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2020年12月22日 (火)

合評会記=「詩と眞實」12月号(熊本市)

 「詩と眞實」は毎月発行され、前号の同人たちの作品評が「合評会記」(出記)として記録されている。自分は、とてもその発行頻度に読むのが追いつかずにいる。そこで、この「合評会記」を読んだところ、実に優れた紹介になっており、わかりやすい。そこで、それを転載することで、紹介に代えたい。同誌の新年号に掲載されたものである。転記ミスがあるかも知らず、そこはご容赦願います。また、詩作品も評があるので、なにか方法を考えて、みたいものです。
【小説「顰め牡蠣」宮川行志】
 東京のある出版会社の祝賀会に出席した夜、友人に達れられていった「オイスターバー」との思い出が、作者の過去の深く関わっていた「牡蠣」と思い出が、緻密な文章次々に展開して行く物-語である。「.牡蠣」を生業としていた父親と閏係で、「.牡蠣」.の世界へ入っていくが、牡蠣養殖が下火になって、将来.への道を断念し、全く違う分野の学校へ進み、教師.の仕事に就く。さらに、に五十を過ぎて.の赴任先で、偶然に「顰め牡蠣」の群れに出会い、再び「牡蠣」取りにのめり込んでいく。考えてみれば妻との出会いも牡蠣との縁であった。壮礪への思いは今も衰えることなく,牡蠣の再生への祈りがしみじみと漂う。経験なしでは書かかれない文章で,文句なく、全体に素晴らしい作品で、物語りの展開もよく、好評の意見が多かった。牡蠣の養殖が衰退していく様を、もう少し突っ込んで書いて欲しかったという意見もあっ.た。
【小説「八月の光(第10話)」武村淳】
 八月.の光は原爆の投下された光であり,そして未来への希望の光か。主人公が朝.の出勤途中に立ち寄った公園で、数羽のカラスに出会うことから物語は始まる。そ.の中一.匹が、彼に自分は昔.八間だったと語る。さらにそのカラスは主人公の安波.のかっての親友、蔵川.で.あることを知る。そこでカラスの世界の白カラスに今黒カラスたちは困っているという話を聞き、安波もカラスに変身し彼らに力を"貸して活雁し白カラスとの争いを納める協定を結び、平和が戻る物語だ。
 人間と鳥、あるいは地上とカラスの住む世界が自由に行き来する世界が、違和感なく読めるのは、作者の戦争批判が通底にしっかり流れていからに違いない。
 作者の架空の物陥を作っていく力が感じられる作品だ。物語のファンタジー-にも違和感なく入って.行けたという意見が多かった。
【小説「三角発島原行フェリー(第11話))武村淳」
 三角から雲仙への行き帰りの問に、天上界の最高神耳毛多.師の愛人雪染に九羅塩王子を誕生させ、妻女伸多瑠美亜との数千年に及ぶ怨恨の物語りを織り込んだ、激しくも壮大な物語である。内容もよくわかるように描かれ、葉平の妻毬安がフェリーで帰省するところから物語は始まる。毬.女が猫の化身という設定は,この物語を読む側に近付けてくれ、身近に感じられることで違和感を払拭させてくれる。
 この小説も、架空の世界で繰り広げら.れる戦いも現実のものででもあるという作者の思いはここでも明らかだ。全体に面白く読んだという意見が多かった。天上界と地上界、登場人物、情景描写が素晴らし、作者の力量がうかがえる作品となっている。(出記)
発行所=〒862-0963熊本市南区出仲間4-14-1、詩と眞實社。
転記転載者=「詩人回廊」編集人・伊藤昭一。

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