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2019年2月28日 (木)

赤井都さん!最近、どう?

■最近、どう?
  一日が短いです、あいかわらず。時間はゆったりと流れているし、いろいろとあれもこれもした、というたっぷり感はあるのですが、一日は短い。生物ってなんで、食べること寝ることをしながらも、寿命があるんだろう? そうまでして生きるシステムなんだ。もしも私が石ならば……。けれど、石であっては得られない楽しみを知るために命があるのだろう。
  物は、生きている人の世界で必要。芸術も、命が求めること。そんなことを考える日々です。
 蔵書票と函のセミオーダーを始めました。本の形をした函に入った活版印刷蔵書票。お名前入りブック型の小函。大きな本型のボックス。
 セミオーダーをお請けいたします。本の形をした函が、生活の中にあると良いよねと思っています。蔵書票は、活版で刷るので、また良い味わい。絵柄が案外、本向きでいろいろ使いたいと思っています。《赤井都の豆本

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2019年2月27日 (水)

【第三回文学フリマ前橋】配置図 & Webカタログ公開!

■【第三回文学フリマ前橋】配置図 & Webカタログ公開!
■【文学フリマ広島】第二回は2020/2/23(日)に開催!
■文化放送「豊永・小松・三上の真夜中のラジオ文芸部」に文学フリマ事務局代表が出演します(3月16日深夜)
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第三回文学フリマ前橋】配置図 & Webカタログ公開!『文学フリマWebカタログ』に2019年3月24日(日)開催。【第三回文学フリマ前橋】の出店者情報を公開いたしました! 配置図も公開されています。

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2019年2月26日 (火)

時事通信が官房長官と東京新聞の応酬記事を配信

 新聞報道がどのようになされるかの実情がここにある。「菅官房長官「あなたに答える必要ない」=新聞記者の質問に」。
 その関係を記したのが、《官邸記者会見!東京新聞の「質問制限に申入れ」と課題》である。
 これは、現在の日本の状況が何か変であることの予感であある。

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2019年2月25日 (月)

文芸同人誌「文芸中部」110号(東海市)

【「インディアン・サマー」西澤しのぶ】
 シカゴに住む日本人家庭の9歳の子供である小谷勇也の小学校通学の様子を描く。そのなかで、シカゴの貧しいらしい家庭の子供のジョシュと仲良しになる。読みながらシカゴの人々と土地柄が面白く描かれていて、他国の非日常性なところと、その世界の情報を得るという面白さを感じた。
【「黒いカモメ」朝岡明美】
 西条大地と云う若者が昭和10年生まれの、すでに亡くなった祖父の出身地を訪ね、どんな生活をしていたかを住民にきいて歩く話。そのあと、祖父との晩年の交流ぶりが描かれる。毎回、文章や話の作り方に巧みさを感じさせ、読みやすい。ただ、今回は、孫が見知らぬ祖父の出身地を訪ねることから、書き起こされている。それが、前半での人物の存在感が薄くかんじさせる。構成として、後半の頑固らしさのある祖父の姿を描いて存在感がだせているので、これを先にして時間の順列の通りにした方がよかったのではないか、と思う。
 読んでいて、なんとなく祖父の過去を追求する大地の心の空虚さを匂わすものを感じるものがあるので、その面を書き込むことで、文学的な厚みが増すのではないか。
【「影法師 火を焚く(第十一回)」佐久間和宏】
 連続性はわからないが、今回は沢一乗という人物と、文芸作品の小評論的作品。ブルトンの「ナジャ」は、自分も読んでいる。丸山真男も。そして宮沢賢治の「無方の空」文言は好きでよく使うが、最近は、若い人たちに「無方」という文字は、誤記ではないか、といわれることが増えた。時代である。こういうスタイルも、現在の文学の形式であろう。
【「『東海文学』のことどもから」三田村博史】
 現在の「文芸中部」の前身的な同人誌「東海文学」に作者が参加した頃の活躍した作家たちの当時の消息がわかる。「東海文学」の創始者で、作品が直木賞候補作になった江夏(美子?)の場合や同候補になった井上武彦などの活躍ぶりも記されている。井上武彦の「死の武器」に対する三島由紀夫の賛辞の手紙は「手紙歳時記」で読むことができるそうである。《参照:文芸同人誌2007年「文芸中部」74号の直木賞候補・井上武彦
 また、作者自身も、さまざまな賞を受賞しているので、その当事者のみが知る経緯が面白い。黒田夏子が読売の公募で受賞している話も興味深い。自分が「文芸中部」を読む機会を得たのは2006年頃であった。井上武彦がクリスチャンの立場から死を迎える心理を描いていて、宗教色の強いものになっていたと記憶する。
【「怒る女」春川千鶴】
 マイナー的な映画監督の青地と、付き合いの長い女優アサコとの交流を描く。青地は、がんになって余命いくばくもない。短い作品だが、切れ味のよい良い文章が、作品を光らせている。
【「探しにいく」堀井清】
 高齢の父親を持つ息子の話で。嫁が突然、失踪してしまう。どうも浮気のようなことをして、帰りづらくなった様子でる。これまでは、高齢者の視点で書かれたものが多かったが、今回はその息子の視点で描く。ただ、安定した家庭なかの、波紋ともいうべきエピソードを描く。平和そうに見える世の中にも多くの混迷を隠していることを示す。
発行所=愛知県東海市加木屋泡池11-318、三田村方。
紹介者「詩人回廊」北一郎。

