文芸誌「浮橋」第8号(芦屋市)ー1-
これからは文芸同人誌の本質が、文学的成果よりも、自己表現の場であるということの把握から、文学性と離れて、生活者としての視点から読むことにした。
それが文学性と重なれば、それに越したことはない。本誌はその意味で、読み甲斐があり、全作品を読んだ。どれも、面白いのであるが、紹介作品を選ぶのに全部を対象にはできない。そこが悩みになる。
【「ペルシャの壷」曹達】
元銀行の頭取であった友人から、イランのパーレビ国王の一族であったが、政変で、アメリカに亡命できなくて、日本にきていたらしい夫人を紹介される。その理由は、彼女のもっているペルシャ美術品を見せられた。それを購入して欲しいという。それが大変な高額品で、知識がないものの、とても応じられるような金額ではない。それでも、折合のついた価格で購入させられる話。その現物らしき壷と器の写真がカラーで掲載されている。価値がありそうだが、ペルシャ陶器に興味がある方は、本誌を見ればわかる。
【「コロナ禍に本能で対処する」三浦暁子】
新婚の時から、飛行機のチケットをとると、そのたびに異変が起きる。その他、航空機での旅行で、起きた出来事が書いてある。特に、航空機内でのパニック症候群の体験は、自分には興味深かった。作者は、その原因をマスクをしている状態だからだと、判断する。自分は日ごろからパニック症候群を病んでいるが、道を歩き始めた時に、息苦しくなって、おさまるまで道端で立ち尽くすのである。どういうわけか、国内の飛行機利用で症状を起こしたことがない。自分は、海外に行ったことがないので、そんなことがあるのかと、面白く読んだ。
【「芦屋川小景」小坂忠弘】
~芦ノ屋の水なき川面に戦ぎ立つコロナの秋の芒の穂波~~このような句から始まって、句を詠んでは、解説を入れている。普段は、自分は短歌を読むことはないが、解説があれば読んでしまう。
【「郵便局まわり」熊谷文雄】
各地の郵便局をまわって、預金通帳を作って集める趣味があるそうだ。それも集めるパターンがいろいろあるという。そういう趣味は、暇だからできるのか、忙しくても工夫してやるのか、考えてしまった。
【「阪神大震災」大西一誠】
1995年1月17日(火)の午前5時46分、阪神大震災は起きた。その体験記である。筆者は当時の川崎製鉄に勤務していたという。自分は、1970年の大阪万博の取材に、東京から取材に行っていて、その期間に御影という駅の川鉄関係者の知人の家に宿泊させてもらったことがある。それから幾年。ある日の朝、TVをつけたら大災害の報道をしていた。その知人に連絡が取れたのはいつだか忘れたが、新築したばかりの家は全壊し、歩いて避難場へ向かい、渡された災害用の食品は、硬くて食べられない。ということであった。災害の実態をしる資料として貴重である。――このような感想を述べていたら、長くなるので、作品選別を考えてみたい。たまたま、しばらく旅行後、原因不明で、ブログに入れなかった。まだ、続きがあります。
発行所=〒659-0053芦屋市松浜町5-15-712、小坂方。
「詩人回廊」編集人・伊藤昭一。
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