文芸同人誌「駱駝の瘤」通信18号(福島県)
【「農を続けながら…フクシマにて‘19秋」五十嵐進】
東電・福島第一原発事故の現場である福島県からの情報発信である。事故より8年。世は、ラグビー・ワールドカップ、オリ・パラリンピックに多くの希望があるようにして過ごしている。しかし、ここでは平成28年に逢坂国会議員が国会で提出した「原子力緊急事態宣言に関する質問主意書に」について述べている。
自分が社会に出た時に、道具の扱いが下手で、他人の手に当たってしまった。謝ったが、その時に「怪我は自分持ちだからな」と鋭く言われたのを憶えている。政府や区がどう対応しようとも、当事者になることはできない。ここでは、ICRP(国際放射線防護委員会)の基準について述べている。この組織についての見解が国の基準作りに引き合いに出されるが、根本は核兵器、原発を普及を前提にした組織である。害があるから止めるべき、とすることはない。当事者目線での意見が述べられている。
【「福島の核災以後を追う(三)-2017年から2019年10月までを中心に」澤正弘】
ここで、説かれているなかで、トリチウムのことについて、追い書きすると、――原発が稼働すると、通常稼働でトリチウムが排出される。これは、人体に害がないからではなく、水に溶けてしまうので、除去ができないためである。世界各地の原発所在地では、癌患者が他地域の平均より多いことは、すでに知られている。また、もともと自然界に存在した物質とされるが、世界各国が原爆、水爆実験を開始後、ビキニ水爆実験などで、急激に増加したという説もある。また、親は長寿で子供はガン死するケースが増えたという都市伝説的な説もある。
【「これは人間の国か、フクシマの明日(11)―原発事故被災地は政府が恣意的に決めた範囲だ」秋沢陽吉】
まさにタイトル通りの主張がある。政府や国の公表事項に対する不信感が出ている。風評被害とされるものは、ただの被害であるということだ。
【「煙霧中人間話」秋沢陽吉】
オ―ム真理教の麻原の死刑から、歌人・鳥居の短歌、塚本邦雄の短歌、丸山健二、加藤周一などに関する情念にかかわる話題がある。「遊ぶ動物」としての人間性への哀しみを感じる。
【「棄民についてー野口遵をめぐる考察」鈴木二郎】
イタイイタイ病とされた水俣病を発生させたチッソの創業者の話であった。事業家としての苦労をなめて、大企業にした結果の公害事件の裏面を描いて、興味深いものがあった。
発行所=須賀川市東町116、「駱駝舎」。
紹介者=「詩人回廊」編集人・伊藤昭一。
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