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2020年10月22日 (木)

月刊文芸誌「詩と眞實」856号・2020・10月号・(熊本市)

 本誌を読み終えたので、紹介を書こうかと思っていたら、もう11月号が届いていた。改めて、同人誌を月刊で発行することの、すごさを感じた。
【「ベーコンとイルカ」斎藤てる】
 主婦の私は、40代。小学2年の息子がいる。夫とは、いつの間にか心のなかで、「あいつ」と呼ぶようになっている。こうしたことがわかるまでに3頁は読まなければならない。物語るという心がけがなくても、小説とするのが、書く立場からの同人雑誌の良さであろう。読む方も、ただで読むのだから文句は言えない。離婚、乳がん、それが大変だと言いたいのか。随所に工夫をした形跡があるので、書いていて充実したであろうが、読む方は井戸端会議を聞くようで、どうも……。現代的な文学の中には入らない感じ。
【「飛べ、フラミンゴ」あびる諒】
 まさに現代の家族関係やそのよじれを、渦中の女性の立場から描く。義父からの性的な虐待があって、スナオという若い女性の生活態度を赤裸々に描く。男女の夜の世界の性液の臭いのする水商売である。なかなか若々しい筆致で、読ませる。文芸同人誌の多くは、社交の部分をもっているので、露骨な表現は避けられてしまうのだが、これはそうしたこともなく大胆な表現で目を見張らせる。品位に欠けるという面もあるが、それは作者の意図がどこにあるかに関連してくるので、何とも言えない。自分は、商業誌向けに、書いて長すぎると採用されなかった作品があった(40枚が普通)。ミステリー調のトリックに、性交場面を入れたものを、ネットの「小説家になろう」に掲載したが、公序規定に違反すると、削除された。
 なお、雑誌「季刊文科」82号に、今村有成発行人の寄稿がある。伝統のある月刊誌形式の継続が危ぶまれた経過が記されている。
 本誌11月号には、10月号の合評会での「作品評」記録がある。
 「ベーコンとイル力」にいては、乳癌に冒された40代女性の物語。夫婦愛、子供愛、親子愛をテーマに,海辺の景観を詩的に取り人れた素直で、哀しく.逞しい作品。書き込んで欲しい所が書き込めていないし、新しさもない。この程度の事で.悩まないでくれ、と思う。夫と妻との関係が具体的に書かれていないうえに、離婚時のことが書かれていないなど誤魔化して書いてある、など厳しい指摘もあった、また、主人八公は、育ち.もいいし.性格も純,感受性も豊かであ.ることが窺えるが、苦しいことなどを悪として自身から追い出そうとしているのではないか、との意見も出たという。
 「飛べ、フラミンゴ」については、ザラッとした乾いた文体で、新資本主義下の日本で.生きる若者達を、動物園で羽根を切られて飛翔できないフラ.ミンゴにダブらせて書かれた作品。両親が離婚、再婚、義父からの性的虐待などの影響を受けて育った高校一年の真夏スナ.オ。社会性があり、好評価であったが、表現が汚いという指摘があったという。
 ――なるほど、と納得した。
発行所=〒862-0963熊本市南区出仲間4-14-1、今村方。
紹介者=「詩人回廊」編集人・伊藤昭一。

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