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2019年2月17日 (日)

「イングルヌック」第4号(大阪市)

【「積読地獄 江戸川乱歩」新城理】
 江戸川乱歩といえば、少年読み物の少年探偵団と怪人二十面相・四十面相、明智小五郎と小林少年。大人向けでは「人間椅子」「屋根裏の散歩者」などが有名で、自分も読んだ覚えがある。ここでは、その他にも人によっては知られざる作品があるようで、その薀蓄を読むのは面白い。
【「五百万円」猿川西瓜】
 五百万円という金を内蔵している黒い粉末の塊の物体か生き物がいて、主人公は、札束を出すたびに出す黒い汚れを掃除して、何年も過ごしている。なにやら、その物体が五百万円を使い切ると消えるらしい。お金と人間との関係について、その不毛さを描いているようだが、それをめぐる人間関係に筆が及んでいないのが、物足りない。何か、カフカの「父の心配」という作品に虫とも動物ともつかない奇妙な生き物「オドラデク」が登場しているが、そのようなものなのかも知れない。
【「夕陽だったらよかったのに」猿川西瓜】
 自殺を自由に受け入れてくれる施設があって、そこには「生きることも死ぬこともできなくする」病の女などが入っている。これは現代の引きこもり状態のことで、何の不思議もない世界であるが、それを不思議風に描くとこうなるのか、と思わせる。
【「箱の中、箱の外」新城理】
 コーヒーショップで働くエレーナは、ある日、店の前の広場に、ガラスの箱が置いてあるのを見つける。よくわからないが、この世の中の見える部分と、見えない部分の混在する事態を表現したのか。
【「アングリアの影」新城理】
 この小説によると、英国文学の古典的名作「嵐が丘」のエミリー・ブロンテ、姉で「ジェン・エア」のシャーロット・ブロンテは有名だが、そのほか妹にパトリック・ブロンテ、長男にブランウェル・ブロンテがいたそうで、それぞれ文学的才能に恵まれていたら石井が、結核で若死しているらしい。ゴシック・ロマンの時代の牧師の家庭を、ブランウェルの視点で描く。かなりの長さの中編で力作であろう。自分には、時代感覚が現代風になっているのを感じるが、それも世代のちがいとしか、言いようがない。前半部がやや浮いていて、退屈であるが、後半になると人物の存在感が出てくる。
発行所=大阪市中央区粉川町2-7-711、猿川方。
紹介者=「詩人回廊」北一郎。

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