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2021年12月 6日 (月)

文芸同人誌「海」104号(いなべ市)

【「虫の譜」山口馨】
 スタイルが、書きながらどういう流れになっても対応するような感じ。総という男の身の上話に、祖父の過去の恋愛話を、聞き出すような話の造りで、単なる思い話になりやすい単調性から脱却しようとする意欲が見られる。祖父の、人生の終活意識に古代からの地層の世代を超えた存在性を語るところが面白い。
【「奸臣―かんしんー」国府正昭】
 資料をもとに、桑名藩の功績のべつある部下の一族を死罪を命じた事件の経緯を語る。事件の要因や周辺事情が不明だが、それがかえって大変面白い。別に同じ作者による「史実と虚構の間」として、本編の成立するまでの事情が解説されている。これも面白く、二つを合わせた経過を入れて作品化するのも一案かなと思った。
【「足抜け」宇梶紀夫】
 人身売買の当たり前の時代背景と地域性をよくしらべ、手慣れた時代小説である。
 その他、エッセイ的な題材で、モ膜下出血になった人や、精神に変調を来た人などを題材にした小説があり、おそらく家庭の事情を考慮して、そうなったのであろうと、納得して読んだ。
発行所=〒511-10284三重県いなべ市大安町梅戸2321-1、遠藤方。
紹介者=「詩人回廊」北一郎。

 

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