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2022年3月12日 (土)

文芸同人誌「私人」第106号(東京)

【「小諸なる」根場至】
 全体に小説としてよく書けている。小諸にある地元の銘酒「古城」を醸造する藪塚酒造という造り酒屋がある。分家として、それを販売する藪塚酒店がある。中には角打ちを嗜むためのカウンターもある。古風な雰囲気を保つ古老の経営者には娘しかいない。そこに婿を迎える話がつづく。小説を書きなれているので、読みやすい。ただ楽々と書いているだけの気軽さもある。何か、縛りをもって書いた方が、作者にとって工夫する楽しみがあるのではないか。娯楽小説にしてはつまらな過ぎる。純文学にしては深みがない。ただ、読みやすさが取り柄である。
【「海辺のカフェ」えひらかんじ】
 これも全体に良く書けている。これは、東京で勤務医をしていた曽根哲夫が、激務で体を壊して入院する。それをきっかけに、勤務医をやめる。結婚して2児の過程をもつ。職探しをしていると、小さな医院を開業していた父親が病死する。さらに妻も急死する。そんな出来事を縫って、哲夫の生活ぶりを描く。話に筋があってつまらなくはないが、それほど面白くもない。筋立ての周辺事も必然性が薄く、途中から期待をしないで読むので、それなりに面白いが、趣味小説につき合う感じがして、感想もわかない。まあ、いいんじゃないですか、という感じ。
【「敗戦国の残像」尾高修也】
 これが一番読みごたえがあって、興味深かった。昭和の戦争の時代に生まれ、その後の昭和を生きてきた。昭和12年生まれ、とういうから私より5歳先輩でアある。日本の敗戦後の米国追従の歴史は、度を超したものという実感を持っていることに、同感した。同じ視点がの日本人が存在することに驚いた。米国がイランと石油などエネルギー関連で取引のある企業を対象とした「イラン制裁強化法」が成立したのを受け、日本側に同油田からの撤退を指示、中国にその権益が渡った。フセインクエート進行には、日本人一人当たり3万円の税金使用。その金でアメリカは湾岸戦争をした。イラク戦争のフセイン大量兵器保持のウソの情報をまず認め、参戦。それでも小泉首相の判断に国民は文句を言わない。その他、沖縄問題でも、基地問題整理し独立国的構想を打ち出すと、失脚させた。いまでも、鳩山氏をアホ扱いするアホな国民。わけがわからない。その根底には「日米合同委員会」という超法規、超憲法の縛りがあることは、見当がつくが、その詳細は非公開である。ウクライナ問題でも日本は悩む余地はない。米国の指示どおりにするしかないのだ。
発行所=朝日カルチャーセンター。
紹介者=「詩人回廊」北一郎。

 

 

 

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