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2020年12月 3日 (木)

文芸同人誌「澪」第16号(横浜)

 本号では、映画の世界で、監督論や伝説的なエピソードの多い黒澤明の代表作といえる「7人の侍」を軸にした評論を石渡均氏が、連載しはじめたので、話題性と資料、視点の斬新せいから、暮らしのノートITO《石渡均の黒澤明とつげ義春の芸術比較論=「澪」誌(横浜)》で、まず、紹介した。
【「ある歩哨」衛藤淳】
 自衛隊に長く勤務したベテラン曹長の独白体で、訓練で歩哨に立つ。その間の思案や、新人隊員とのやり取りが、軽妙な語り口で描かれる。実体験があるような感じがした。歩哨と穴掘りの行動を、自分は慣れ切って、気が入らないが、あとからやってきた新入隊員は、張り切って熱心に行う。本来の他国の敵兵から自国を守る自衛隊。敵がやってきて、武力を使わせてからでないと戦えない軍隊に、長く務めるということは、どういうことかという、曖昧さの意味を問うような、また、文学的な寓意を含ませたような、奇妙な味のある作品である。
【「私だけのYOKOHAMA どっこい生きている!第4回―街のお豆腐屋さん(旭区)青木栄一氏」石渡均―文・写真】
 大変良い企画で、地域内の街と住民の高齢化の進展にどう向き合っているか、正面から聞き取るインタビュー記事である。地域のリトルマガジンの性格を作り上げる企画としても意義深い。
【Twitter小説「ネコネコ星の話」片瀬平太】
 世の中、猫ブーム。そこに焦点をあて、「ネコネコ星」から来た猫に地球が乗っ取られているという設定で、既定の語数で話を語り、つなげていく趣向。SF的狙いは面白い。が、このような現実をなぞるような、内容であるなら、SFにする必要性が薄い感じがする。読者層の関心をかきたてる努力は、素晴らしいが、ツイッターの読者がどれほど、ついたかが知りたいところ。言いたいことが、多くあるのに言えてない感じ。
【「緊急報告―羽田低空飛行路の悪夢=コロナ災禍を受けて=」柏山隆基】
 羽田の航空路の変更に対する違和感を、哲学的思考で話題にし、今回はコロナ禍の話題に至る。話は、新型コロナの発生源とされる中国の世界制覇的な政策対応に触れ、そこからパンデミックを、ハイデガーの技術論から論じている。自分は、大学で資本論経済学の専攻
だったため、マルクスの関係論から、発想している。マルクスの社会発展論の初めに、原始共同体論がある。まず自然と人間の関係の始まりとして、農耕における不確定な関係を視野に捉えている。それは、資本主義で発展した人的契約的関係でなく、きまぐれな自然に人間は、技術をもって、予測できる関係に作り上げたと見る。パンデミックは、本質的にその自然である。この事態に、世界各国が無策のように見えるのは、人間関係の契約的関係から外れているためであろう。ワクチンは、自然の不都合な部分を調和させるための技術である。ハイデガーの存在論が外部との関係性をどう解釈しているか知りたいところでもある。そんな感想を持った。
【「林檎亭」鈴木容子】
 若い女性が、英二という20歳の若者(年下であろ)との関係を語りながら、現代の風俗を語る。オチらしい工夫がある。説明が面倒なのと、感覚が古いので、語れないが、文章が冗長なので、簡潔に流れをそのまま維持するところに、工夫の余地がありそう。
発行所=〒241-0831横浜市左近山157-30、左近山団地3-18-301、「澪」の会。
紹介者=「詩人回廊」編集人・伊藤昭一。

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