、「潮合い」関幸壽(以上「森時計」6号/大阪市)、「風景―後夜」山口馨、「君子豹変」上田千之(以上「渤海」55号/富山市)、「砂の嵐」三浦瑞子、「森を渡る」岡村知鶴子、「『血と水と』」勝陸子(以上「亜熱帯」11号/鹿児島市)、「羽化」武山博、コラム「『速読』と『遅読』」吉田善穂(「断絶」102号/東京都)、「花香橋にて」大野光生(「飃」77号/宇部市)、清水信、衣斐弘行、伊藤伸司、青井奈津、磯崎仮名子(以上「火涼」58号/鈴鹿市)、「紅い螢」高畠寛、「純子先生」小西九嶺(以上「あるかいど」36号/大阪市)、「手亡」&「編集後記」楠本耀子(「葉風」5号/東京都)、「いやしの書―親鸞からイエスへ―」井上武彦(「文芸中部」77号/東海市)、「目が見た目」類ちゑ子、「杜夫の秋」刺賀秀子(以上「小説家」127号/国分寺市)、「心残り」澤辺幸雄、高井有一(随筆集「13時」/東京都)、「お袋さんよぅ」芹沢亮輔(「青稲」80号/松戸市)、「ラブソング」作者名不明(「戞戞」22号/?)、「吉村昭を後世に伝えるために」木村暢男、「吉村昭試論」桑原文明(以上「吉村昭研究」創刊号/西条市)
ベスト5=「その怒りと静謐」田中冬吉、「冬立つ日に」西向聡、「風景―後夜」山口馨、「血と水と」勝陸子、「目が見た目」類ちゑ子。(「文芸同人誌案内」掲示板よこいさんまとめ)

| | コメント (0)

2008年5月 7日 (水)

同人誌「木曜日」第24号(東京)作品紹介(2)

【「紙のお城・からっぽの箱(らせんのおうち)」上田万紀】
 10歳の誕生日に、母親が「私」を呼んで「お前はもう子どもではない」と、祖母や叔母の関係を打明けられる。家庭のいきさつが、業務報告書のレポートかメモのような文体で記される。変わったスタイルはおもしろい。この行間に、言いたいことのポイントが隠れているようだ。それをどのような形で表現するかの課題を提出したような小説になっている。
【「三毛猫三毛子」北川佑】
夏目漱石の「我輩は猫である」の猫のような猫に、恋をする猫の三毛子の物語らしい。この三毛子は、脳内思考の電気信号を直接受け止めて解読できるという超能力をもっている。うらやましい能力なのか、不幸な才能なのか。正しく読み込むのにも、能力が必要のようだ。
【「黒猫くろべ」北川佑】
 語り手は現在、脳梗塞でやっと歩けるような情況にあるが、回想をする。それは30代に入る頃に、研究のため老人介護施設の現場に入る。すると、黒猫が人間に変身して人生における生と死について語りかけを受ける。哲学的思考と感性を混ぜてかき混ぜるような味のする作品。味付けがあっさりしているのが特徴。

| | コメント (0)

2008年5月 5日 (月)

文芸同人誌評「週刊読書人」08年5月9日白川正芳氏

《対象作品》「シコクイワナ」青木哲夫(「アンプレナブル宣言」13号)、「聖母子と廃本」渡辺勝彦(「R&W」4号)、「文芸批評・吉本隆明」釈恵照(「勢陽」20号)、「二度の別れ」安芸宏子(「雑木林」11号)、「評価された『枚方文学』の実績」西向聡(「法螺」58号)、「芸術家の壁」竹中忍(「北斗」四月号)、「コレクター」むらいはくどう(「勃海」55号)、「埋める」佐伯晋(「あるかいど」36号)、「上海」西芳静江(「水晶群」54号)。(「文芸同人誌案内」掲示板よこいさんまとめ)

| | コメント (0)

2008年5月 4日 (日)

同人誌「木曜日」第34号(豊島区)作品紹介(1)

【「転落」十河順一郎】
「誰彼きみや」という男を人間嫌いとして描く。この前半部のところが、薀蓄をくりひろげて幼少時代からの生い立ちを語る。かなり味があって、読ませる。成人して会社勤めをはじめ、人間嫌いで孤独な男が、会社のビルの管理人と親しくなり、さらに事情のある日系の東南アジア人(若い女性)と親しくなる。この辺りは、本来のきみやの性格と矛盾したところもあるのだが、仕事ぶりや偶然性を巧みに書き込んで、気にならなくする工夫があり、筆力、腕力の確かさを見せる。デテール表現の良さが小説の説得力を増している。そこから、話は殺人事件に発展する。結構いきなエンターテインメントとしても面白い。コンゲームスタイル、あるいはフランスの犯罪小説のジャンル、セリノワールとかいった味もある。同人誌でこれだけ洒落た作品を読めると思わなかった。
【「風林火山」和田英樹】
エッセイで、山梨の甲府駅前の話だが、何気なく書いているようだが、なんとなく面白く読ませる。
【「待ち人」黒田治郎】
変な女からの電話を話のきっかけにした、ちょっとした小話。軽い文体はいいが、もう少し作家的な工夫が必要では。

| | コメント (0)

