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2021年2月25日 (木)

合評会記=「詩と眞實」1月号(熊本市)

 「詩と眞實」は毎月発行され、前号の同人たちの詩・小説・随筆などの作品評が「合評会記」として、記録されている。ここでは同誌2月号に記されているもののうち、小説2編とエッセイについての部分を抜粋転載させてもらう。
【小説「赤髪の女神―第1章・解発囚」森創太郎】
 大学の美術部内で繰り広げられる青春群像が鮮やかである。読んでいるとさわやかな気持ちになる。自由奔放に若さを謳歌する登場人物たちは個性的で魅力的だ。ヒロインの沙知は、グラマラスで性格も自由奔放、強烈な個性で周囲の先輩たちを圧倒する。しかし、周囲も振り回されているかというと、そこは強面で強烈な性格の主人公に上手く制御されて調和を保っている。大学4年生の主人公は新入生の沙知をヌードモデルにして、絵画を描くが手を出すことはしない。二人の間は、喧嘩をしたり、一緒に絵を描いたりと、離れたり近づいたりして読者をやきもきさせる。第2章、第3章と続いていくらしいので続編が楽しみである。会話がうまい、あまりに読み易いところが気になった。もう少し引っ掛かりがあったほうが良い、言葉使いか時代背景と合わないものがあった、などの意見が出た。
【小説「かりんとう」階堂徹】
 主人公の母に対する愛情がジンワリと感じられた。家族の愛憎が素直に描かれ、家族だかこその悩みや嫌悪が詳しく描かれ.Lいるのが良かった。短くてもビリッと味のあ.る小説
である。出席者全員から高.評価であった意見は次のとおり。
 長男を特別視する習慣はお国柄が現れていて面白かった。題名が効いている。母親の哀しさが胸に迫る。終わりに希望を感じさせた。細かいところにミスがあった。主人公たちの暮らしている場所は、丘の上であるらしく、丘の下にした方がこの作品のイメージに合うと思われる。場所のイメージをもう少しはっきりと描写して欲しかった。
【随筆「種種の」林恭子】
 顕名の通り,木当にいろいろな考えが次から次へと展開されて読者がついて行けないような不思薦な感覚になる。(出席者六名、北原記)
 なお、本号(2月号)には、第49回「詩と眞實賞」の受賞作が発表されている。
韻文の部(詩)=該当作なし。散文の部(小説)=右田洋一郎「風のテラス」「ニューハーバー前編・後編」などの作品に対して。散文の部(小説)=階堂徹「チョッター」「唐揚げ」などの作品に対してーー。投票総数三十六票であった。
――そこに選評結果と受賞者の言葉が記されている。伝統の存在を示すもので、同人の文学精神のたゆまぬ情熱の継続に敬意を抱くしかない。自分は、高校生から社会人になる時に、詩作から当時の職業作家の主催する同人誌に参加し、師が亡くなり、その後継同人誌に入るなど、計3つの同人誌に参加したが、2誌は、いずれも現在は活動停止状態である。継続は力なりというが、それはたやすいことではない。
〒862-0963熊本市南区出仲間4-14――1、詩と真実社。

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