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2019年2月24日 (日)

人口減少がどのような社会を作るのかの情報は?

 日本の最大のsy会問題は、人口減少のなかで、高齢者が働き、若者が引きも持っているということと、財政赤地で、もし利子が少しでも上がれば、財政破綻するという現象である。英国のEU離脱の混乱も、そのことに対する情報がなかったことに原因があるのではまいか。こんなことを言ってる場合でないかも知れない。。《官邸記者会見!東京新聞の「質問制限に申入れ」と課題 》

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2019年2月22日 (金)

著作権法改正。コミケはどうなる?

海賊版サイト対策の強化で、政府が今国会提出を予定する著作権法改正案の全容が22日、判明した。全ての著作物を対象として、著作権者に無断で掲載されたと知りつつダウンロードする行為を違法とし、悪質なケースに刑事罰を科すのが柱。近く閣議決定し、早期成立と来年1月1日の施行を目指す。
 改正案は、無断掲載された漫画や写真といった著作物の海賊版を意図的、積極的なダウンロードを新たに規制対象とする。違法な掲載と気付かなかった場合や視聴、閲覧だけならば対象外になることを明確化し、インターネット利用者の保護に一定の配慮。(共同2月2日)
《参照:二次創作と18禁的文化のコミケ92夏と東京五輪

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2019年2月21日 (木)

