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2020年3月 4日 (水)

文藝誌「浮橋」第4号(芦屋市)

 【「呪いの海」―承前】】

  連載の後半ということになる。東日本大震災から7年。被災して家族を失った古川伸子は、神戸に避難している。災害の様子を文章化した記録的な作風。後世のために残しておきたい作品でもある

【「早春の円通寺」島 雄】

   かなり禅的な宗教体験をもっていて著書もあるいう作者が、円通寺にいき、住職と禅問答のような会話をする。堅苦しそうで、ユーモアがあり、悟りにこだわることが、悟りから離れることだと思える。

【「箱の中」佐伯圭子】

 箱の中に住むと、人間のもつ幻想の世界を体験する。理屈をつけずに、ひとそれぞれの感受性にあった世界を展開する。読むと奇妙な体験感を得られる。

【「青さぎ」青木左知子】

 定年退職したあとの自適生活を送っている男が、知っていながら知らない風景の土地に行く。しかし、それは突然の病気で、意識を失い、幻想の風景であったらしい。意識を取り戻して、そのことを悟る。いかにもありそうな、意識の作用の不思議を感じさせる。その幻想の風景の描写は、自分も似たような風景を幾度も見るので、なかなか読みごたえがあった。

【「奇譚 竹取物語」春水】

 日本の古典伝説である「竹取物語」の意図はなんであるかの考察を描く。諸説が簡単に紹介されていて、面白い。

 【「激震」曹達】

 連載小説で、本篇だけで中編小説並みの長さである。今回は京都の不動産取引がどんなものであるか、日本のバブル経済の時期の京都という土地取引の様子が、描かれる。京都はかなり特殊な土地柄であるころがわかる。その割に、傍観者的な人物が平板で、なにが激震なのかは、まだわからない。

【「水を売る人」小坂忠弘】

 山縣さんという不動産業をする知人と「ぼく」の関係を描く。阪神淡路大地震の被害にあったはなしなどを絡ませて、交際関係を描く。これも、人物の描き方が浅く、意味の伝達が物足りないような気がする。

 そのほか、短いものや長編があって、一言触れたいものがあるが、読書速度能力が悪くなり、さらにパソコンの扱い方の不調により、このへんで終わらせたい。

発行所〒659ー0053芦屋市浜松町5-15-712、小坂方。

紹介者=「詩人回廊」編集人・伊藤昭一。

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