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2019年1月 9日 (水)

文芸同人誌「ガランス」第26号(福岡市)

【「そうぞうの時間」野原水里】
 中学校の生徒の話とは思えないほど高度な知的レベルの生徒と教師たちの話。「そうぞうの時間」というのを教師が設定する。想像でも創造でもよいから、そこで話し合いをしようというものだ。生徒の中に、愛美という生徒がいて、登校すると教室にいかず保健室にいって、好きな絵ばかり描いている異端の生徒がいる。
 この生徒が、「そうぞうの時間」に、芥川龍之介の作品「蜜柑」の解釈について、感想を述べ合うと、俄然興味をもち、クラスに溶け込んでいく。教師の苦労と、生徒の関係について、イメージの膨らむ良い作品であった。
【「十五歳の遺書」櫻芽生】
 夏鈴が中学高学年。彼女の母が、結核で入院。事情があって実家の神職をしている兄の家に世話になる。すると夏鈴は、母親の兄の光彦に強姦されてしまう。そのことは、秘密にして恨みが残る。光彦には結婚した妹がいて、その息子に蒼一朗いた。夏鈴とは幼なじみで、子供の頃よく遊んだ。そうしたなかで、ある雨の夜、光彦は妻の京子と寝室で寝ている時に、何者かの侵入者に襲われ殺されてしまう。
 その日、夏鈴は犯罪のあった部屋で、かつて蒼一朗にあげたストラップを見つける。それを、蒼一朗にそっと返す。そこで、蒼一朗が夏鈴と光彦の秘密を知っているのではないか、と疑う。その結果、彼が光彦を殺したと思いこむ。そこで、蒼一朗を救うため、自分が光彦を殺したという遺書を書いて、入水自殺をする。ですます調で、ミステリー雰囲気小説でまとまっている。ただ、読者に感じさせたいことを作者がどんどん語るので、何となく横溝正史を想い浮かべてしまった。
【評論「プラトン・ミュートス考(その3)」新名規明】
 ギリシャ哲学の学問的追求のようで、難しそうに思ったが、読んでみると現代思想の基本がここから出ていることがわかり、終わりまで通読してまった。結果的に面白かった。
 編集発行人=小笠原範夫。発行所=「ガランスの会」〒812-0044福岡市博多区千代3丁目2-1、(株)梓書院内。
紹介者=「詩人回廊」北一郎。

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