同人誌時評「図書新聞」(2月16日)評者=越田秀男氏

 (一部抜粋) 『山よ動け女よ死ぬな千里馬よ走れ』(笙野頼子/「民主文学」1月号)――編集者のインタビュー企画、「文学は激変する社会状況に対し何が出来るのか」に対し、爆竹弾的文章にして返した。ブチギレた? いや理性的・理知的正論――「文学であろうがなかろうが人間は出来ることしかしない………出来ないことは出来ない」「文学はてめえらの兵隊じゃねえよ」「本当の文学は捕獲されにくい」「ジャーナリズムがもうぴったり蓋をされている時代でも……生々しい「嘘」……「大嘘」をかますから」。
 『美雨』(河合泰子/「夢類」26号)――「あたしたちくらいの年頃になると、ある日突然、死が腕を伸ばしてくる」、でも寄ってくれるのだから「幸せ」。そんな時、身元不明の娘が闖入、居着いてしまう。娘は寡黙だが、居てくれるだけで幸せ。やがて親友の死の知らせで狼狽える。娘は野良猫だった。
 『棕櫚の木のそばで』(谷本好美/「風土」18号)――四万十川を臨む限界集落、歯抜けの家々、ガラケーが役立つ。超高齢村人たちの姿を土地の言葉で明るくユーモラスに描く。
  『ヤマガラの里』(佐々木信子/「九州文學」7期44号)――病者の心象風景、ムンクの叫び声?――重い鬱病の主人公は叔母の家に転地療養するものの、叔母はじめ医師、カウンセラーとも意思疎通には厚い氷壁が。
 『山里に暮らして』(松葉瀬昭/「槇」41号)――第二の人生は小説書きと自給自足生活。となれば非加工の自然が押し寄せてくる。とりわけ餌を求めて田畑を荒らす動物たち。彼らの高度な知的レベルに驚く。この有り様を捉える作者の観察眼にも驚く。
  『終戦』(三咲光郎/「季刊文科」76号)――永井荷風、谷崎潤一郎、横溝正史の、終戦までの数日の姿と、玉音放送の受け止め方を描写する。永井は、死に追われる恐怖が去った後の喪失感と得体の知れない不安。横溝は昨夜見た幻影――見知らぬ子らの笑い声、池に沈む子の死体、池のさざ波――を反芻する。谷崎も幻影に現れた霊の群行に想いを巡らせ、「逃げ出したのか。祖霊や諸々の霊魂がこの国を沈む船のように見捨てて去っていくところを、自分は見たのではないか。」
  『童謡のセンチメント』(永野悟/「群系」41号)――童謡百年特集、赤い鳥創刊から百年。吉本隆明は「ナショナリズム」(現代日本思想体系)の解説で童謡の歌詞から大衆のナショナルな感性の変遷を抽出した。そのセンチメントを賞味。例えば『浜千鳥』は波の間に間に子鳥が親鳥を探す可愛らしい風景?――「波の国から生まれでる」「月夜の国へ消えてゆく」は明らかに、生命の生死を暗示している。永野は「“死”ということばは知らなくてもよい。童謡の世界では、かなたに、消えていくということでいいのだ」と子の心に寄り添う。
  『大手拓次の言語観と蛇の表象―『悪の華』を通じて―』(畠山達/「流域」83号)――磯田光一は最後の著作『萩原朔太郎』の中で、『悲しい月夜』を解釈するに当たって、“犬”のイメージの変遷を万葉期から解き明かした。
  『詩歴』(池戸豊次/「じゅん文学」98号)――随所に“蛇”のイメージを織り込み、まさにエロスとタナトスの世界。幼児から少年、青年へと成長する階梯ごとに、幼なじみ、病弱な従妹、年上の女、恋人を配し、そして恋人の死。姉に身の哀れを告げると「これではだめよ」「何が?」「カーテンが煙草で汚れているし、布団が湿っている」――空気入れ替え掃除洗濯開始! (「風の森」同人)
▼民主文学 〒一七〇―〇〇〇五東京都豊島区南大塚二―二九―九サンレックス二〇二 日本民主主義文学会/▼夢類 〒二一五―〇〇〇五神奈川県川崎市麻生区千代ケ丘七―八―一七 河合泰子/▼風土 〒七八三―〇〇四四高知県南国市岡豊町八幡七三六―一 杉本雅史 /▼九州文學 〒八〇九―〇〇二八福岡県中間市弥生一―一〇―二五 波佐間義之 /▼槇 〒二九〇―〇五一二千葉県市原市鶴舞七七七 岸本静枝
▼季刊文科 〒三九二―〇〇一二長野県諏訪市四賀二二九―一 鳥影社 /▼群系 〒一三六―〇〇七二東京都江東区大島七―二八―一―一三三六 永野悟 /▼流域 〒六〇六―八三一七京都府京都市左京区吉田本町二九 静山社 /▼じゅん文学 〒四六三―〇〇〇三愛知県名古屋市守山区下志段味字西の原八九七 戸田鎮子
《参照:文学に何が出来る?人間は出来ることしかしない!(「民主文学」)童謡百年特集、歌詞のセンチメントを賞味(「群系」)

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2019年2月20日 (水)

受贈する文芸同人誌に連絡先の変更を知らせないわけ

 文芸同志会の連絡所はよく変更されます。ですからヘッドの連絡所表示については、確認して欲しいと思います。先日も、何年か前に退去した「響ルーム」宛に郵便物が来ていて、同居企業に迷惑をかけていることがわかりました。もともと文芸同志会は、事業を行っていた主宰者の趣味的なもので、主催者の事業の拠点が変われば付属組織としてそれについてきています。なぜ、それを寄贈してくださる同人誌さんにこちらから連絡をしないかというと、もともとこちらから求めているわけでないので、紹介の義務化をさけるためです。本来、同人誌の作品紹介は、寄贈していただいた御努力に報いるためもありますが、それとりも希少な情報としての社会価値を記録に残すという意味合いがあります。ですから評論ではなく、紹介なのです。

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2019年2月19日 (火)

「社協を問う」(小野友貴枝)の読みどころ(2)

