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2020年3月19日 (木)

文芸同人誌「私人」第100号(東京)

【「百号の年月」尾高修也」】
 朝日カルチャーセンターの尾高小説教室講師の100号に至るまでの経過と同人誌観が記されて居る。自分は、文芸同人誌の時代の変遷や動向に多少の知識があるだけで、全容を知らないので、大変に参考になった。まず、本誌は1990年にはじまり、4回発行してきて100号を迎えたという。「かつては小説教室に集まる人が多く、そのなかから同人雑誌を出したいという声が自然に生まれた。が、現在それは自然なことではなくなっている。」という。数ある小説教室のなkで、同人雑誌を出してるのは少ないらしい。その理由として、作家による作家教室でなく、元編集者が教える教室が増えたことと関係がるのかも知れないと、ある。元編集者系の講師になると、「考えがビジネスライクになり、教室は新人賞をとらせるための実践教室といったものになりがちなのだろう」ともある。なるほど、そうなのかと理解する。
 さらに、「小説を書くという二とが、いよきわめて孤独な行為になってしまっている.、社会の転変のなかで、書き手の孤立が進んでいる…」
ともある。
  また、「いわゆる小説教室の最初のものは、朝日カルチャーセンターにおける駒田信二氏の.『小説の作法と鑑賞』であった。1976年年1月の開講で、はじめは週一回の講座が.一カ月で終わるはずだったという.『書き方』は.3カ月教えれば十分。というのが学校側の考えだったのだろう.その後受講生が嘆願して、教室がつづくことになったのだそうだ。」とある。ーー自分はこの時代のことは何も知らないので驚く。
 その当時、「主婦たちが小説を書く」ということが.マスコミで面自半分にとりあげられた。.暇をもて余した家庭の主婦の遊びごと、という見方である、さらに、基本的に、小説の書き方は教えられるものか、という疑念があったのである。ーー駒田氏の教室で学んだ重兼芳子さんが「やまあいの煙」で芥川賞を得て.駒田氏に対する股誉褒疑の騒ぎが大きくなっていった。いまから見て、「主婦」ということばが強調されすぎているのに驚く。そのへんの事情はたしかに変わってきた。駒田氏開講の十数年後、私が「私人」の教窒を始めたころは、相変わら.ず婦人雑誌が取材にきたりしたが、すでに騒ぎは落着いていた。それでも、「私人】創刊号の創作欄は全貝女性の作品で占められている。それが三十甲後の現在と違うところである。ーーそうなのか、と納得。そこからいわゆる、小説家と作文家に、分かれて、同人誌に多くの作文家が存在することになったらしい。
【「『私人』100号に寄せて」鈴木真知子】
  小説教室の「私人」について、生徒としての学びを述べるなかで、雑誌「文学界」の同人誌評の1993年から2008年の間に、取り上げられた回数が記してある。評者は、大河内昭璽、勝又浩、松本徹、松本道介。そのなかで46名が取り上げられ、ベスト5が8名、下半期最優秀賞が1名という実績を持つとある。純文学としてであるためか、文人として活動する人が少ないのだなと、わかる。例えば、自分が所属して、今年141号で休刊した「砂」誌は、自分も入れて、「文学界」の同人誌評は何人かは不明。「群像」に転載1人、「週刊新潮」に転載1人、新潮新人賞受賞作家1人、「婦人公論賞」1人、「日本ミステリ大賞」作家1人、売り込みで商業誌作家1人という実績である。たた、それらの人とは音信不通のまま休刊となった。自分が「砂」に寄稿していたのは、印刷会社の社長が親友で、原稿不足で本が出せないというので、寄稿していた関係である。マーケティングライター生活をしながらでもあった。作文が多かったが、そのなかで、コピーライターでは書けない悪事を働く警官を事実に基づいて書いたら、警官がこんな悪いことをするはずがないと、掲載されなかった。今ではそんなことないであろうが、自分は大衆的感覚という点で、そういうことのバロメータとして、同人誌の人たちの感覚に興味を持った記憶がある。
発行所=東京・朝日カルチャーセンター。
紹介者=「詩人回廊」北一郎。

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コメント

「私人」100号に寄せて、で鈴木真知子氏が文芸誌「文學界」の同人誌評に言及しているのは、次のサイトをご覧になったからだと思います。
https://prizesworld.com/doujinshi/

ここでは1951年(S26年)~2008年(H20年)に「文學界」が同人誌評を掲載した全記録が要領よくまとめられています。
ご参考までに。

投稿: 小保方 俊 | 2020年3月20日 (金) 10時04分

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