文芸同人誌「たまゆら」121号(京都市)
【「新魔」地場輝彦】
新型コロナの変異株デルタ型などがでない時期に書いたものらしい。デパ地下とコンビニでコロナ感染者が出ないことを不思議に思うとしている。コンビニは、感染者が出ても、知らせないだけで、当人を解雇するか、休ませているだけであろう。おともと地下鉄の構内がデルタ株の飛沫が空気中に舞っているらしい。そこにつながっているデパ地下であれば、感染が起きるのは不思議ではない。記録としてのエッセイなので良いのではないか。
【「九月十五日、晴れ」金川沙和子】
大庭貴史という結婚歴のある独り者が、引っ越しをするところから、はじまる。それから、これまでの人生を振り返る。妻が書き残した日記に、夫と二人で阪神タイガースの優勝したことを幸せに思うことが記されていた、という話。――ああ、そうなんだという感想。
【「巨猪」佐々木国弘】
猪狩りをする宗夫という男の独白体。山の仲間の生活民と猪狩りの鉄砲と罠の使う様子がしっかりと描かれている。当初は、宗夫の視点の外の三人称的な描写だと思っていたので、なんで自分というのか、言い方に違和感をもったが、作者の工夫として納得した。他に、作者は「同人誌寸評(49)や、書評を書いている。どこかの媒体で評論もしているらしい。
ほかにも長篇の連載がいくつかある。読んだが、何かを語るほどの引っかかりは生まれなかった。【[平成ミゼットタイムズ」榊原隆介】などは、興味深かった。なかには、昔の長篇をもう一度推敲して、それを編集し直して連載しているのもあるようだ。現在を豊かにして生きる。そのために、同人誌を活用する例のようだ。ただ、この「中略」や「前略」は、小説の手法として面白いのではないだろうか。
発行所=612-8358京都市伏見区西尼崎町890-2、中川方。
紹介者=「詩人回廊」北一郎。
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