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2019年8月21日 (水)

文芸誌「中部ぺん」第26号(名古屋市)

 カラーグラビア写真つきの「中部ペンクラブ」機関誌とみるべきであろう。地域作家の同人誌の結集力を示すもので、勢いがある。概要は《第32回中部ペンクラブ文学賞発表=中部ぺん第26号 》で解説した。ここでは、「北斗」転載の1作を紹介する。
【「うげ」棚橋鏡代】伊勢湾台風1959 年(昭和34年)の前年までの日本の家族制度のなかでの「きん」という娘の視点から見た、村社会的な共同体を形成していた時代の家族を描く。国鉄の操作場が近くにあり、無人踏切の事故では、線路工夫や自殺者の遺体が菰かぶっておいてある。焼き場のおんぼうの利一さんのこと、父親の栄一の傍若無人のふるまいも、時代のなかでは、普通のことである。とにかく、「きん」のみたことをそのままリアリズムで描き、「きん」の心情を除いて、栄一の死んだところで終わる。書き手の価値観が表現されることはない。これは、「仮想人物」を書いた徳田秋声の小説作法と並ぶところがある。ただ、書き記すことに徹する。混迷する現代文学に、投げ出されたひとつの小説の姿であろう。編集者の問題意識に感銘を受けた。
発行所=〒464-0067名古屋市千種区池下1-4-17、オクト王子ビル6F、「中部ペンクラブ」事務局。
紹介者=「詩人回廊」編集人・伊藤昭一。

 

 

 

 

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