 本書の書評が神奈川新聞に掲載されたという。そこには普段は、知ることのない「社協」内部事情に対する興味が指摘されている。≪参照: 「社協を問う」書評など多方面で好反響
 ここでは、難しい立場から新会長が、行った体質改善の事例を取り上げてみる。フクション形式であるが、事情は事実に近いであろう。
 まず、民間団体の建前であるが、実質的に市の支援があるので、職員には公務員的意識がある。そこで、新会長は、業務への住民のためという意識改革に、職員バッジを作ることを考える。これは、職務の本質を再認することで、クレーマーの対応などに、適切に対応する心構えに役立つ。
 クレーマーは、応対者の言質をもとにさらにクレームを重ねてくる可能性があるので、対応対策の時間を稼ぐために、相手の言葉をオーム返しに繰り返すことも一つの手段である。「〇〇なのはけしからん」といったら、「〇〇なのはけしからん、とおっしゃるので?」、と、自らの言葉を発しない工夫をするのである。
 また、本書では、新会長が、オフィスのレイアウトを変更する。これは、従来の延長ではなくなるということを、職員に強く認識してもらう意味で、有効である。ビジネス界では、管理職が配属替えで、新部署に就任した場合の常套手段とも言える。
 その他、バスの運営の廃止などコストカットの方向付けや、地域の町内会が「社協」の会費を負担することが多く、町内会との事情調査の事柄がある。本書にはないが、他地域では事情の説明不足で、町内会員から疑義が生まれている場合もあるようで、「社協」のへの認識を新たにさせてくれる。(北一郎)


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2019年2月17日 (日)

「イングルヌック」第4号(大阪市)

【「積読地獄 江戸川乱歩」新城理】
 江戸川乱歩といえば、少年読み物の少年探偵団と怪人二十面相・四十面相、明智小五郎と小林少年。大人向けでは「人間椅子」「屋根裏の散歩者」などが有名で、自分も読んだ覚えがある。ここでは、その他にも人によっては知られざる作品があるようで、その薀蓄を読むのは面白い。
【「五百万円」猿川西瓜】
 五百万円という金を内蔵している黒い粉末の塊の物体か生き物がいて、主人公は、札束を出すたびに出す黒い汚れを掃除して、何年も過ごしている。なにやら、その物体が五百万円を使い切ると消えるらしい。お金と人間との関係について、その不毛さを描いているようだが、それをめぐる人間関係に筆が及んでいないのが、物足りない。何か、カフカの「父の心配」という作品に虫とも動物ともつかない奇妙な生き物「オドラデク」が登場しているが、そのようなものなのかも知れない。
【「夕陽だったらよかったのに」猿川西瓜】
 自殺を自由に受け入れてくれる施設があって、そこには「生きることも死ぬこともできなくする」病の女などが入っている。これは現代の引きこもり状態のことで、何の不思議もない世界であるが、それを不思議風に描くとこうなるのか、と思わせる。
【「箱の中、箱の外」新城理】
 コーヒーショップで働くエレーナは、ある日、店の前の広場に、ガラスの箱が置いてあるのを見つける。よくわからないが、この世の中の見える部分と、見えない部分の混在する事態を表現したのか。
【「アングリアの影」新城理】
 この小説によると、英国文学の古典的名作「嵐が丘」のエミリー・ブロンテ、姉で「ジェン・エア」のシャーロット・ブロンテは有名だが、そのほか妹にパトリック・ブロンテ、長男にブランウェル・ブロンテがいたそうで、それぞれ文学的才能に恵まれていたら石井が、結核で若死しているらしい。ゴシック・ロマンの時代の牧師の家庭を、ブランウェルの視点で描く。かなりの長さの中編で力作であろう。自分には、時代感覚が現代風になっているのを感じるが、それも世代のちがいとしか、言いようがない。前半部がやや浮いていて、退屈であるが、後半になると人物の存在感が出てくる。
発行所=大阪市中央区粉川町2-7-711、猿川方。
紹介者=「詩人回廊」北一郎。

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2019年2月14日 (木)

上田岳弘さん「ニムロッド」一人目の読者の言葉 支えに

  第160回芥川賞(日本文学振興会主催)に決まった上田岳弘さん(39)=「ニムロッド」(群像12月号)=と町屋良平さん(35)=「1R(いちラウンド)1分34秒」(新潮11月号)=が受賞を機に、心境の変化や作家生活を支えてくれた人々への思いを寄稿した。
  「作家になる人は時期がくればなる」。思春期の頃の僕は、過去にある作家がインタビューでそう言ったのを読んで、「そういうもんか」と素朴に納得していた。下手をすれば小説を書いていなくても、自然の流れでなるものかもしれない。そう思っていた節がある。元の発言をしたのは今回の芥川賞の選考委員の中のお一人だったから、受賞会見後の会合で直接ご本人にもこのことを伝えたら、腑(ふ)に落ちないような顔をされていた。いろいろと、僕は迂闊(うかつ)なんだと思う。
 さすがに一つくらい、小説を書き切らなければ作家にはなれないだろうと思い、一念発起したのが、20歳過ぎの頃。公募の新人賞の存在すら知らなかった僕は、初めての小説に取り組みながら、作品を誰に読ませようかと考えていた。そう悩むまでもなく白羽の矢を立てたのは、大
【参照:産経ー芥川賞に決まって 町屋良平さん、上田岳弘さん

