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2019年1月21日 (月)

文芸同人誌「群系」第41号(東京)

【「葉片私小説(二)」澤田繁晴】
 「神品」、「お香の話」、「飲み屋の屋号」、「無欲」「雪下ろし」の生活の回想や趣味について断片を重ねている。散文しというより、エッセイふうである。自分確認の作業で、自己表現の色彩が強いが、千差万別の個々の人間の心の相(すがた)を切り取った文学のタネにはなっている。沢山書けば、断片集が長篇小説に変貌するという面白い結果を産むかもしれない。
【「東京に憧れた姉」小野友貴枝】
 悦子の姉、美代は70代だが、体調を崩したので救急車で病院に行ったら、入院がひつようだという。しかし、美代はそれを拒否。自宅で療養しているが、「悦子がきたか?」と、たびたび言うので、会いたがっているのではないか、と美代の娘から電話がある。
 悦子の姉妹は、長姉、次姉がいるが、美代だけ都内に住んで過ごしたという。電話を受けて悦子が美代に会うと、短時間の間に老化が進み、衰弱しているのに驚く。人の人生の終幕は、それぞれ異なるが、その一つの事例として、自分の体験と似たところと、異なるところなど、いちいち身つまされて読んでしまう。長い女の一生が、その人柄の特性を作者特有の人生観察眼の視点でピックアップされる。悦子の予感力の強さなどを挟んで、饒舌的文体がここでは有効に発揮されている。
 さらに息子が成人してから、引きこもり癖のような生活美代の精神を支えるところが、巧く表現されている。旺盛な執筆意欲が、文体の世俗性を超えて、文章に艶と光を帯びるように作用しているのが感じられる。
編集部=136-0072江東区大島7-28-1-1336、永野方。「群系の会」
紹介者=「詩人回廊」北一郎。

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