2020年6月 9日 (火)

同人誌時評「図書新聞」(6月6日)=評者・越田秀男

 (前略)活き活きと生きたいがままならない人生、虚構によりどれほどこの生活の実相に迫れるか、作家達が舞う。
 『消された男』(水口道子「あらら」11号)――とある住宅街にゴミ屋敷、その家から死後8日も経った女の遺体が。夫が住んでいる! 殺人? 警察は事件性なしで引き上げる。順々にそのワケが明かされてくると、この夫婦と死んだ娘の不幸の塊のごとき生涯が浮き彫りに。残された夫は入所施設に。オ爺捨山? が、男は終の住処で活き処を見出す。このラストが作品のミソ。
 『太郎と踊ろう』(宇野健蔵「じゅん文学」102号)――零細な建設コンサルタント会社に勤める就職氷河期世代の主人公。会社から車で三時間もかかる建設用地の発掘調査を任される――長雨、期限の切迫、突然の梅雨明け、猛暑、過酷な作業、現場作業員との擦った揉んだは、危なくもユーモラス。一日が終わり、明日は休日、「何となく良い一日だった」、仕事も活、作品も活。
 『茶箱』(小松原蘭「季刊遠近」73号)――幼なじみの主人公と従兄は成長し恋仲になるが、主人公はイトコ同士が気になりはじめ、親側の事情もあり、心に反して関係を絶つ。と、従兄は病死。物語は下り、主人公と母は父を看取り、母も超高齢に、介護付き老人ホームの話が現実化する。一旦は母の入所を決めた主人公、過去の自身への蟠りが膨らみ、困難でも母と暮らす道をとる。
 『たとえば地獄の底が抜けたなら』(玉置伸在「カプリチオ」50号)――日雇い労働者の主人公、泥酔してひき逃げ事故に遭い、奈落の底。と、生活保護も受けずに生き永らえている老人と仲良くなり、この老人が時折発する“たとえ話”に惹かれる――「俺たちは野生の王国にいるんだ」。主人公はこの言葉に地獄の底から抜け出る道を感じ取る。動物園の檻の中よりまし?
 『負け犬』(瀬崎峰永「ふくやま文学」32号)――父に愛され父を愛する娘が強姦される事態に、父は手のひらを返すように娘を詰り疎んじる。娘は極度のストレス障害に陥り、やがて公衆便所脇の路上生活者、自殺未遂で病院に。担当医は父との関係修復を目差すも、裏目に出て自死。父からの完全離脱こそが、彼女の唯一の活路だった。
 『マンタとの再会』(國吉高史「南溟」8号)――「皆何処へ行ったかね」という老婆の言葉ではじまる。老婆の娘は18の歳で強姦され、産んだ子を母に託し本土に出奔。孫娘はその容姿から差別を受けるも耐え、婚約者を得る。が、難病を発症、婚約解消、40にして病が重篤化、延命策で足切断、半年後死去。わずかな“命”の時、本土で生まれ育った弟が母の死の知らせとともに訪れ、孫娘と婆にささやかな“活”を贈った。
 『兵詩』(城戸祐介「九州文學」572号)――バラバラになった自分の死体を自分が覗き見るシーンから始まるこの作品は、これから敵地に向かう時空へ舞い戻るところで終わる。生き返ると同じ時空、無限魔か。
 1946年12月20日創刊の「文学雑誌」、91号にて休刊。1977年8月20日創刊の「法螺」、80号にて終刊。 (「風の森」同人)《参照:虚構によりどれほど生活の実相に迫れるか、作家達が舞う

 

 

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2020年6月 1日 (月)

西日本文学展望(西日本新聞5月29日/朝刊=茶園梨加氏

題「異なる存在」
田川喜美子さん「空」(「長崎文学」93号、長崎市)、寺井順一ん「甘雨」(「西九州文学」44号、長崎県大村市)
田原明子さん「ほうずき」(「海峡派」148号、北九州市)、野沢薫子さん「秘湯」(「長崎文学93号)、「詩と眞實」(851号、熊本市)より共に連載の武村淳さん「平成uncontrollable fantasy」シリーズ・園村昌弘さん「村を撮るⅣ」、坂田眞澄さん「子育て盛衰前哨戦」(「西九州文学」44号)。(「文芸同人誌案内・掲示板」。ひわきさんまとめ)。 .