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2019年2月13日 (水)

町屋良平さん(35)=「1R(いちラウンド)1分34秒」

  第160回芥川賞(日本文学振興会主催)に決まった上田岳弘(たかひろ)さん(39)=「ニムロッド」(群像12月号)=と町屋良平さん(35)=「1R(いちラウンド)1分34秒」(新潮11月号)=が受賞を機に、心境の変化や作家生活を支えてくれた人々への思いを寄稿した。
「 町屋良平さん…「好き」の気持ち まる子から」
 さくらももこさんが好きだ。昨年お亡くなりになったときは、なんともいえない、かなしいとも淋(さび)しいともいえない、形容しがたい気持ちになった。思えば、なぜさくらももこさんのことをこんなに好きなのかということすら、正確にはわかっていないのだった。
  インタビューに応じたとき「ご自身をちびまる子ちゃんの登場人物にたとえるなら?」という質問をいただいた。取材をうけるのがあまり得意でない自分は、(藤木かな…卑怯(ひきょう)だから…)などと一瞬考えたが、ふと思い直し「まる子ですかね」とお答えした。よくよく考えたらまる子の小賢(こざか)しいところや知恵の回るところ、しかし素朴なところはひたすら素朴で、物事の捉えかたが突然シンプルに感じられるところなど、まる子に似ているといえなくもない。ここまで書いてきてようやく気づいたのだが、まる子にはどのような人間もどこかで「自分に似ている」と思えるような、普遍的な「人格」というのが備わっているのかもしれない
【参照:産経ー芥川賞に決まって 町屋良平さん、上田岳弘さん

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2019年2月12日 (火)

「社協を問う」(小野友貴枝)の読みどころ(1)

 本書は、公益社団法人「日本看護協会」の常任理事をしていた英田真希(はなだまき)が、地域の「社会福祉法人「社会福祉協議会」(通称「社協」)の会長に任じられ、その改革に力を尽くした記録である。タイトルの「社協を問う」はそこから来ている。≪参照:地域住民と共に「社協を問う」刊行の意義
 地味な存在ではあるが、原則として、民間の立場から社会福祉活動をしているのが、「社会福祉協議会」である。最近は、高齢者社会になって、介護されるものと、する立場の人たちが増えたので、何らかの形で地元の「社協」を知る人も少なくないであろう。
 もとは戦後米国GHQによって発案され、住民による住民のため福祉活動の「社協」が建前だが、実態は自治体の事情に合わせて、その内情は様々である。
 本書は、はからずもそうした各地の比較対象となるような、有益な具体的事例が、語られている。この小説化した舞台は、大山市のケースになっている。
 本書でもまた、ーー市民からは、「社協」はなにをしているのか分からない」とよく言われるとているーーと指摘している。そのたびに「あんないー市社居」ガイドブックを見せるが、「要は市役所の下請け?」と言い返されるというのだ。昔は、低所得者に救援物資を配った時代ならば具体的で分かりやすかったが、今は独り暮らし高齢者支援や、福祉相談、福祉教育、ボランティアの養成などが重要で、なかなか理解されにくいという。
 これでわかるように、市役所の支援の予算が資金の大勢を占めている公務員的なのだ。市長の女性の活躍の方針の具体化に、彼女に白羽の矢が立ったのだ。
 英田は、看護師の世界で地道に努力してきた経歴により、外からの抜擢であったが、組織内では「会長、ナースあがりなんだって?」といわれたそうである。そこには、ナース(保健師助産師看護師)という職業に対する皮肉や侮蔑のニュアンスがあるのだという。
 大山市の「社協」はもとは市の運営であったものを、独立組織にしたのだという。非営利組織であるから、モチベーションが弱い。そこを、地域住民のためにという意識に、緊張感とやりがいをもって働けるようにするか、その改革の具体例が描かれている。
 ここに描かれた幾つかの事例は、ビジネス人にも参考になる、気付いたところをピックアップしていこう。(つづく)(北 一郎)
 

