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2022年2月17日 (木)

文芸同人誌「小説春秋」第32号(鹿児島市)

【「黄金色の風景」福元早夫】
 65年前の話だが、小学生だったタケル少年が、学校の若い女性教の図書館管理をしていたこともあって、頻繁に本を借りに行く。そこでの、最初は九州の地盤の基礎となった2万5千年前の姶良火山のカルデラが主にできた地形であることを知る。それから、日本の稲作が、さまざまな改良努力があって、生産性をあげてきて、今では寒冷地の北海道が生産拠点として最大になっていることを学ぶ。さらに、田んぼの水引きや、なぜ田んぼは、水が土地に浸み込まずに、貯まるのかなど、日本の稲作文化の成果が分かり易く解説されいる。大いに勉強になった。
【追悼「残菊」相星雅子】】
 2001年に発表したものだという。認知症の母親の言動を、客観的であるがゆえのユーモアを交えて描いて、面白く読んだ。内容に厚みがあって、書きたい対象を描く筆の勢いが良く出ている。
【「マミーズ・ヒストリ―」斉藤きみ子】
 72才になるミチという母親には、娘が二人いる。先に登場する眉子は、ミチ49歳で出産した下の娘。姉にあたる石子は、まだ20歳の頃に産んでいる。眉子の視点で、年の離れた姉妹の距離感と、母親への感情を描く。そして、ミチのこだわりの告白で終わる。テーマはいいところをついいる。だが、微妙な感情の動きの表現性がまるでよくない。題材を生かすだけの構成力が足りていないのが、欠点か。
【「裸子の庭」出水沢藍子】
 エンターテインメント文学賞を取った、鯨岡晴子という作家の売れっ子ぶりと、彼女はヘリコプターで墜落死しするまでを、友人で同じ物書きらしい語り手が語る。墜落死するところや、恋人がいたところなどは向田邦子を思わせる。華やかさの影で、彼女が深夜に夢中で作品を書く場面の淋しさが身に迫る場面を、短く印象的に表現したところが印象に残った。作家の人間的な孤独の部分が表現されている。
【「一葉、荒ぶる」杉山武子】
 一葉の貧しさとの闘いぶりと、当時の環境など、自然な筆運びで、きっちり描かれていて、面白かった。皆さん研究していますね。
【「タイガース・スパイラル<完結編>」】
 タイガースファンの思いを球団の様子とともに描いたもの。今は、矢野監督が突の辞任で物議をよんでいるようだ。自分は、田淵を応援してる頃だけ阪神ファンだった。能美はよかったけど、藤波はもうひとつだね。
編集事務局=〒892-0874鹿児島市緑が丘町2-23-41、出水沢方。
紹介者「詩人回廊」・北一郎。

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