 

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2020年5月20日 (水)

文芸同人関係者の集会自粛活動の現状=外狩雅巳

 二十年間にわたり毎月の活動が停止したことがなかった「相模文芸クラブ」も活動休止中である。
 月例会は月二回なので三月・四月・五月と合計六回で12作品の合評が滞ってしまった。
 四月の年度更新も役員選出もできず、昨年度役員による延長運営中で毎月の通信連絡などを行っている。
 六月発行の二十周年記念40号も、発行と掲載料集金や全員配布などに苦労することだろう。
 相模原市は公民館使用を8月末日まで再延長した。9月会合で顔を合わせる時が楽しみである。
 「町田文芸交流会」も三か月間は会合もできず、通信連絡で済ませている。
 町田市は五月末で公民館使用中止を解除する方針なので、六月からは通常に会合を行い遅れを取り戻す。
 交流会参加の各同人会や個人会員の活動についても、情報交換などが本格的に行えるだろう。
 しかし、この間には参加者の一人が病没したり、参加同人会「みなせ文芸の会」の最新号発行もあった。
 時が止まってしまったような自粛期間中でも、個々人の文芸意欲と創作活動は脈々と営まれている。
 交流会活動はその相互連携の要として、自粛期間中も役割を果たしている。
《参照:作家・外狩雅巳のひろば

 

 

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2020年5月10日 (日)

西日本文学展望「西日本新聞」04月30日(朝刊)茶園梨加氏

「西日本新聞」04月30日(木)朝刊「西日本文学展望」茶園梨加氏筆
題「女の生き方」
西田宣子さん「手袋とサボテン」(「季刊午前」58号、福岡市)、和田信子さん「猫、踏んじゃった」(「南風」47号、福岡市)
田中青さん「ドンコ川」(「南風」47号)、白石すみほさん「恋歌」(「ふたり」23号、佐賀県唐津市)、「筑紫山脈」(38号、福岡県久留米市)より表紙担当の大國留美子さんの紹介 。
《「文芸同人誌案内・掲示板」2020年 5月 2日、ひわきさんまとめ>》

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2020年4月 3日 (金)

WEB同人文芸「熱砂」と当会について

 「季刊文科」80号に同人誌運営者の情報提供欄がある。そこにWEB雑誌「熱砂」の運営者・伊神権太氏の活動ぶりが紹介されていた。「季刊文科」は、会員購読制をとっていて、1年分の雑誌の購読料金は、6000円程度であるが。それを維持するための資金不足を補うために、それに同調する購読者は4000円を寄付するという形で1万円を支払うという共済的なシステムとっている。共済的なプラス料金は、希望しない人は6000円でも購読できる。さらに同人誌参加者の原稿を優先して掲載しているようだ。その同人誌運営者の欄に「熱砂」の紹介があった。そのような形式にのものがあるのを知らなかったので、驚くと同時にサイトを運営するモチベーションの高さに感心した。このなかで、活字本の販売の宣伝にどれだけちっからを入れ、成果が上がっているのかに関心を持った。自分は、ネットサイトは、自分の本を宣伝して、文学フリマで販売するのを基本的にサイト設計をしている。実際に数は少ないが、毎回ぼちぼち売れている。短編評論を同人誌に書いたら、フリマで自分の書いたものを付箋をつけて、注目されるようにすると、その同人誌も売れる。そうできるように意識したものを書いている。《参照:文芸同志会のひろば》ただ、コロナにかかっかったら、死ぬと思っているので、目下のところは販売を中止している。注文があたっとしても、死んでいないかも知れないからだ。

 

 

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2020年4月 2日 (木)

西日本文学展望「西日本新聞」3月30日(月)朝刊=茶園梨加氏

題「風土と方言」
冒頭、日巻寿夫さん「終わらないジェンガ」の第50回九州芸術祭文学賞最優秀作受賞と古川真人さん『背高泡立草(背高泡立草)』の芥川賞受賞に触れる。
あびる諒さん「漆の贅」(「詩と眞實」849号、熊本市)、島夏男さん「和江婆」(「照葉樹二期」17号、福岡市)
椎窓猛さん「イノシシ退治は苦笑い」(「九州文学」49号、福岡県中間市)、水木怜さん「やまぶき」(「照葉樹二期」17号)
随筆から、屋代彰子さん「芽生えのとき」(「九州文学」49号)、高野藍さん「魔の285A」(「照葉樹二期」17号)
《「文芸同人誌案内・掲示板」ひわきさんまとめ》

