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2019年2月21日 (木)

同人誌時評「図書新聞」(2月16日)評者=越田秀男氏

 (一部抜粋) 『山よ動け女よ死ぬな千里馬よ走れ』(笙野頼子/「民主文学」1月号)――編集者のインタビュー企画、「文学は激変する社会状況に対し何が出来るのか」に対し、爆竹弾的文章にして返した。ブチギレた? いや理性的・理知的正論――「文学であろうがなかろうが人間は出来ることしかしない………出来ないことは出来ない」「文学はてめえらの兵隊じゃねえよ」「本当の文学は捕獲されにくい」「ジャーナリズムがもうぴったり蓋をされている時代でも……生々しい「嘘」……「大嘘」をかますから」。
 『美雨』(河合泰子/「夢類」26号)――「あたしたちくらいの年頃になると、ある日突然、死が腕を伸ばしてくる」、でも寄ってくれるのだから「幸せ」。そんな時、身元不明の娘が闖入、居着いてしまう。娘は寡黙だが、居てくれるだけで幸せ。やがて親友の死の知らせで狼狽える。娘は野良猫だった。
 『棕櫚の木のそばで』(谷本好美/「風土」18号)――四万十川を臨む限界集落、歯抜けの家々、ガラケーが役立つ。超高齢村人たちの姿を土地の言葉で明るくユーモラスに描く。
  『ヤマガラの里』(佐々木信子/「九州文學」7期44号)――病者の心象風景、ムンクの叫び声?――重い鬱病の主人公は叔母の家に転地療養するものの、叔母はじめ医師、カウンセラーとも意思疎通には厚い氷壁が。
 『山里に暮らして』(松葉瀬昭/「槇」41号)――第二の人生は小説書きと自給自足生活。となれば非加工の自然が押し寄せてくる。とりわけ餌を求めて田畑を荒らす動物たち。彼らの高度な知的レベルに驚く。この有り様を捉える作者の観察眼にも驚く。
  『終戦』(三咲光郎/「季刊文科」76号)――永井荷風、谷崎潤一郎、横溝正史の、終戦までの数日の姿と、玉音放送の受け止め方を描写する。永井は、死に追われる恐怖が去った後の喪失感と得体の知れない不安。横溝は昨夜見た幻影――見知らぬ子らの笑い声、池に沈む子の死体、池のさざ波――を反芻する。谷崎も幻影に現れた霊の群行に想いを巡らせ、「逃げ出したのか。祖霊や諸々の霊魂がこの国を沈む船のように見捨てて去っていくところを、自分は見たのではないか。」
  『童謡のセンチメント』(永野悟/「群系」41号)――童謡百年特集、赤い鳥創刊から百年。吉本隆明は「ナショナリズム」(現代日本思想体系)の解説で童謡の歌詞から大衆のナショナルな感性の変遷を抽出した。そのセンチメントを賞味。例えば『浜千鳥』は波の間に間に子鳥が親鳥を探す可愛らしい風景?――「波の国から生まれでる」「月夜の国へ消えてゆく」は明らかに、生命の生死を暗示している。永野は「“死”ということばは知らなくてもよい。童謡の世界では、かなたに、消えていくということでいいのだ」と子の心に寄り添う。
  『大手拓次の言語観と蛇の表象―『悪の華』を通じて―』(畠山達/「流域」83号)――磯田光一は最後の著作『萩原朔太郎』の中で、『悲しい月夜』を解釈するに当たって、“犬”のイメージの変遷を万葉期から解き明かした。
  『詩歴』(池戸豊次/「じゅん文学」98号)――随所に“蛇”のイメージを織り込み、まさにエロスとタナトスの世界。幼児から少年、青年へと成長する階梯ごとに、幼なじみ、病弱な従妹、年上の女、恋人を配し、そして恋人の死。姉に身の哀れを告げると「これではだめよ」「何が?」「カーテンが煙草で汚れているし、布団が湿っている」――空気入れ替え掃除洗濯開始! (「風の森」同人)
▼民主文学 〒一七〇―〇〇〇五東京都豊島区南大塚二―二九―九サンレックス二〇二 日本民主主義文学会/▼夢類 〒二一五―〇〇〇五神奈川県川崎市麻生区千代ケ丘七―八―一七 河合泰子/▼風土 〒七八三―〇〇四四高知県南国市岡豊町八幡七三六―一 杉本雅史 /▼九州文學 〒八〇九―〇〇二八福岡県中間市弥生一―一〇―二五 波佐間義之 /▼槇 〒二九〇―〇五一二千葉県市原市鶴舞七七七 岸本静枝
▼季刊文科 〒三九二―〇〇一二長野県諏訪市四賀二二九―一 鳥影社 /▼群系 〒一三六―〇〇七二東京都江東区大島七―二八―一―一三三六 永野悟 /▼流域 〒六〇六―八三一七京都府京都市左京区吉田本町二九 静山社 /▼じゅん文学 〒四六三―〇〇〇三愛知県名古屋市守山区下志段味字西の原八九七 戸田鎮子
《参照:文学に何が出来る?人間は出来ることしかしない!(「民主文学」)童謡百年特集、歌詞のセンチメントを賞味(「群系」)

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