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2021年7月18日 (日)

いま、カミユの「ペスト」を読む「群系」が特集

 文芸評論誌「群系(掲示板」第46号で特集として、「いま、カミユの『ペスト』を読む。」の特集がある。現在進行中のコロナウィルスによるパンデミックのためか、よく売れているそうである。同人による座談会や、異なる視点からのカミユ論や、「ペスト」論が展開され、勉強になる。ただ、自分には手法論として「ペスト」と、メルビルの「白鯨」との構造の類似性に言及がなかったのが、ものたりない面でもある。
 メルビルの「白鯨」は、魔性の巨大鯨であり、船長のエイハブは、捕鯨中に片足を奪われ復讐の念に燃える男である。自分は、カミユファンの友人から、「ペスト」と「白鯨」の小説構造の類似性を教えられ、カミユの作品を読むようになった。まず、「白鯨」話は捕鯨船という海の閉鎖社会であり、運命共同体である。これが「ベスト」のオランという町の閉鎖性にに共通する。乗組員の多様性があるが、みな海の男の気性の良さと荒々しさがある。また、イシュメイルは、うつ病から治りかけの男で、彼の語りは、一人称を超え、飛躍する。また、彼は港の木賃宿で同宿した、黒人系少数民族らしい南太平洋出身の巨漢の銛打ち・クイークェグと出会い、同性愛に近い愛情で交流し、仲間の性格を浮き彫りにするが、エイハブ船長の執念と、「白鯨」の精神性については、いいとも悪いとも言わない。さらに、イシュメイルやエイハブなどの人名は旧約聖書から象徴的に引用されているように見える。
 登場人物で、エイハブ船長を諌める冷静な一等航海士の名は、スターバック、(コーヒ―ショプのオーナーはファンだったのかも)陽気な二等航海士のスタッブなど、.アンのタシテゴなど、多様な人種の乗組員にエイハブの狂気が伝染し、白鯨に報復を誓うのである。「ペスト」も語り手の医師が、曖昧であるので、1人称を超えた話になっている。また、カミユの実存的思想は、メルビルの短編「「バートルビー」を読まずして、かたることは、的をはずずように思う。

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