文芸同人誌「岩漿」28号(伊東市)
じつは4連休の土曜日から、急に足腰が痛くなり、日曜日には発熱し、37度超え、月曜日には38度超えの体温。どこも休みなので、知人の医師に相談。普通のインフルエンザ用の薬をもらって休む。そのうちに、熱が下がったので、主治医の開業医にいつものアレルギー症の薬をもらいにいくと電話。それまでの発熱の経過を話したら、医院に来ないでくれ、あと一週間自宅生活をして、と薬を郵送してきた。そんなこんなで熱のある頭で読んだので、変なところがあるかも知れない。、
【「川面に霧が」椎葉乙虫】
ミステリー小説である。探偵役は栗本設計事務所に勤めて10年の「私」。それほど親しくないが、友人の三鶴朱音という友人が、福島県の只見川で遺体となって発見され、バンゲという地域の地元警察から身元確認に来てほしいという。彼女の実家には、音信ないためだという。そこから、警察では、アケミの自殺説と他殺説に分かれ、自殺説が有力視されていることがわかる。アケミは、恋人がいたが、それは上司の男で不倫であった。そこで、男と縁切りされ、失意で入水自殺したという理由が成り立つ。ところが、その一方で、彼女は、同じ会社の課長の社内不正をしってしまい、殺害された可能性があるらしい。話は、自殺か他殺かの疑惑をめぐって、曖昧で長い話がつづく。趣味の創作としては、まずまず面白い。とくに、会社員をしながら警察と親しくして探偵役をするお膳立てには、なるほど小説ならでのこと、と思った。
【「一人静抄」馬場駿】
山郷に独居する女性の40年前の出来事の想い出にひたる話。
【「奇老譚」しのぶ雄一】
人間、歳をとると、だんだん偏屈になる傾向にある。そのなかで、佐藤の義父である宇垣のという老人の自己中心主義を描く。これも一つの個性で、頑固になった男の老いぶりを描いて読ませる。
【「砂金」佐木二郎】
非常に凝った、怪奇小説で、横溝正史調の血族性と、江戸川乱歩調のエロスを色濃くしたようなゴシックスタイルの作品である。語彙の豊富さ、形容詞の巧みさなど職業作家的な文章力を発揮し、読み応えのある作品である。構成が単調な感じがしたが、本号では、これが一番面白かったし、その筆力と同人誌に発表する意欲に、敬意を表したい。
発行所=〒413-0235伊東市大室高原9-363、小山方、岩漿文学会編集部。
紹介者=「詩人回廊」編集人・伊藤昭一。
| 固定リンク
コメント