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2018年11月19日 (月)

第7回芥川賞の中山義秀の「厚物咲」に読む秘伝

  毎年、各地で菊花展が行われる。自分もずいぶん観にいた行ったものだ。《参照:秘術の成果を競う美!東京都観光菊花大会
 これは、まだ高校生の頃、薄い文庫で、中山義秀の「厚物咲」という小説を買った。それには、同時掲載で「ある死刑囚の手記」とかいうのがあって、自分はその方に興味があったのである。
 しかし、それよりも「厚物咲」に強い印象をもった。これは、菊花の栽培の秘伝をめぐる物語で、老境の人間が「厚物咲」という菊の見事な美しさを出すための秘伝を探りだそうとする男と、隠そうとする男の確執と執念の物語りである。よんでいて迫力に押された。
 同時に、小説の構造として、語り手がいつの間にか、登場人物に乗り移って、どちちらがどちらかわらないようになる。後に、これは第七回上半期、芥川賞(昭和13年)受賞作と知る。
  小説としては、おもわぬ歪みのある作品であったが、純文学というものが、作者の切実な気持ちの表れであれば、通常の形式から離れてもかまわない。感動が伝わる、と知った。
 そのひとの切実な心の生んだ文章なら、欠点のようで欠点でない。

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