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2020年3月22日 (日)

同人雑誌季評「季刊文科」80号=谷村順一氏

「ほんとうのこと」
《対象作品》稲葉祥子「あやとり巨人旅行記」(「雑記囃子」第24号・大阪府)/キンミカ「チキンファット」(「mon 」vol15・大阪市)/飯田未和「茄子を植える」(同)/佐伯厚子「紫の旗」(「樹林」vol 657・大阪府)/長谷一馬「ザリガニのメッセージ」(同)/秋尾茉里「季節」(「babal」3号・大阪府)/同「動く物」(「白鴉」31号・兵庫県)/大新健一郎「協力者」(同)/新谷翔「ガンズエリア」(「組香」第4号・大阪府)/水無月うらら「可燃」(「星座盤」vol .13・岡山県)/谷山結子「ギフト」(「せる」第113号・大阪府)/松田恵美子「たまごについて」(同)/丹羽加奈子「ミドリさん」(じゅん文学」第101号・愛知県)/切塗よしを「その風は蒼ざめていた」(「あるかいど」67号・大阪府)。

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2020年3月15日 (日)

西日本文学展望「西日本新聞」(2月26日・水)朝刊/茶園梨加氏

題「人生模様」
柴垣功さん「ここは無人駅」(「詩と眞實」850号、熊本市)、杉山武子さん「坂道」(「火の鳥」29号、鹿児島市)
都満州美さん『海の見える丘』(海峡派社)、同「リカバリー・ルーム」(「海峡派」147号、北九州市)、「詩と眞實」850号記念号より宮本誠一さん「フラワー」・木下恵美子さん「蝙蝠(こうもり)」・辻一男さん「柵」
《「文芸同人誌案内」掲示板・ひわきさんまとめ》

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2020年3月13日 (金)

「第四回文学フリマ前橋」3月22(日)の開催を中止

  2020年3月22日(日) に予定していた「第四回文学フリマ前橋」は開催を中止することになった。文学フリマ前橋事務局では、現在国内で発生が確認されているCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)にかかわる情報収集、および開催の可否等を検討。開催に向けて事務局からの感染症対策をに大いなる理解を受けていた。しかし、3月10日(火)に示されました新型コロナウイルス感染症対策本部の政府方針および、前橋市の周辺文化施設の休業状況などを勘案し、「第四回文学フリマ前橋」を【中止】とした。
  事務局では来年(2021年)の通常開催に向けて準備をするという。すでに会場とも調整を行っており、次回開催については追って告知するという。

 

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2020年2月13日 (木)

文芸同人誌評「三田文学」2020冬季号( 柳澤大悟氏/加藤有佳織氏)

No.140(2020年冬季号)で取りあげられた作品
・宮本誠一「慰留地」(「詩と眞實」VOL.842、熊本市南区)
・飯塚裕介「小さい絵」(「新奇蹟」第九号、東京都足立区)
・秋尾茉里「季節」(「babel」第3号、大阪府八尾市)
・内藤万博「機械兵団」(「マザー・グースREMIX」大阪市北区)
・谷口あさこ「新生」(「せる」VOL.111、大阪市旭区)
・篠原ちか子「ギプスが恋人」(「風紋」第14号、富山県富山市)
・稲葉祥子「あやとり巨人旅行記」(「雑記囃子」VOL.24、兵庫県伊丹市)
・北条ゆり「十六番目」(「まくた」第二九六号、横浜市青葉区)
・秋尾茉里「動く物」(「白鴉」31号、兵庫県尼崎市)
・さあらりこ「ミル・コリンのふもとへ」(「てくる」26号、滋賀県大津市)
・桜井夏実「まだら雲」(「青の時代」第46集、北海道函館市)
・木下衣代「十年食日記」(「黄色い潜水艦」70号記念号、奈良県北葛城郡)
・花島眞樹子「うどんげの花」(「遠近」第71号、横浜市青葉区)
・垣江みよ子「父の物語」(「樹林」vol.655号、大阪市中央区)
・真銅孝「エチ蚊」(「babel」第3号、大阪府八尾市)
・堀田明日香「ペイン・スレッシュホールド」(「中部ぺん」第26号、名古屋市千種区)
・水無月うらら「可燃」(「星座盤」vol.13、岡山市北区)

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