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2019年12月12日 (木)

総合文芸誌「ら・めえる」第79号(1)

 本号から書店やネット販売を拡大するため、雑誌コードを付け、長崎文献社のHPサイトの品そろえに加わっている。巻頭の評論【「逆立ちした公共事業『石木ダム』~憲法13条<幸福追求権の危機>~」城戸智恵弘】は、現在の国の治水政策の在り方を、地元地域にそって、その施策の影響を批判的に指摘している。「暮らしのノートITO」の《『石木ダム』を城戸智惠弘氏が評論「ら・めえる」79号》国のダム政策論に事例として一部紹介した。地域の問題には、解決のために原因をさかのぼると、県から国の方針にたどり着くものがある。その典型的な事例でもある。
【「朝鮮通信使の使行録に記述された壱岐・対馬」草場里美】
 朝鮮半島は豊臣秀吉に侵略攻撃を受けた。ところが徳川幕府になると、通信使がきていたという。1607年から1811年の第12次まであったという。姜弘重のその初期の記録から引用している。その中に、日本から、対馬藩が偽書を用いて、朝鮮との戦後処理を含んだ交流をはかっていた。対馬は朝鮮半島に属しているという意識と日本の国内事情が、分かるところが興味深い。このような関係のなかで対馬藩が朝鮮半島に誘いをかけ、それに応じた朝鮮側の様子からすると、感情的なものを押しのける相互に利益のある交易関係が続いたのであろう。豊臣時代に人的な略奪もあり、そこら日本に移住してしまった半島人が少なくなかったらしい。交流記録にも互いの感情的な内心の不満が見えるものもあり、また、虐殺した半島人の耳塚の記録などは、加害の記録がある。現在の日韓関係の感情的ないざこざの要素を、理解する手掛かりになる。
【「徴用工問題は存在しない」藤澤休】
 かつて日韓条約で日本の植民地化した時代の諸問題を、韓国側ですべて対応するという条件があったーーという日本政府の主張に対し、文大統領の指名した最高裁判所が、個人的な労働者の慰謝料は別として、現在の大企業の資産から慰謝料分を株式売却で埋め合わせるということにした。それまでの、日本に立場からの交渉のなかで、日本の出した支援や、その労働の実態への解釈から、韓国の姿勢が狡猾であるいう趣旨のものが主張されている。この問題には、政治問題を話題にしない傾向の他の同人誌でも、同様の主張がみられるので、よほど感情的に不満があることがわかる。客観的に言えば、日本と韓国は併合にあたって戦争をしていない。そのため、いまの韓国は、政府の大勢が変わったので、この条約は無効と姿勢であると判断できる。韓国は、さっさと事情が変わったとして、自国の法律に資産から没収すればよいのではないか。国際的にみて、それほど珍しい事例はないような気がする。大東亜戦争のロシアの裏切りの体験もある。国際的な取引には、リスクが伴うのは当然で、企業はそのリスクに対応するしかない。
  それが、そうならないのは、前記の「朝鮮半島通信使」にあるような、かなり朝鮮半島人の温血が続いた末に、感情的な類似性なども影響して、非論理的なやりとりが行われているのであろう。悲劇なのは、日韓関係のついて当事者に決定権がなく、米国が決めていることであろう。また、米国がかつての独裁国家として戦争したという主張に反するようなことはしないので、日本の味方をするわけがない。米国の慰安婦像も米国の戦争を正当化するから、設置を認めているのとしか思えない。世界の雰囲気は日本を含む過去の帝国主義的行動に手厳しい。戦争被害を国に弁償させるような活動「リドレス」といって、世界的な傾向だそうだ。これからも「反日商売」、「嫌韓商売」が両国にはびこるであろう。どれも、それで生活する人たちの宣伝合戦のように見える。距離を置いて、現代の時流として受け取るしかない。それはともかく、文大統領の韓国革命の南北統一の実現は遠くなったのではないか。
【「八十路を越えて(二)」田村直】
 参議院議員を勤めた人の回顧録。戦後文学青年であった作者は、45歳の時に海星学園の文学愛好家の先生、卒業生が集まって、海星ペンクラブを結成し「ら・めえる」が発行されたという。作者は、はじめて短編小説を書き発表した創刊のメンバーであった。橋本白杜編集長が10号まで担当し、その後継を作者が務めたという。そのなかで海星ペンクラブを「長崎ペンクラブ」にしたのだという。同人誌から地域のリトルマガジンになる過程が見えて面白い。
【「佐多稲子『樹影』文学碑建立の経過」宮川雅一】
 文字通り、長崎出身の作家・佐多稲子の長崎を舞台にした作品「樹影」の文学碑の建立の経緯を丁寧に記録している。建立には関係者の根回しや費用の調達など、詳細が記録されている。地域の文化事業方針に関連するが、参考になるであろう。それにしても、俳人で亡くなった金子兜太の碑が生前に、各地で80基も作られたと聞いているので、その時は、どんなだったのか、気になる。
【「『裏切られた自由』-ハーバート・フーバー大統領の『大事業』」長島達明】
 世界が帝国主義戦争をしている時に、日本が遅れて来た帝国主義を行っていたころからの、日米関係についてフーバー大統領の著書をもとに、そこにあった事実を指摘して老いる。たしかに、日本が石油の制裁を受けていた時に、日本からは鮎川義介が、米国商人から輸入する話を進めていたという話を聞いたことがある。それが突然の戦争で不可能になったという。開戦の謎である。また、自分が20代の頃、韓国の生活状態を写した写真集をみた記憶があり、さらに遊女の絵葉書集などもあって、その記憶からすると、とても今の韓流ドラマのようではなく、そのギャップに違和感がある。まだ創作に面白いのがあるので、次回に続ける。

紹介者=「詩人回廊」編集人・伊藤昭一。

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