« 文芸同人誌「私人」107号(埼玉県) | トップページ | 文芸同人誌「R&W」第32号(名古屋市) »

2022年9月15日 (木)

文芸同人誌「文芸中部」第120号(東海市)

【「『東海文学』のことどもから(13)」三田村博史】
 地域の有力同人誌であった「東海文学」にまつわる文壇人脈から、作家、編集者の関わり合いを記す。特に音楽家の坂本龍一の実父である編集者故人・坂本一亀に関する逸話、雑誌「作品」や「海燕」の編集者の寺田博しなどの、関係の経緯が記されている。文芸雑誌は、編集者でその個性が発揮される。であるから、本稿での文芸同人誌「東海文学」が、どうかかわって、どのような経緯で、文壇編集者との関連が絶たれた様子には、興味深い深いものがある。基本的に、商業文芸誌と文芸同人誌は、編集時の意図が異なるのでなるので、文学的であるいうことでの類似性を過大に評価するのは、適切でないと思う。そうした事情も読み取れるのでよい資料である。
【「闇を透かす」本興寺 更】
 江戸から東京へ、移行したばかりの時代。あまり描かれない時期の時代小説である。時代考証もきちんとしている。武士の娘であるお紗登と、武士精神が抜けない父親の存在と、母親などとの家庭の調和を軸に、彼女に起きる出来事を描く。時代考証など、相当調べて調べあるのであろう。せっかくだから、この時代をうきぼりにして、若者向けに、転換期の姿がよく理解できるような解説書を書くような意図をもったシリーズにしてみたらどうであろう。プロデューサーが欲しいところだ。
【「バタフライ・ガーディン」西澤しのぶ】
 弟は、小学生一年生で、私は六年生。町内会でアサギマダラという蝶のくるようなバタフライ・ガーディンを作る集いがあることを知る。その集いで知り合った茶髪の子が、大人から虐待をうけているようなのだ。そこで警察に電話して、詳しい事情がわかる。子供の視点で、アサギマダラ蝶の謎を啓蒙する意味のある短編。
【「おれたちの長い夏」朝岡明美】  昔、高校の吹奏楽部の仲間たちが集まって、思い出話をする。
---その他、「ずいひつ」欄が-文芸時評や高齢者の生活ぶりを記したのが、身に迫って興味深い。
 発行所=〒477-0032東海市加木屋町11-318,三田村方、文芸中部の会。
紹介者=「詩人回廊」・北一郎。

 

|

« 文芸同人誌「私人」107号(埼玉県) | トップページ | 文芸同人誌「R&W」第32号(名古屋市) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 文芸同人誌「私人」107号(埼玉県) | トップページ | 文芸同人誌「R&W」第32号(名古屋市) »