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2020年1月 3日 (金)

2019「文芸この1年」(東京新聞12月24日) 佐々木敦さん×江南亜美子さん対談(上)


 江南 今年を振り返り、翻訳小説がこれほど話題になった年は近年なかったと思う。特に東アジアの作家がメジャーな場で語られたのが大きな特徴。ブームになったチョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』が牽引(けんいん)し、韓国の現代文学が数多く邦訳された。SFでは中国の劉慈欣(りゅうじきん)『三体』もすごく売れた。

 佐々木 確かに欧米の小説はどこか異国の話という感じがあるのに対し、アジアの隣国の話は日本の問題にスライドできることが多い。

 江南 韓国の女性文学がこれだけ読まれたのは、欧米的なウーマンリブに比べて、日本の女性読者の「これは自分たちのことなんだ」というシンパシーが発動したから。家父長制という共通点がある。

 佐々木 #MeToo運動にリンクする形でフェミニズムが注目され、そこに日韓関係の問題がクロスした時、『キム・ジヨン』がコンパクトで読みやすい本として起爆剤になった。従来の「文学」は、その時代の社会と直接的にシンクロするよりも、個人の内面や自我を描くことが多かったが、その傾向が変わってきた。社会的・政治的な問題が「文学」の中にもいよいよ入ってきたという感じがある。

 江南 韓国の作家はセウォル号事故や経済をめぐる政府の失策な ども積極的に主題化する。その態度が輸入されたのかも。

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