« スマホに対応するためとか、システム変更したらしい。 | トップページ | コメントありがとうございます。 »

2019年3月28日 (木)

文芸同人誌「駱駝の瘤 通信」第17号(福島県)

福島の同人誌であるので、原発事故に関する評論が多い。これは≪文芸と思想≫で、転載させてもらっている。

【「煙霧中人閒話」秋沢陽吉】

 山本義隆という思想家の話から始まる。自分は知らないので、参考になった。丸山真男批判についても、学生時代に読んだだけで、無批判に読んでいた記憶がある。そうなのか、とも思う。メインは、加藤周一の「羊の歌」であるようだ。その前に、丸山健二の小説作法に共感したと思われる言及がある。自分は、丸山が芥川賞を受賞した時から、ずっと読んできた。彼が作家になる前に経験した世間での体験がまったく似ているというより、同体験をしながら、孤独のなかにいた。自分は職業作家生活をほとんどしていなかったので、彼の小説にも距離を置くようになった。分厚い本はもっぱら図書館で読んでいる。余計なことを書いたが、ここでは加藤周一「羊の歌」の解説が素晴らしい。その本を読みたくさせる魅力がある。

【「『むらぎも』論(五)-合同印刷争議と労働者(1)」石井雄一】

 中野重治の私小説的作品「むらぎも」に関する作者中野の立場を、時代背景とその作家的な体質について、細かく論じている。労働者としての主張と社会の文学的表現欲のせめぎ合いを解説して、その苦悩を解説する。いまどき貴重な資料になるであろうし、作者の問題意識が明確に出ていて興味深い。
      ☆

 中野重治については、私の手元にある資料をここに示しみる。

Img_20190326_0001_1_1

中野重治は明治35年、福井県出身。金沢の四高を経て、大正13年、東京帝大独文に入学。マルキシズムの闘士として頭角を現す。一方、同人誌「驢馬」により、詩人として出発。「夜明け前のさようなら」「東京帝国大学生」などで、質実なもの、たくましいものへの愛、軽佻なもの、思い上がったものへの拒否を歌った。後年の「歌のわかれ」「むらぎも」はその小説化である。度重なる検束、転向、執筆禁止などの体験を経、戦後は共産党の参議院議員として活躍したこともある。しかし、農村的人情に根ざす彼の体質が党の理論と合わぬところがあり、除名処分を受けた。(成蹊大文学部・羽鳥徹哉教授=平成8年4月・東京都近代文学博物館発行「東京ゆかりの文学者たちー昭和Ⅰ」より)
      ☆

【「霰たばしるー書簡集から読む長塚節―2-」村上幸子】

 長塚節といえば長編「土」である。私は中学生の頃、夏休みになると、筑波の高須賀にある母親の実家に長滞在した。まず、上野から取手、水海道に着き、下妻か、三妻で降り、暑い日照りのなかを、小貝川の有料橋を通って、行ったのを憶えている。どうして、そのルートなのかは、今はわからない。伯父の書棚には、夏目漱石や長塚節の本もあった。冬休みにも行ったが、そのときの牛久沼へ続く道の風物をみて、豊かな土地なかで、なぜあのような長塚節の小説が生まれたのか、想いを回らした記憶がある。――これを読むと因習から離れて充実した実生活を送っていたことがわかる。

 発行所=須賀川市東町116.「駱駝舎」

 紹介者=「詩人回廊」発行人・伊藤昭一。

 

 

 

|

« スマホに対応するためとか、システム変更したらしい。 | トップページ | コメントありがとうございます。 »

コメント

山本義隆は東大全共闘の議長をつとめた人物です。長らく沈黙を保っていましたが、3.11に目覚めたかのように原発批判の本を出しましたね。思想家と言うよりは科学者ではないですか??

投稿: 荻野央 | 2019年3月29日 (金) 08時50分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« スマホに対応するためとか、システム変更したらしい。 | トップページ | コメントありがとうございます。 »