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2022年8月15日 (月)

文芸同人誌「海馬」第45号(西宮市)

【「れりぴー」吉岡辰児】
 脳機能の病気で、肉体の動作が故障したことから、リハビリをしている人間の、意識の姿と心の動きを独白体で表現する。本誌の山下同人の独白体とは、全く質が異なる。本来の生まれながらの機能を、復活させることが前提になっているからだ。読み物的に可能性のある形式にしている。
【「不能者」山下定雄】
 独自の独白体で、「私」の生活の中での実存的な意識の流れを表現する。そこには自己の人間性の普遍性を当然とする。人間の持つ肉体的な機能を普遍的にしているのは、哲学的基礎でもある。自意識的なその発想に懐疑的になりながら、カンナという彼女のことに、こだわりを持つ。話は「病院」という区切りをして、精神科らしき病院生活の心の一部始終の独白を行う。書き出して表現された、その人しかわからない意識と、心の動きを表現する技術の面白さに引き込まれる。既発表作品は、「季刊文科」誌86号で、長い批評文が掲載されたようだ。私の読解力に対応する人が日本にいるということらしい。商業誌の文芸雑誌でも、1作や2作は掲載したらどうであろう。文芸的な成果の一つであるはずである。
【「陰と陽の肉体(前半」」永田祐司)
 都内に住み着いた3人の若者の出来事話。出だしから間もなくコロナにかかってしまい、その経緯が順序よく、だらだらというか、述べられているのが面白い。
【「神戸生活雑感―日本と台湾の文化比較」千佳】
 台湾出身の作者が、「海馬文学会」のHPのなかで、ブログを持っている。今回は、そこから飛行機事故で亡くなった向田邦子についての思い入れを記す。当会にも帰化人の詩人がいてブログ「詩人回廊」で活躍している。
発行所=「海馬文学の会」。
紹介者「詩人回廊」編集人・伊藤昭一。

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