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2021年12月17日 (金)

文芸同人誌「文芸中部」第118号(東海市)

【小説「闘病記」西澤しのぶ】
 他にも、触れるべき作品があるのであろうが、今はこの作品について紹介したい。「闘病記」とあるので、コロナ禍の同病の読者たちに参考になるようなものだといいな、と思いつつ読み進めた。そして、その出来の良さに仰天した。まず、手術の麻酔から目覚めるところから始まる。その心模様が冷静にさりげないユーモアをもって語られる。まさしく手記を装った小説である。病名を告げられ、手術のための入院で、その説明も手際が良い。読み返してみてもここかから文学性に富んだ作品にする案が潜んでいたことがわかった。虫垂炎手術から腎臓がんの発見まで、ダビンチという手術マシンを活用する話。症状面では医師が読んでも納得できると思わせる。同時に、語り手の心理と、家族の対応など、じつに分かり易い。そして、幾度かの手術をする患者の心理も自然である。それよりも、その間に語られる文学とその解説力に、おどろかされた。パンデミックの歴史から、カミユの「ペスト」、ナチスのユダヤ人迫害、北朝鮮の米国青年の脳死状態での送還。それに対するユダヤ系米国人の報復。旧約聖書のアブラハムの話から、キリストが磔にされて叫んだという神への言葉、ドストエフスキーの神への問いかけ、その他文学的な蘊蓄の全身体当たり的な披露ぶり。読んで暫く心奪われ痺れ、茫然とした。とにかく一読を推奨する作品である。
発行所=〒477―0032愛知県東海市加木屋町泡池11-318、三田村方。「文芸中部の会」。
紹介者=「詩人回廊」編集人・伊藤昭一。


 

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