« 文芸同人誌「私人」第101号(東京) | トップページ | 純文学は文化事業であって商業性は失われた »

2020年7月16日 (木)

文芸同人誌「海」第二期第24号(太宰府市)

【「ターミナル」高岡啓次郎】
 大手通信社に長年。勤務し、結婚し家を建て、順調な人生を送ってきた「俺」。それが突然、子会社への勤務を命じられる。希望にあふれて過程を持ったが、子供ができると、妻の立場は強くなり、俺の思うようにならない。そうした環境のなかで、ヒッチハイクをする青年ルイスに出会う。フランス人でゾンビのパフォーマンスをする芸人である。彼の悲恋を語ることで、情緒的な雰囲気の形成には成功している。小説の執筆には手慣れたものがあり、作者の書く楽しみぶりは理解できる。
【『平家物語』ノート(第1回)赤木健介】
 日本の古典であるが、冒頭部分の祇園精舎の鐘の音のが、仏教の経典からきていて、全面的な創作でないことを記す、このことで、平家物語が、人々のその時その時の語り部が、語り継いで変化してきた物語であることが、暗示されている。章によって表現力の変化があるので、その事情を分かり易く知ることが出来たら面白いのではないか。
【「隣接地」有森信二】
 父親の遺産の土地や家について、隣接地と独特の交渉をして、通路使用について、うまく調整してきたものが、現代になって、領地争いが深刻にる、相続者がそれに困惑する様子を描く。よくありそうなことなので、同様の体験者に興味深いかもしれない。しかし、語り手が利害を離れた立場であるので、事実経過話に終わっている。実は、じぶんにも似た体験があって、その相続した土地が、借金して銀行の担保になっていたのがあとからわかった。しかも相続人が5人もいた。銀行は長男の私が全部担保を引き受けるという約束だったという。各相続人が300万円払わないと土地担保は没収するという。各相続人は、遺産をもらえると思っていたら、300万円出すなんて、あり得ないと怒ったものだ。そのうえ土地の隣接人が8人もいて区画整理をするのに大変だった。人間欲が深い。そんな体験があるので、興味深く読んだ。自分の場合、借金と父親の出費してる信用金庫、大手銀行の貸しはがしの時代。結局あの手この手で、結局土地資産は失わず、兄弟姉妹に何百万かの資産分割ができた。その事情は彼らに話していないいので、棚からぼたもち相続としか思っていないし、その事情と苦労を小説にする気もない。
【「エゴイストたちの告白ー第2話ー貴腐薔薇」井本元義】
 とにかくロマン派の趣味で、早読みできない。じっくり書いているが、根本が日本人精神ではないので、バタ臭さがある。神の存在した時代の魂に触れる精神を、日本的なものと結びつけるモダンな試みかもしれないが、この辺で仕方がないかと思わせる。
【「キャピタゴンα」河村道行】
 身の回りの出来事を縷々と語る独白文体で、読みやすいが、それに慣れ過ぎて、内容の重さが均等になっていて、途中で退屈する。書きやすいいスタイルを開発するのは、素晴らしいが、それなりに文体に合わせた構成の工夫が必要なのではないか。
発行所=〒818-0012太宰府市観世音寺1-15-33(松本方)。
紹介者=「詩人回廊」編集人・伊藤昭一

 

 

|

« 文芸同人誌「私人」第101号(東京) | トップページ | 純文学は文化事業であって商業性は失われた »

コメント

海第二期第24号の5作品について、貴重なご意見をいただきました。このご意見は、今後の作品のあり方について、反省すべきは反省し、なんとか生かすべく頑張りたいと思います。真摯なご意見、誠にありがとうございました。今後とも、どうぞよろしくご指導くださるようお願い申し上げます。
有森信二

投稿: 有森信二 | 2020年7月16日 (木) 19時06分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 文芸同人誌「私人」第101号(東京) | トップページ | 純文学は文化事業であって商業性は失われた »