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2021年1月14日 (木)

文芸同人誌「アピ」第11号(茨城県)

【「ヤッテラレナイョー」原島留男】
 社会評論として非常に面白く、ウイットに富んで、優れて今の世相を反映しているので、作者と編集長の許諾を得てその一部を転載させていただいた。《参照:暮らしのノートITO評論「【「ヤッテラレナイョー」原島留男】
 歌手・山崎ていじの唄に「浜防風」というのがあるそうで、その中にこのフレーズがあるそうだ。面白い話だ。自分も、この部分を何かのコピーライトに使いたくなる話である。
 【小品三編―「お祝い」友修二】
 おばあちゃんが、77歳になったので、家族がお祝いをする。そのとき、おばあちゃんが、ダジャレを乱発して、皆を面白せる。気持ちほっこり話である。
【同-「いつか来た道」友修二】
 杉田薫は、自分の身近なことにしか興味を持たず、生活を送っている。テレビニュースで憲法論議をしていても、気にしない。会社の同僚が憲法と戦争の話をしても興味をっ持たない。パチンコにうつつを抜かす。するとある日、郵便が来る。徴兵制による兵役召集であった。――SF風であるが、政治に関心がなくとも、それの無関係ではいられない、という話。
【同「サクラソウ」友修二】
 定年退職し、妻と離婚している川島健二は、毎日が日曜日の生活になじめずにいる。家を整理していたら、サクラソウの模様のハンカチを見つける。そこから、まだ、会社員になりたての美枝子との交際がった思い出がよみがえる。彼女が政治に関心があって、日米安保反対の騒動の時代のことが語られる。あの時代があって、今があるのは、どういうことか、考えるヒントを提供するが、作者の平和に対する意志が直接に反映されているようではないのが、惜しい。
【「川の向こうに」西田信博】
 時代小説で、佐吉は大森の六郷川(多摩川の下流域)の川崎への渡し船の船頭をしている。過去にいわくがあり、それをそれとなく隠している。そこ土地のお初という年増と良い仲で、やがては夫婦になろうかという間柄である。そこで、起きた出来事を丹念に描く。色ごとの場面もたっぷり挟んで、読者を退屈させない工夫もある。六郷川周辺の時代考証もしっかりしていて、本格的な大衆小説的内容。だが、表現が純文学的で、丁寧な筋運びで、スピード感に欠ける。この地域の地道で忍耐強い努力をする人達の風土の反映であろう。この丁寧さを、文学的に深める方向にいけば、さらに完成度が高まったのかも知れない。
【「花野」さらみずえ】
 炭鉱労働者から、北海道の十勝に来て農業を営む康治が70を過ぎて、娘三人に後を継がせた話である。北海道農業の実態をみっちり調べて書きこんでいるその努力に感心した。
【「輝きの夏」宇高光夫】
 自らの人生を、三島由紀夫の作品の関わり合いついて掘り起こし、ついでに三島作品の粗筋を入れるなど、自伝に三島のデーターを絡み合わせた、ロマンてき作品。企画小説として面白い試みである。
【「私と歌謡曲」飛田俊介】
 以下のようなタイトルが記されている。「渡辺真知子コンサート」ひたちなか公演――「BS日本の歌」水戸公開録画」(私の独り言)―-思い出①過去の栄光よ永遠なれ――「男演歌祭り」水戸公演―①千昌夫、②大川栄策―思い出②堀江君と「柳瀬ブルース」――「夢コンサート」水戸公演――思い出③ミっちゃん、シゲちゃん、マサボ君――「ロックフェス」ひたちなかーー思い出④歌謡兄弟―展さんと努さんーー夢スター歌謡祭「春組対秋組 歌合戦」水戸公演――おわりにーーとなる。歌謡ファン心理との歌手への印象記として、同好の人にはお勧めの作品である。
 著者はよくぞ、応募し通ったものである。他愛もない世間話のつもりで読み始めたら、ポップスや演歌歌手へのファン意識や世相の評論になっている。こういう記録は貴重である。自分は、コロムビアの団塊の世代向けのオーディオ商品のコピーライトと、PR誌の編集をしていたので、クイズの景品にヒデとロザンナのレコードを出したら、応募はがきが山ほど来た。その人気に驚いた経験がある。仕事で、歌手にインタビューするとなぜか、サイン色紙をくれる。たくさんあったのだが、いつの間にかなくなっている。家族が誰かに上げたりしたのであろう。
【「ある小学性の満州からの帰還と戦後」取材・三浦克洋】
 つくば市並木で「並木そば」営んでいた平倉浩一氏の、波乱に満ちた人生を記したインタビュー記事である。平倉さんは、昭和13年に満州で生まれた。父親が国鉄職員であったので、満州鉄道に配属されたためという。敗戦後の、満州からの引き上げは、作詞家のなかにし礼が、国から棄民された、と語っていたが、一般人の苦節を記録にする有意義な試みである。自分は、かねてから街中ジャーナリズムを同人誌に掲載することを推奨してきたが、その実際を知って大いに支持するものである。写真や満州の地図も掲載されているが、まさに日本の帝国主義領域の大きさと、国内外にどれだけの犠牲者がいたのかを思い、感慨にふけるものがある。
発行所=〒309-1722茨城県笠間市平町1884-190、田中方、「文学を愛する会」。
紹介者=「詩人回廊」編集人・伊藤昭一。

 

 

 

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コメント

全国から届く文芸同人誌への批評御苦労様です。お陰様で茨城県文芸同人誌アピへの関心も広まり大変感謝申し上げます。

投稿: | 2021年1月14日 (木) 19時58分

昨年の11月20日頃、「ら・めえる」81号を大田区矢口3-28-729文芸同志会北一郎さん方に送りましたが、届いていますでしょうか?「ら・めえる」80号は昨年6月2日付の詩人回廊・北一郎さん署名の批評文が出ていましたが、81号のほうはどうなっているのかと気がかりになっております。最近、北一郎さんの登場がありませんが、どうなさっているのでしょうか。以上、お尋ねいたします。「ら・めえる」編集人・新名規明。

投稿: 新名規明 | 2021年1月14日 (木) 11時32分

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