文芸同人誌「海馬」第42号(西宮市)
【「墓地」阿部トシ子】
妙子という女性が主人公、独身。母親が離婚しているbなかで育てられたらしい。彼女の兄が墓を建てるので、百万円のお金を出して欲しいと、」母親に言ってくる。そこで、母親がそれに応じる話。昔の家族制度の残っているところもある。
【「夜の扉」山際省】
彼女という女性のことから話が始まる。茜晴香という名であることは、しばらく読むと分かる。彼女うは水商売をしながら、病気の父親と同居している。そこに水商売の指名の客が付く。病院の院長である。なかで、その病院の院長の身の上話が入る。晴香は、仕事の合間にボクシングを始める。そのなかで父親が亡くなる。その葬式を無事済ます――人は好むと好まざるとに拘わらず、戻らなくてはならない場所があるのだ。――で、終わる。
【「隣人」山下定雄】
兄から電話がかっかってくるのだが、主人公にはその内容にこだわる気はなく、浮かんでくる想念をそのまま書き連ねて行く。人間は、どのような想念に捉われ、どのような展開を見せるかに挑む作風で、今後に興味が湧かないこともない。
【「森の蔭に」永田祐司】
森林組合で働く林業作業員の話。その職員のなかに女性がいる。鶏を殺めたり、縞蛇を殺したりするのが好きな変わった趣味がある。生き物に対する意見を述べるが、大雑把で感心できない。語り手の作業員の反論はない。そのほか林業作業員の生活の様子が詳しく描かれているが、どこまでリアルさがあるのかわからないところがある。
発行所=〒662-0031満池町6-17、「海馬文学会(神戸)」
紹介者=「詩人回廊」北一郎。
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