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2021年10月27日 (水)

文芸同人誌を月刊で発行するシステム紹介

 文芸同人誌を月刊で発行することなど、不可能であろうと、自分は思い込んでいた。また、かつて月刊「詩と眞實」を読んだ記憶があるが、当時の同人誌に対する期待と現在のそれとは異なるので、そのうちに月刊ではなくなるであろうと、考えていた。紹介するのもどうであったか、記憶していない。そのご寄贈されなくなったので、その印象だけが残って、忘れている存在だった。しかし、その後、寄贈されるようになった。それが、現在でも月刊であることに驚いた。現在11月号は869号である。
 そして、本誌には「同人・会員募集」欄がある。--本誌は昭和23年11月、戦後の荒廃のなかから立ち上げられ、56名の文学を愛する同誌の酔って創刊されました。以来、月刊文芸誌として今日に至っています。関心のある方は、下記の決まりを読んで問い合わせをしてください、という趣旨が記されている。このような文芸同人誌の存在もあるということで、会費や自費負担に関する項目を転記してみた。誤記があるかもしれないので、興味のある方は、正確には問い合わせをしてみてください。それにしても、よくこの費用負担で発行できるものだと思う。
「同人清規」
1、同人加入希望者は近作1篇を添えて申し込むこと。加人決定は編集委員の合意による。決定後は同人費3ヶ月以上を前納すること。
 2、同人費は月2千円。未納期間は作品の掲載を停止する。6ヶ月未納の者にして何ら意志表示のない場合は、同人を除名することを原則とする。
 3、原稿の締め切りは毎月15日とする。掲載は編集委員の合議に任せること。
 4、編集・校正はその月の第1土曜日、発送は第3土曜H、合評会は最終土曜日に午後3時より「松葉」にて行う。発送には多数の御参加を乞う。
 5、4百字詰め原稿=2万6千円。連載作についてははその都度、協議の上で負担金を決める。
「会員清規」
 1、会員は通常と特別の二種とし通常会員は、月額500円3ヵ月分前納、特別会員は月額750円以上とする。雑誌代は含む。
 2、原稿用紙3枚(4百字詰め)以内の随筆を発表することができる。
編集・発行人=今村有成。〒862-0963熊本市南区出仲間4丁目14-1。.

 

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2021年10月24日 (日)

変節している同志会

 文芸同志会を設立したのは、2000年である。狙いは、原稿料をもらうための発表場所をさがすか、収益の得られる文筆家になるための情報交換と発信の場であった。月400円で月報を発行し、出版関係や作家の情報、ライターの人材銀行などを発信していた。会員は当初は若者が多く、彼らはコツを覚えると、卒業していった。そのうちに、月報の編集技術を企業の社内報担当者に教えて欲しい、というニーズや、ベンチャー企業のマーケティング協力などの仕事が増え、月報を出すことを断念。ネットブログに切り替えて、無料公開し、それまでの会員への償いとして同志会通信をはじめたのである。その後、それぞれの事情で残った会員がいるので、参考資料として情報を流していたのである。70歳を機に、家庭の事情と、時代に取り残された人間となり、この通信の姿勢も変わってきた。最近は、文芸同人誌のブルジョアによる綴り方教室的なところに興味をもっている。とにかく人に読ませて、収益にしようとする、あさましい人〈自分はそういうライターであったが)が少ないのが、同人誌の良さである。自分はガラケーだけで、スマフォを持たない。

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2021年10月18日 (月)

失われた世界「文壇」のはじまり。

  現在の文化の主流は、コミックとなった。なんといっても視覚的な訴求には勝てない。菊池寛の「無名作家の日記」は、文学が文化の中心にあった時代と、文壇の存在を物語る話である。皮肉なことに、これが菊池寛の文壇人になる出世作になった。《参照:菊池寛の近代文学精神論とポストモダン(11)ミミズも無視」》作家に無名の人がいるわけがないので、いまでは違和感がる。当時は、同人誌は無名作家雑誌という感じだったのであろう。

