« まほろば賞の推薦作品選考会について=外狩雅巳 | トップページ | 文芸同人誌「海」(第二期)第22号 »

2019年7月 6日 (土)

文芸時評・7月号・文学するのをやめる勇気 早稲田大学教授・石原千秋

 文学がこうだ。本が売れなくなったと言うが、人文書の売れ行きの落ち方より文芸書の売れ行きの落ち方の方がはるかに大きい。人文書はむしろしっかりした本が増えたようにさえ感じる。客層に合わせて書き方を変えている感じもする。文学はそうなっていない。もちろんファッションとはちがって、文学はパッと見て変わったことがわかるわけではないから、10年間も迷走しながら実験するわけにもいかない。それができるのはコムデギャルソンのような強いブランド力がある作家だけだ。もちろん村上春樹。村上春樹は『1Q84』から確実に作風を変えててきたセカイ系」という人もいるが、それは村上春樹が客層の変化に合わせて作風を変えた証拠でもある。村上春樹が村上春樹するのをやめてもやはり村上春樹なのは、初期からほとんど変わらない文体の一貫性にある。つまりこうだ。文学が生き残るためには文学するのをやめる勇気がいるということだ。

 【文芸時評・7月号】文学するのをやめる勇気 早稲田大学教授・石原千秋(産経2019・6・30)

|

« まほろば賞の推薦作品選考会について=外狩雅巳 | トップページ | 文芸同人誌「海」(第二期)第22号 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« まほろば賞の推薦作品選考会について=外狩雅巳 | トップページ | 文芸同人誌「海」(第二期)第22号 »