文芸同人誌「私人」第101号(東京)
4月発行とあるのに、なぜかいただいた同人誌の積ん読の中から見つかった。遅まきながら紹介しましょう。
【「古井由吉追悼」-傍観録40」尾高修也】
これで、思い出した。本作を読んで、納得して、紹介文を書くのを忘れていたのだ。筆者は古井と高校生時代からのお付き合いだったという。古井の50代ころの作品「背中ばかりが暮れ残る」の解説がある。私小説の部類の作品だそうだ。その解説をよく理解できるように、わかりやすく解説があるので、なるほどと納得する。古井由吉の特徴として50代後半の頃から、隠居に近い老人の立場を「老耄」として描く作風であるという。なるほどと、思った。自分は若い頃、古井という人は、ドイツ文学者でムジールの研究者というイメージしかもっていなかった。その当時、団塊の世代を対象としたオーディオメーカーのマーケティングを支援していて。機関誌記事を寄稿していた。そんな時に、モダンジャズの好きな担当者がいた。彼が、自分にモダンジャズの愛好者が芸術志向が強すぎるなかで、こんな文章で何かアピールできないか、と渡してくれたの芥川賞受賞作などを載せた短編集だった。非常にマニアックな、感覚的表現に優れたものであった。自分は、マーケティングのコピーライトは、手垢がついたありふれた表現をもって、新しさを生ますのが定石のようなもので、それは難しいといったことがある。純文学もモダンジャズも感覚的な芸術性を追求するがゆえに、大衆性を失って、マニアックな世界でしかない、と答えたように思う。
【「アンビルド」えひらかんじ】
建築設計の世界で、設計デザインはすぐれているが、構造が建設に費用がかかりすぎるので、実現しない設計のことらしい。構造デザインに優れた新人の設計がアンビルドに終わってしまういきさつを描く。建築専門分野の小説として、優れた作品のシリーズを形成している。
その他の作品は、よく書けたものがいくつかあるが、どう紹介していいかわからないものが多かった。
発行所=新宿・朝日カルカルチャーセンター。
紹介者=「詩人回廊」編集人・伊藤昭一。
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