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2021年10月15日 (金)

文芸同人誌「季刊遠近」第77号(横浜市)

【「バイバイ」山田美枝子】
 瑤子という母親のお骨を、オアフ島のワイキキで散骨する。撒いた骨が風で舞い戻ってくる。この冒頭のところに感心した。しかし、表現意欲の強さに対し、お話は焦点がやや甘いものになっている。母親の介護で下の世話をするところなども描くが、その大変さに、なぜ耐えられたのか。かなりきつい作業であることを感覚的に伝わるように描きながら、それでも耐える心の形が、推察できるように整理されていない。過去の出来事を追いかけ、何とか母親との関係を、浮き彫りにしようとする努力の連続である。いろいろ書くうちに、やがて涙が溢れて、感極まり、自分が母親の分身であり、その喪失感情と悲しみに「おかあさん、バイバイ」という言葉に、やっとたどり着く。小説になる糸口に立ちながら、小説家的な探求手法が今一つ不足を感じさせる。世間的な苦労話に受け止められそう。同人誌という場があるから書けたのかも。その割には文学的な成果を見せているところもある。
【「雨があがって」花島真樹子】
 大学で英語を学ぶなかで、文化祭での演劇に参加しているとも子。家庭は義母と父親と同居。うまくいっている。LGBTの彼氏もいて、若い女性の素人から専門家としての大人に向かう姿をえがく。水彩画的な一編。
【「駅舎にて」森なつみ】
 ローカル線の終着駅に行って見たい。体験的と想像力の産物で、鉄道マニア的なロマンの味わいがある。
【「風冴ゆる」藤田小太郎】
 先の見えた老人夫婦のある日の姿。普遍性がある。事例を知る手掛かりになる。
【「丘の上の住民」難波田節子】
 だいたい、事件が何か起きるわけでもないことあろうと、読み始めたが、文章の流れだけで、文学的な何かを訴求する時代ではないような気がした。
【「スパム」浅利勝照】
 好意を持っていた女性を破滅させた「スパム」という男を殺してしまう話。文章も構成も内容とアンマッチで、なんとも言いようがない。
【「母恋」小松原蘭】
 母親との関係を書きたいのか、何が問題なのかわからない。自分は書かずにいられない、といって書いているが、起きたことの事実がきちんと伝わるように書けていない。介護の話の下の世話は、多くの人が語っている。これが新しい小説になると思っているらしいが、同人誌の人って、文学についてどんな話をしているのか、興味が湧く。
【「欲に生きるには」逆井三三】
 若い引きこもり男の行動が独白体で語られる。引きこもりにもいろいろあるが、かなり行動が活発で、自意識に押しつぶされることもなく、仲間の女性を性欲の対象として、何とか口説き落とそうとして、理屈を並べるところが活き活きとして、面白い。彼女の反応ぶりも良い。このような作品が読めるのは、うれしいものである。小説が巧くなったのか、ギグシャクしたところがないのに感心した。
発行所=〒225-0005横浜市青葉区荏子田2-34-7、江間方。
紹介者=「詩人回廊」編集人・伊藤昭一。

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2021年10月 9日 (土)

全国同人雑誌協会の近況から

 同人誌「クレーン」の和田信一郎氏の投稿が、「文芸同人誌案内」掲示板にある。それによると、全国同人雑誌協会の参加者が50もあるそうである。和田氏は少ないという思いだそうだが、自分にはそんなに多いのか、という感じをうけた。自分の印象では、文芸同人誌の同人で、職業作家になりたいとする人は多くない。すでにほかの職業で人生を歩んできた人が多い様に見える。たまたま、文芸同志会の意志を知らないで、作品紹介をしてもらえるから、という理由で贈ってくれているようなので、文学性を考慮しない時事性の強い作品の多い雑誌を読んでいるのかもしれないし、協会に参加する同人誌とは種類が違うのかもしれない。同人誌のほとんどが、地域性が強く、合評会での読者が必ずいることに対する確信、書きたいことが書けることの良さがある。多くの読者には興味がないであろう普遍性のない作品でも、読んでもらえるということで、書かれたものに意外な発見があり、生活者の実態がわかるのが、長所である。そのかわり、世間的な俗生活に、差し障りがあったり、不便が生じるようなことは、書けない。そういう言うに言えない制約があるなかで、一番の目的が存続することのように見える。おそらく、どこかにそうした目的に貢献するために、東京に出てきて、漠然とした懇親を深めることに意義を認める同人誌の同人がいることが、発見である。