「同人誌時評」「図書新聞」08年5月3日「同人誌時評」福田信夫氏

《対象作品》「きれい、ね」庄司肇(「文学街」246号/杉並区)、「ある街道記」千葉三朗(「北門文学」9号/秋田市)、「大久野島」大高みのり(「翼」32号/宝塚市)、「夫の逝去」木下径子(「街道」12号/武蔵野市)、「オレの将来」山田敦心(「城」93号/みやき町)、「十年記念日―スクランブル十年、打ち明け話」&「700歩」武田久子(「スクランブル」20号/松山市)、巻頭言「『地域文学』は可能か」&戯曲「武蔵野の家三幕」&「編集後記」神谷量平(「京浜文学」11号/横浜市)、「望郷―姫路広畑俘虜収容所通譯日記」(八)柳谷郁子(「燔火」66号/姫路市)、「『公憤と思慕と』―柳宗悦と朝鮮―」上原アイ(「文芸復興」118号/船橋市)、「銀次郎の日記―パソコンは無用の長物か」青江由紀夫(「海峡派」111号/福岡市)、「死の作法―古本屋の日記から」安田有(「Coto」15号/生駒市)(「文芸同人誌案内」掲示板よこいさんまとめ)

| | コメント (0)

2008年4月13日 (日)

同人誌「孤愁」第3号(横浜市)

【「漂白」豊田一郎】
一人同人誌。作者が30年前に書いたという作品。新聞社の海外派遣員をしていた記者が、NYのブルックリンの日本人女性の家に招かれると、アーサーというベトナム戦争の兵士あがりの男と同居していた。そのアーサーがベトナム戦争で覚えた麻薬にはまって、逮捕され刑務所に入っていることを知らされる。そのことを女性の友人に知らせると、もう関係ないという。ベトナム戦争に狩り立てられた貧しい境遇のアーサーの孤独。作中でも国家の「犬」として扱われ、戦場に狩り出されたアーサーを間接的に表現し、現在読んでも巧い作品になっている。
 どこの国の兵士も、国家権力によって「犬」にされてしまう。「犬」と「犬」が血を流し、理由なき憎しみをつのらせる。だれがその権力の支配から脱け出られるのか、と考えさせる。 

| | コメント (0)

「同人雑誌評」「文學界」08年5月号/担当・大河内昭爾氏

《対象作品》「ハンモックのある庭」難波田節子、「海のくれた贈り物」藤野秀樹(以上「季刊 遠近」33号/東京都)、「ホトトギスの谷間」寺元敏胤(「文学街」245号/東京都)、「睡蓮の祈り」黄英治(「架橋」27号/清須市)、「愛骨」立花健、「花型ちらし」羹凪翔(以上「九州作家」123号/北九州市)、「公園で」「激怒」「ロン」「住所姓名年齢不詳」「フリーマーケット」田口佳子(「翡翠」個人誌25号/東久留米市)、「プレゼント」菅原治子、「キャリントンの頃」北村順子、「男同志」野中麻世「夜の足音―パリ、サンドニ通り二四九」麻井さほ、「知っている」陶山竜子(以上「婦人文芸」84号/東京都)、「白い闇」野沢薫子(「長崎文学」56号/長崎市)、「余命」野坂喜美(「米子文学」53号/米子市)、「蜃気楼」高テレサ(「修羅」56号/桶川市)、「オレの将来」山田敦心(「城」93号/みやけ町)、「象のテラス」ひわきゆりこ(「胡壷」6号/福岡市)、「あと何日」平井利果(「文章工房」7号/?)、「色なき風」宮田智恵子、「残り雪」佃陽子(「桂」5号/さいたま市)、「潮どき」桐山みち代(「河」144号/東京都)、「みんな消えていく」今泉佐知子(「果樹園」10号/豊川市)、「鬼虫」西村重夢、「取り憑き体質」日下渓子、「鱧と女と棟梁と」沖田潮(以上「スクランブル」20号/松山市)、「よにげ」西園春美(「詩と眞實」3月号/熊本市)、「羽虫」那村洵吾(「VIKING」686号/茨木市)、「夫の逝去」木下径子、「逃亡日記」佐々木欽三(以上「街道」12号/武蔵野市)、「窓」笹原実穂子、「愛人にしてください」高井かほる(「札幌文学」71号/札幌市)。
ベスト5 「潮どき」桐山みち代、「象のテラス」ひわきゆりこ、「色なき風」宮田智恵子、「ホトトギスの谷間」寺元敏胤、「鬼虫」西村重夢。(「文芸同人誌案内掲示板」よこいさんまとめ)

| | コメント (0)

2008年4月12日 (土)

イントロ紹介=「騒」73号を読む

高度な詩やエッセイ、表紙デザインの詩人による同人誌である。73号は、原満三寿「金子光晴詩集『三人』から『若葉のうた』を貫くもの」から、書き出しを読む。
           ☆
金子光晴と、森三千代も、森乾の家族三人が戦中の疎開先である山中湖畔で紡いだ私家版の合同詩集『三人』が発見された。そのことが2007年8月17日の朝日新聞の社会面に載るや大きな反響があった。まず講談社の「群像」(9月号)が特集を組んでその一部を紹介し、ついで詩集「三人」(08年1月)として刊行された。さらにNHKがETV特集「父とチャコとボコ」(08年1月20日)を放映した。
 そのいずれにも幻の詩集の発見者としてわたしが解説などで関った。その全容は、講談社の詩集「三人」とその解説を読んでもらえばわかることなのであるが、表題の件については、わたしの解説では暗示的に指摘しただけで