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2019年5月20日 (月)

新刊「感情天皇論」で「天皇制の断念」を主張 大塚英志氏

 天皇制を断念しよう-。批評家の大塚英志(えいじ)さん(60)は四月に刊行した『感情天皇論』(ちくま新書)で、そんな主張をした。「天皇制はわれわれが公共性をつくることを妨げている」。日本で民主主義を機能させるために、導き出した結論だという。

 「近代より前の庶民は村の中で人生を終えることができた。誰かとすれ違ったら、あの人は誰ってすぐに分かる」。そんな暮らしは明治以降に一変した。「村から東京にやってきたら、隣の人が何を考えているかも分からない。そういう状態から、社会はどうあるべきかという公共性をつくらなければいけなかった」

 社会を築くためには言葉を闘わせ、ともに暮らせる条件をさぐる必要がある。「それが『みんなが天皇を好きだから』でおしまいになった」。戦前・戦中には「天皇」という言葉によって、国民は不合理な政策も受け入れるようになる。

 新憲法のもとでも、公共性をつくる難しさは変わらない-と考える。憲法第一条は天皇の地位について「主権の存する日本国民の総意に基く」と定める。「その総意を示す手続きがないのに、天皇は公共性を表していることになっている」

 大塚さんは二〇〇〇年代に入る頃まで、天皇制を認める立場をとってきた。「天皇は権威として権力の暴走を抑止する機能があるかなと思っていた」。考えを変えたのは、イラク戦争が起きた〇三年のとき。フセイン政権が大量破壊兵器を保有しているかどうかあいまいなまま、日本政府はイラクへの自衛隊派遣を決めた。「一つの主権国家を滅ぼすことが、言葉による合理性ではなく、感情で是とされてしまった」。社会の右傾化が言われ始めた時期とも重なり、「これは公共性をつくれなかったからなんだなって」。

 『感情天皇論』は日本の民主主義の難点として天皇制とともに社会の「感情化」を挙げる。「気持ちと気持ちが通じればいみたいなコミュニケーションが広がった」。感情に共感しあうことは議論で合意することとは違う。共感できない「他者」を社会から排除することにつながるからだ。

 大塚さんは「感情化」が天皇制を巻き込み、天皇の「象徴としての務め」のほとんどが国民に対する感情労働になっていると指摘する。「前の天皇の夫婦は最後まで立ったまま列車の中で手を振っていたけれど、あれがどれくらい人としてストレスがたまるか」参照《東京新聞=「感情」で社会築けぬ 新刊で「天皇制の断念」を主張 大塚英志さん(批評家)

 

新刊で「天皇制の断念」を主張 大塚英志さん

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