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2019年2月10日 (日)

平野啓一郎『ある男』が第70回「読売文学賞」の小説賞に

 第70回「読売文学賞」を読売新聞社が発表。小説賞には平野啓一郎『ある男』(文藝春秋)が選出された。同賞は小説を含む6部門で前年の最も優れた作品を選ぶ。その他の受賞者は以下の通り。
▽戯曲・シナリオ賞=桑原裕子「荒れ野」(「悲劇喜劇」18年5月号)/▽随筆・紀行賞=西成彦『外地巡礼 「越境的」日本語文学論』(みすず書房)/▽評伝・伝記賞=渡辺京二『バテレンの世紀』(新潮社)/▽詩歌俳句賞=時里二郎『詩集「名井島」』(思潮社)/▽研究・翻訳賞=古井戸秀夫『評伝 鶴屋南北』(白水社)。
 コメントは《平野啓一郎公式サイト》に。

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2019年2月 7日 (木)

文芸同人誌「仙台文学」第93号(仙台市)

【「狐鬼日記」秋葉遼】
 日記形式の日常生活エッセイである。2018年7月14日から10月29日の生活感情を間歇的に記録している。なかに「反骨。気骨。偏屈。頑固。こんな歳になるとそんことはどうでもいい。良くも悪くもこれらは私の個性である」とある。悠々自適。日々好日の精神が読み取れる。現代のなかの人生観を表現した文学であることを感じさせる。
【「方言訳と出会う(我が逍遥遊)」石川繁】
 芥川賞の高橋弘希」、若竹千佐子「おらおらでひとりでいぐも」など、方言のニュアンスを活用した作品の例を示し、方言の持つインパクトの強さを、須賀敦子の欧州各国の地域主義の根強さや、井上ひさしの「吉里吉里国」における文体の効果を語る。労作である。
 中央集権で国民の意志が反映されない昨今では、地域から起こす民意の反映の重要さを示唆するものでもある。
【「再読楽しからずやー梶井基次郎『冬の日』」近江静雄】
 梶井基次郎の文章の詩的情念の名作として「冬の日」がある。作者の文学感に与えた影響ともに、その味わいが語れる。自分も梶井は好きなので共感をもって楽しめた。
【「高浜虚子詩一編の謎―25-夏目漱石と二人だけの新境地開拓詩」牛島富美二】
 漱石と虚子が、あまり知られないところで、短歌や俳句の短詩世界を楽しんだ形跡を明らかにする。作者の研究度の深さと博識に驚く。
【「戻り船」笠原千衣】
 家族を中心とした情念を語る物語。ちょっと古めかしいが、独自の幻想性や情念を語るのに、良く合った文体で、雰囲気小説の純文学的作品に読める。なかなかユニークな味が出ている。
【「記憶の島」渡辺光昭】
 生田は、働き盛りの40代にパニック障害という病になってしまい、会社も休むほどの症状。治療に専念している。悪夢に悩まされ、うつ症状も出て、社交性を失っている。家族に理解が会って、幸いなことに家庭的には問題がない。病をかかえ、ものごとが暗い印象でしか受け取れない。そのなかで、高校時代に野球部で活動していた同級生から連絡がある。がんで入院しているが、会いたいという。そこで、病院に見舞いに行くと、いまは離婚して妻と子供とは別れ、孤独な生活のなかで、このまま人生を終える覚悟を話してくれる。
 内容がパニック障害になった話と、がんになった友人の話の二本立てで、生田の死に至らない病気と、死に向う友人の比較ということになっている。「寂しいけれども、悲しくははない」という友人も言葉が印象に残る。パニック障害には、個人によって病状の姿に異なる特徴があるのだが、ここでは一般的に描かれている。この病気にかかった、スポーツマン、芸能人は多いし、自分も仕事で会う人にこの病気の人が多いのに驚いたことがある。
【「くろかみながく」牛島富美二】
 定年退職後の生活の在り方を模索する亮造の出来事話。3・11の東日本大震災の家族体験は、夫人の体験がリアルである。あるとき、古本店にいくと、自分の持っていた「藤村詩稿」という文庫本がある。かれはそこに「くろかみながくやはらかきをんな」と書いておいた。ところが、誰かが追記してあり「をとこのかたることのはをまこととおもふ」とし、桜井稚子という名が書いてある。そこで、店に彼女について調べて追求し、彼女に会うことができる。文学通ならではの専門的知識に富んだロマンチックな話で、楽しめる。
発行所=〒981-3102仙台市泉区向陽台4-3-20、牛島方。「仙台文学の会」
紹介者=「詩人回廊」北一郎。

