新美南吉と石川淳の同時代性
「キツネの手袋」など童話作家として知られる新美南吉だが、内心では大人向けの小説家を目指していたようだ。たまたま、石川淳が「普賢」で芥川賞を受賞したときに、彼は日本文学の本流ではなく、傍流の作家だと思う、というようなことを日記に書いている。自分はそれで二人が同時代に作家であることを知った。石川淳は、坂口安吾などと交流があって、無頼派とされているが、「酒をのんだ時は、書かない」とっ語っていたし、だれかとの文学対談で相手が、Aという作家がBという作品を書いているがーーとか話を向けると。それを読んでいない石川は「知らん」ときっぱり言って、話に乗らない。思わず笑ってしまうまじめさがある。無頼なのは疑似私小説における作品の主人公の「わたし」であった。自分には、作風が傍流であるようには思えない。
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