文芸誌「浮橋」第8号(芦屋市)―2-
【「感想書簡」城殿悦生】
「浮橋」7号の小坂さんの「散人」を読んで、筆者が感心し、自らに戯作川柳を読んでいたという。コロナ禍で川柳への趣味が強くなったらしい。本歌取りや本句取りを記す。なかには「夏草や兵どもが夢の後(芭蕉)から「くさや食いコロナ滅びて夢の跡」と詠む。その他、面白く工夫した川柳が発表されている。おそらく、過去発句がノートに沢山あるはず。この面白さに工夫した句を、つまらない物語に、挟み込むと面白い物語に変えることができないか。たとえば、川柳探偵とかする人物に、簡単な謎のある事件を調べさせ、物語りの合間に、その川柳を挟むといいのでは。謎の仕組みというのはつくるのは簡単で、例えば、商店街のマラソン競技大会に、いつも優勝する人がいる。そこで、その理由を川柳探偵が調べると、その男は双子の兄弟で、いつも途中で入れかわっていた、というトリックがあることがわかる。しかし、この話を普通に語ったら、面白くもなんともない。だから、合間に川柳探偵の川柳を入れたらどうであろう。すると、なんとなく面白い話に出来上がるーーというわけにはいかないかな。
【「人形始末の記」青木左知子】
従姉から、持っていてほしいと、もらった人形の始末に困り、あれこれ苦心する話。きちんとした力作である。しかし、良い材料をもたらしながら、惜しくも読後感がもうひとつもの足りないものになっている。読者は、古い人形となれば、人形の怪異現象か、その周辺の怪異現象を期待する。その期待に応えて、人の死の予言をすしたりすれば、暗いはなしになる。そうでなければ、かけ事の当たりを予言すれば、明るさのある物語にでいるかも。どうすれば読者の期待に応えられるか、を考えれば、なんとなくお話はできてしまうものである。
【「家さがし」藤目雅骨】
中村宗司は、80歳も過ぎてから突然、田舎に帰ってみようかと思うようになった。そこで、家探しをする。そういうこともあるのであろう。コロナ禍で、ふるさとでの家探しの経過が、面白い。買い物に付き合うような気分である。さらに、施設に入っている姉を見舞う話で、身近な話題でまとまっている。
【「弓取り」小坂忠弘】
すでに亡くなった木場という友人から「相撲四十八手」(恒文社)などの本が送られてくる。そこから木場氏の思い出と、相撲談義の蘊蓄と貴景勝の話など、」エッセイの特性を生かして、すいすいと語る。長いと思うけど、文学仲間への追悼・鎮魂文として読める。
発行所=〒659-0053芦屋市松浜町5-15-712、小坂方。
「詩人回廊」編集人・伊藤昭一。
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