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2019年2月 6日 (水)

西日本文学展望「西日本新聞」(1月31日)朝刊=茶園梨加氏

題「母」
鳥海美幸さん「支配」(「龍舌蘭」197号、宮崎市)、有森信二さん「白い秋」(「海」第2期21号、福岡市)
樋口かずみさん「そのバラとは……」(「文芸山口」343号、山口市)、黒木日暮らしさん「黄金の間」(「龍舌蘭」197号)、井本元義さん「静かなる奔流」(「海」第2期21号)
「龍舌蘭」197号は久保輝巳さん追悼特集号
文芸同人誌案内掲示板:ひわき さんまとめ)

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2019年2月 4日 (月)

文芸時評1月(東京新聞2019年1月31日)=佐々木敦氏

 (一部抜粋)
 三度目の候補で芥川賞の栄冠に輝いた上田の『ニムロッド』は、私は会心の出来だと思ったが何故(なぜ)か芥川賞の候補にならなかった秀作『塔と重力』に続く、リアリズム路線の作品である(以前の上田は時空を超える荒唐無稽な設定が多かった)。
 物語の鍵となっているのはビットコイン(仮想通貨)で、インターネットのサーバー保守会社に勤務する中本哲史が、ある日社長からビットコイン採掘(マイニング)の新規事業をたった一人で任されたところから物語は始まる。主人公の名前はビットコインを発明した人物の名前サトシ・ナカモトと同じである。
 ニムロッドとは中本の元同僚、現在は遠方に住む友人のあだ名で、小説家になる夢を抱き続けている。中本の恋人で、過去に別の男との中絶と離婚の経験がある紀子が三人目の登場人物である。中本の物語、中本と紀子の物語、ニムロッドが中本に送ってくる小説の断片が並走しながら話は進んでいく。
 町屋は前回(第百五十九回)『しき』で初めて候補となったのに続く二度目の芥川賞候補での受賞である。「純文学」らしくない題材を進んで扱うことで注目されてきた(たとえば『しき』ではネットの“踊ってみた”動画が物語の中心に置かれている)作家だが、タイトルからもわかるように『1R1分34秒』はボクシング小説である。
 とにかく理屈っぽくて自意識過剰な「ぼく」はウメキチというトレーナーと出会うことで変わっていくのだが、小説はボクシングという肉体の戦いを描きつつ、「ぼく」とウメキチの思考のやりとりが主眼となっていく。作品数からすると受賞はまだ早いような気もしていたのだが、上田とはまた違ったタイプの「新しい文学」の担い手であることは疑いない。
 「すばるクリティーク賞」が発表された。受賞作は赤井浩太「日本語ラップfeat.平岡正明」(『すばる』2月号)。タイトル通り、先鋭的なジャズ評論家だった平岡正明と、すでに長い歴史を持ち、ヒップホップ/ラップを生んだ国アメリカとはまた異なる進化を遂げていると言ってよい「日本語ラップ」を縦横に掛け合わせてゆくことで、現在の日本におけるオルタナティヴ(既存のものに代わる)な政治性と運動論の契機を見出(みいだ)そうとする、一種の「革命」論である。
 赤井は二十五歳で、この年齢が若いと言えるのかどうかはともかく、文体はやたらと威勢が良い。青臭いと言ってもいいかもしれない。挑発を通り越して悪罵と思えなくもない先行者への批判の舌鋒(ぜっぽう)や、言いっぱなし的な脇の甘さも気にはなる。
《参照:上田岳弘「ニムロッド」 町屋良平「1R1分34秒」 佐々木敦

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2019年2月 3日 (日)

安田純平氏のサムライ的目配りの理由

  安田純平氏は、シリアでの拘束生活の間、日本社会の変化に対応するのに苦心しているという。当初、TV報道で安田氏を見た時に、まるサムライのような目配りをする人だと、その緊張感をもった眼光に魅せられたものだ。昨年年末に、直接会って話をきいたが、その時は、日本のクレジットカード会社の応対の苦情などの冗談をいう視線は、非常に柔らかさを取り戻していた。それが、今年になってみると、油断のない視線は薄らいだが、やはりどこか緊張感のある表情が消えない。これからが、生活感回復のじきなのであろう。《参照:安田氏と語る「危険地報道報告会」(1)自己責任論の背景》。おいおいその様子を推論していきたい。

