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2019年6月23日 (日)

文芸同人誌「奏」38号2019夏(静岡市)

【「評伝藤枝静男(第五回」勝呂奏】

 作家・藤枝静男の昭和44年からの作品「欣求浄土」「厭離穢土」などのからはじまり、その時期の気分や、新聞・雑誌の批評の内容を順次詳しく追ってゆく。読み始めたら、まるで作家の精神史と作品をめぐる物語を読むように、興味をかきたてられ、考え考え読み通してしまった。おそらく、自分のように自己主張をどのようにしたらよいかわからず、日常生活報告的小説を書くことに少しでも疑問をもった人がいたら、おすすめをしたい。藤枝が、いかに自己の日常を題材に、幾何数学の補助線を想定するように、私小説を拡張していたかを、知ることは有益であろう。自分は藤枝作品を12編しか読んだ記憶しかないが、それよりは多く読んでいるらしいことを知った。それはおそらく彼の作品が、彼の友人でもある埴谷雄高(その親しさの深さはこれで知った)読むことで、それに関連した形で読んでいたようだ。筑摩現代文学全集には、藤枝と埴谷が同時収録されている。ここで分かるのは、文壇という作家ギルド的世界のなかで、さらなる藤枝の作品に注目する作家と文芸評論家の強いつながりである。

 文壇的なつながりが、純文学の年配作家の間にあるにしても、こうした交流関係は珍しいのではないか。読者の批評もあるであろうが、専門家による理解度とその評価は、おそらく藤枝ならではのものだとわかる。またかれが、志賀直哉のわがままにも思える自己確信に対する畏敬と、藤枝の自己嫌悪癖には関連があることがわかる。それにしても、作者の意図、評論、評論掲載紙・誌を有機的に連携させて良く調べたものである。

【「女たちのモダニティ②佐川ちか『死の髯』『言葉』-世界を二重化する言葉」戸塚学】

  詩人・佐川ちかの詩とそのイメージについての評論。自分は良く知らない詩人なので、掲載情報として研究者向けに記録する。

【「小説の中の絵画(第十回)川端康成『美しさと哀しみと』(続)-肖像画の描き方」中村ともえ】

 川端の掲題の作品のなかでの、取りあげられた絵画や彫刻に関する分析である。これも対象の作品を読んでいないのだが、岸田劉生、ロダンなどの作品が登場している。その他【「堀辰雄旧蔵洋書の調査(15)プルースト⑨」戸塚学】がある。

4200881静岡市葵区北安東1912、勝呂方。

紹介者=「詩人回廊」編集者・伊藤昭一。

 

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