「社協を問う」(小野友貴枝)の読みどころ(1)
本書は、公益社団法人「日本看護協会」の常任理事をしていた英田真希(はなだまき)が、地域の「社会福祉法人「社会福祉協議会」(通称「社協」)の会長に任じられ、その改革に力を尽くした記録である。タイトルの「社協を問う」はそこから来ている。≪参照:地域住民と共に「社協を問う」刊行の意義≫
地味な存在ではあるが、原則として、民間の立場から社会福祉活動をしているのが、「社会福祉協議会」である。最近は、高齢者社会になって、介護されるものと、する立場の人たちが増えたので、何らかの形で地元の「社協」を知る人も少なくないであろう。
もとは戦後米国GHQによって発案され、住民による住民のため福祉活動の「社協」が建前だが、実態は自治体の事情に合わせて、その内情は様々である。
本書は、はからずもそうした各地の比較対象となるような、有益な具体的事例が、語られている。この小説化した舞台は、大山市のケースになっている。
本書でもまた、ーー市民からは、「社協」はなにをしているのか分からない」とよく言われるとているーーと指摘している。そのたびに「あんないー市社居」ガイドブックを見せるが、「要は市役所の下請け?」と言い返されるというのだ。昔は、低所得者に救援物資を配った時代ならば具体的で分かりやすかったが、今は独り暮らし高齢者支援や、福祉相談、福祉教育、ボランティアの養成などが重要で、なかなか理解されにくいという。
これでわかるように、市役所の支援の予算が資金の大勢を占めている公務員的なのだ。市長の女性の活躍の方針の具体化に、彼女に白羽の矢が立ったのだ。
英田は、看護師の世界で地道に努力してきた経歴により、外からの抜擢であったが、組織内では「会長、ナースあがりなんだって?」といわれたそうである。そこには、ナース(保健師助産師看護師)という職業に対する皮肉や侮蔑のニュアンスがあるのだという。
大山市の「社協」はもとは市の運営であったものを、独立組織にしたのだという。非営利組織であるから、モチベーションが弱い。そこを、地域住民のためにという意識に、緊張感とやりがいをもって働けるようにするか、その改革の具体例が描かれている。
ここに描かれた幾つかの事例は、ビジネス人にも参考になる、気付いたところをピックアップしていこう。(つづく)(北 一郎)
| 固定リンク
コメント