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2019年2月 1日 (金)

文芸同人誌「私人」第97号(東京)

【「サミュエルと仲間たち」えひらかんじ】
 ちょっと愉快になるというか、心が軽くなる話である。1963年のアメリカに暮らした作者のロスからメキシコに向かう旅路の記録である。映画ではヒチコック監督、ジェームス・スチュアート、キム・ノバックの「めまい」、M・モンローの「お熱いのがお好き」が流行った時代である。日本でも、団塊の世代若者の消費が経済を成長させ、「平凡パンチ」「プレイボーイ」が読まれた。「ルート66」やケアラックの「オン・ザ・ロード」などの米国文化も入ってきた時代である。違和感がなく、ガールハントの様子も面白い。人種差別問題にふれるところがあるが、これは今もなくなっていない。アメリカには車検がないので、どんなオンボロ車でも、高級車でも、同じ高速道路を走っている面白さ。当時の仲間の一人は亡くなったが、他の友は元気だという。これを読むと、現在の日米の世相の暗い雰囲気を嘆きたくなる。
【「たむしば」根場至】
 朝子夫婦は、日野市に居を構えて、良枝と直樹の二人の子供を育てた。今は、良枝もな樹も家を出て家庭を持っている。朝子の夫は、11年目に病没し、現在は一人暮らしである。
 娘夫婦は、朝子の病気を機に、家を売って自分たちと同居することの話を進める。しかし、朝子は夫の植えたニオイコブシの樹を「たむしば」といって興味を示す男が現れたりして、夫との家を去る気持ちを失くす。朝子の立場をよく説明して納得させる。ただ、文学的な感興を生み出すには、理屈に合った合理性だけでは充分でない感じがした。
【「ばらの名前」みず黎子】
 仁美の夫の姉の洵子は70歳。仁美の家の隣に住む。親の資産があって生活費には困らないが、それなりに社会参加をしてきた。愛する人が存在したのかどうか、生涯独身で過ごす。晩年になって、引きこもりがちであったが、仁美夫妻に我儘をいいながら、結局亡くなる。一人の女性の人生を描いて、生きることの意義を考えさせる。
【「村井さんの食彩日誌」伊吹萌】
 料理の得意な家政婦が、豊かかで温厚な家族の村井家にその腕を見込まれる。思いのままに手腕を発揮する様子をユーモラスに語る。TVドラマ「家政婦は見た」のより甘く、ほっこり版のようで、才気のある語り口が楽しめる。
【「僕の愛妻日記~スケオタ編~」成田信織】
 40歳近くになって、5歳下の女性と結婚した。子供に恵まれず、間が持てない関係があったのか、妻がフィギュアスケートの観戦に凝り、羽生結弦に夢中になる。いかにもありそうな日常生活のなかの面白い出来事を語る。アットホームで、予定調和の範囲で安心して楽しく読める。
【「また逢う日まで」笹崎美音】
 百合子が長年親しくしていた純子が介護施設に入所したことを知る。それも精神科であることがわかる。純子の夫は社会的な地位があるので、そのことを外部に秘密にして、百合子の口の堅さを信頼して教えてくれたのだ。そこで、桃子の入院先を訪ねると、百合子を見分けることが出来、正常性を回復させる。結局、彼女は亡くなる。その経験を通して、精神病とされる病の認識を改めるヒントになっている。
【「女性しかいない社会―村田沙耶香『消滅社会』」尾高修也】
 掲題の村田SF小説の未来社会の女性中心のユートピア社会の構造を紹介し、その意味するところを解説している。人間も生物としての繁殖のための性行為をする。しかし、現代ではセックスが繁殖行為と快楽交流が分離してきている。
 いずれにしても、人間が必要とする欲望の道具になっている。しかし、この小説では、その欲望を抑圧するか、無化する社会の方向性をもつようだ。たしかに現代社会は、性欲を軸とした欲望生産が、ほかのカルチャーに奪われている傾向があるので、その辺を意識した作品らしいということがわかる。
発行所=朝日カルチャーセンター。発行人=〒364-0035埼玉県北本市西高尾4-133、森方。
紹介者=「詩人回廊」北一郎。

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