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2021年8月11日 (水)

文芸同人誌「詩と眞實」8月号2021(熊本市)

【「遠野幻想/老人と夢―第1回」(1~7)】戸川如風】
 語り手の「私」は、熊本から福岡空港に行き、花巻空港まで、それから遠野に向かう。空港に向かうバスのなかで、河童の紳士らしき山高帽に長髪の男と出遭う。空に舞う裸の天女など、見て、語り手の夢想幻想に満ちた旅が語られる。さらに花巻につけば、「銀河鉄道」や「風の又三郎」の作品世界に入り込む。柳田國男の世界の雰囲気もある。とにかく文学味あふれる幻想と現実のごっちゃになった光景が展開される。面白い工夫で、構想が確立されていて、楽しく読める。これぞ文学と感じ、一息で読み通せた。この文体なら、長くても大丈夫。さらに河童男が同行していたら、もっと面白いかも。
【「だるまや」植木英貴】
 親しかったおじさんの病状悪化をきいて「僕」はかけつける。そこからおじさんとの昔からの交流で、可愛がってもらった思い出が語られる。そして臨終に立ち会う。そのときに,おじさんと玉虫を見た。かつて、おじさんと玉虫を見た時のことを思わせる。丁寧にかけているが小説的な感じはない。体験談なのであろうか。
【「刷込み~緑色に輝く透明な空の彼方に~」右田洋一郎】
 中学生の時代からの出会いがあり、彼女に恋人にして結婚。共に人生をすごし、妻は55歳で持病をもつようになり、67歳で亡くなる。美しくも愛おしい記憶が残る。2頁の散文であるが、その思いの伝達は、「だるまや」のおじさんの話よりも強く心を揺さぶる。
 本誌には、どの作品にも、文章を順に読ませる速度感がある。じつは、次の同人誌はどれを紹介しようかと思って、何気なく手に取ったら、巻頭に面白い文学的なものがあったので、それに引き込まれて読んでしまった。たまたま、好みに合ったのかもしれないが。
発行所=〒862-0963熊本市南区出仲間4-14-1、今村方。
紹介者=「詩人回廊」編集人・伊藤昭一。

 

 

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コメント

詩と眞實8月号を取り上げて戴きありがとうございます。
編集同人の一人として、昭和23年からの月刊維持のため、
微力と尽くしていますが、同人の作品がこのように取り上げられることは、本人はもとより、本誌にとっても大変に有意義なことで、感謝に堪えません。

投稿: 右田洋一郎 | 2021年8月12日 (木) 13時18分

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