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2021年10月 8日 (金)

西日本文学展望「西日本新聞」9月30日/朝刊=茶園梨加氏

題「地域を描く」
冒頭、米本浩二さん『魂の邂逅(かいこう) 石牟礼道子と渡辺京二』(新潮社、2020年)に触れる。
都満州美さん「訪問診療」(「海峡派」152号、北九州市)、伊福満代さん「二歩の父」(「龍舌蘭」203号、宮崎市)
白石すみほさん「破倫」(「ふたり」26号、佐賀県唐津市)、鳥海美幸さん「森」(「龍舌蘭」203号)、高崎綏子さん「木語(もくご)」(海峡派」152号)
《「文芸同人誌案内・掲示板」ひわきさんまとめ》

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2021年10月 5日 (火)

文芸同人誌「星座盤」Vol.15(大阪府)

【「同舟」水無月うらら】
 マッサージ店に就職した女性の仕事ぶりを事細かく、丹念に描く。体験談のようで、ここまで細部にわたると、文学作品になる。面白いし、その筆力は大したものである。揉んでいる最中の客の凝った肉体が、一つの自然物のように迫ってくるし、深く分け入るようなところを感じさせる。風俗小説ではあるが、それを超えている。今は亡き伊藤桂一氏は、「物事を細かく書き抜くと面白く、文学的になる」と語っていたのを思い出す。締めの切れ味もよい。
【「焼き飯」清水園】
 客の入らない中華店のようであるが、語り手になる学生がはいってみると、婆さんが焼き飯を作ってくれる。それが、定番で2階では賭場を開いているのがわかる。この婆さんと、賭場の常連の男とのやり取りが、面白い。男が賭博で調子がよくなってから、破綻するまで描く。短いが中身が濃く、よく書けている。作者の力が出た作品になっている。これも締めの切れ味が良い。同人雑誌であることを忘れさせる。
【「透明感あふれる美老男」丸黄うりほ】】
 芸能界の下らない出来事がネットニュースに欠かせないらしい。この作品は、少女アイドルと、美しく老いた老人アイドルの存在する世界を、諧謔に富んだ表現で語る。随所で笑わせる。かなり長いし、構築した世界をしっかり描く表現力に感心する。同人誌にはもったいない。
【エッセイ「ある休日に」織部なな】
 京都に父親が一人で住んでいるという。大変だなと、思わず読んでしまう。しかし、話は母親との思い出。そんなものですな。
【「機密のラーメン」三上弥生】
 近未来の国の人間データー管理とラーメンマニアとの組み合わせで、なぜか禁止されたスープのラーメンを探して食すまでの話。出だしはいい。だが、国民が大豆アレルギーになったり、データー管理されたり、リアル感のある題材と近未来であることの必然性がわからないところがある。
【「踊り子のファンタジア」苅田鳴】
 スカミという踊り子が死んだそうだ。ガンジは、頭の上半分がパカッと開いて湯気が出る感じがしたーーとある。それは嬉しいのか、悲しいのか、怒りなのか、わからない。スカミのことが思い出に記されるが、どう受け取ればいのか、よくわからない。同人誌でなければ読めない難しい作品のようだ。ーー本誌は、どれも若者の生きる世界を活写するところがあり、なかなかの読み応えでである。例によって誤字脱字はご容赦。
発行所=〒566-0024大阪府摂津市正雀本町2-26-14.、清水方。
紹介者=「詩人回廊」編集人・伊藤昭一。

