« 文芸同人誌「風の道」第12号(東京) | トップページ | 小河原範夫氏が、全国同人雑誌会議(2019)を報告 »

2020年1月 6日 (月)

文芸同人誌「アピ」第10号(茨城県)

【「遥かな想い(後篇)」宇高光夫】
 登山趣味色の強い山岳ロマン小説。美里という女性の人生の歩みを山登りを軸に置いて、男女と山岳ロマンを合致させる。美里は、愛した男を失うが、新しい人生への道筋を示して終わる。作者の明確な設計が効果を上げているといえるであろう。参考になる手法でもある。
【「白い夏」西田信博】
 老いた父親がシベリア出兵させられた体験を詳しく語る。負傷し、敗戦になってロシアでの抑留生活の辛い思い出をリアルに描く。シベリアでの日本兵の過酷な体験は、他の同人誌でも小説の題材にされているので、それらを読んでいる自分には、大変参考になっている。自分は、こうした有意義な資料をいかして、現代のロシアを研究し世界情勢のなかで、ロシアの特性を考えることが必要と考える。ロシア人は組織人となると人が変わるのか。人的迫害の残虐性はプーチン大統領の手法においても際立っている。チェチェン人民の弾圧の残虐性もあり、モスクワで起きたアパートテロ事件は、それで政権を強化したプーチンの謀略説も出ている。目下の米国のイラン攻撃を受けて、ロシアはイランをどう支援するのか。(米国は10年に一度戦争しないと、やっていけない国である、と自分は指摘してきた)。考えさせる作品であった。プーチンもトランプもキムもアラビアの国王も立派な暗殺者たちである。そこへいくと安倍首相などは、可愛いものなのか。
【「岸辺の風景(前編)」灘洋子】
 ここでの岸辺というのは、人が死んだ後に、三途の川を渡るという伝説的イメージをもとに、その渡し番の話である。人の死後の世界を舞台にするまで、想像力を伸ばしてきたのは、大変面白い。
【「自費出版その後―北海道―」田中修】
 作者は、ペンネーム「友修二」で「相馬藩家臣大友氏823年の過去と現在」-キリシタン大名大友宗麟との繋がり、そして今を生きるー」(友修二・著)を自費出版した。自分も読ませてもらったが、大友家が、秀吉が計画した朝鮮出兵を命じられたが、当時の大名たちがいやいやながら、戦いに行ったことを推量させる資料もあり、特に大友家はよほど気乗りがしなかったのか、改易という処罰を受けているところなど、興味深い。その後、相馬に行き、子孫が相馬市で原発事故被害にあうという歴史までわかる。その先祖の地、北海道の大友家系の大友章生夫妻と共に、道内ゆかりの地を探訪する。
発行所=〒309-1722茨城県笠間市平町1884-190、田中方、「文学を愛する会」。
紹介者=「詩人回廊」編集人・伊藤昭一。

 

|

« 文芸同人誌「風の道」第12号(東京) | トップページ | 小河原範夫氏が、全国同人雑誌会議(2019)を報告 »

コメント

アピ10号紹介に感謝します。また、私の著者、相馬藩家臣...の紹介ありがとうございます。出版した関係で相馬郷土史家の方から新たな情報も寄せられました。

投稿: 田中修 | 2020年1月 6日 (月) 17時03分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 文芸同人誌「風の道」第12号(東京) | トップページ | 小河原範夫氏が、全国同人雑誌会議(2019)を報告 »