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2021年10月 2日 (土)

見ざる聞かざるの世界

 加齢のためなのか、それともワクチン接種の副作用なのか、物が見えずらくなり、耳は蓋がかぶさったようになってしまった。歳を取ると、要らない情報を遮断するようになっていくのかも。それでも、「星座盤」という同人誌は読んでいます。現代文学性が強いので、こんな同人誌もあるのだと感心した。ところで、小室さんと真子さまの情報には、何の根拠もなく、国民が反対している、と書くのだから驚く。国民の何%が反対してるのか、判る人がいるらしい。とにかく金をもらわなければ、皇族と国民という関係から解放されるらしい。米国に住んだら、その国に帰化したらどうだろう。

 

 

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2021年10月 1日 (金)

文芸同人誌「六伽士花史(むかしばなし)」創刊号(大阪府)

(木田長記念・歴史小説アンソロジー)
 歴史物なので、書き出しの部分を紹介する。
【「女蛇伝説」眞住居明代】
――冬の鈍い光を放つ太陽が山の端にまもなく沈もうとする夕刻であった。豊後の国の東南部、急崖で出入りの激しい海岸線に縁取られた半農半漁の村に一人の女の子が生まれた。日清、日露の大戦のはざま、明治三十三年のことである。母親はまだ十六歳で初産であつ.たので、痛い痛いと大騒ぎしたが、声の割には安産で、集まつた家族や近隣の者たちは、トリアゲ婆さんが差し出した元気に産声をあげる赤ん坊を見て、みな安堵したのであった。女の子は家の周りに密生している蕗に因んで「フキ」と名付けられ、それは大婆と同じ名であった。母親の名はタケ、父親は佐平と言った。――ーその後の、経緯の運びは、やや切れ味に欠けるが、大分県の民話をもとに、伝奇的な作品にまとまっている。
【「駿河の姫」朝倉昴】
――ぃじは館を走り出ると大きく伸びをした。/視線の先には、駿河の大海原が朝日の照り返しで煌めいている。富士の山が裾野まで白い雪を湛えていた。/「ふじ姫様、今日は一段と気持ちよい朝でございますね」/そうじゃの、富士の剛お山もきれいに見える」/「海もまことにきれいでございます」―――短編の割にはゆるいところがあるが、半面読みやすい。
【「鬼百合」内藤万博】
――蹄の音を響かせた騎馬が単騎、黄金色のススキを蹴散らして関ヶ原の野をひたすら走っていた。騎手の後ろには、荒縄でしばられた虜囚が荷鞍のように無造作につまれている。/騎馬の向かう先には、家臣たちの視線を背中の感じながら、床几に腰かけて焦りで足を揺する若武者の姿があった。――出だし好調。織田信長に対すると朝井長政家系の物語。
【「朽ち葉蝶」新井伊津】
 ――門に打ち付けられているのは蝶だ。翅を一枚づつ、四つの杭で穿たれた、肋のような模様を持った大きな蝶。それが何を意味するのか、わからぬ者は京にはいないであろう。――いいね。平家の諸盛りの時に、それに逆らうものがいたということらしい。
【「巣落ち雛」福田純二】
――陽光がまぶしい。/丘の上から見下ろすと、深い森に囲まれた湖がきらきらとかがやいている。―――武田家系の仁科盛信の滅びに関わる話のようだ。出だしは絵画的。
【「府内の嵐―大友二代盛衰記」木田長】
 豊後の歴史と大友氏の歴史を大友宗麟の生涯を軸に語る。
発行所=〒573-0087大阪府枚方市香里園山之手12-29、澤田方。
紹介者=「詩人回廊」北一郎。(視力と聴力の異常 あり治療中につき。誤字脱字あればご容赦)

 

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