« 「第二十七回文学フリマ東京」が1000を超えるブースに | トップページ | 同人雑誌季評「季刊文科」第75号(東京)=谷村順一氏 »

2018年8月23日 (木)

文芸同人誌「R&W」第24号(名古屋市)

【「怪根ホスピタル」森岡篤史】
 病院に入院すると、ベッドの下に異界の生物が住んでいて、病人を治したりするらしい。なんでそういうものがいるのか、など因果関係はわからない。エイリアンの逆パターンか。
【「できるだけ奥に避難してください」長月州】
 大学野球の選手の喬一が、膝を痛め再起不能らしい。地下鉄のホームの下にどこかに通じる道があり、そこから真希という女性に出会う。場所もあちらこちら移動するが、その因果関係が自分にはわからなかった。
【「日常の罪人」松本順子】
 出だしは誰だかわからない語りで、いま行く場所もわからず、どこに行くかもわからないという。もう読むのを止めようかと、思い始めたころ、ストーカーに追われる女性の話だとわかる。特に事件にならずに済む。現実より良い結果を想定することで、癒しとなるものなのか。
【「グループAとともに」渡辺勝彦】
 庭にやって来る雀の生態を楽しむ老夫婦がいる。夫の私は、ある人から購読している新聞を名を聞かれ、それに答えると「リベラルですね」と言われる。その後、なんとなく狙われているような気がして、同じ新聞を購読している友人に様子をきくと、当初はそのようなことはないと、言っていたのが、後にあるかも知れないというようになる。そのうちに、庭に来る雀を垣根の外に車が見え、スズメと自分を狙うようにモデルガンの弾が飛んでくる。そうした被害が次第にひどくなるので、本気で対策をとろうとする。終章で、その夫は精神病院に入れられたことがわかる。
 これは現代社会が何となく右翼化する様子に危機感を持った作品で、それを具体的な感覚で、受け止めてしまうと、世間から排除される。因果関係のはっきりしたものを読んで、一息ついた感じがした。
【「赤い橋」寺田ゆう子】
  孫娘の理沙は小さいときに、赤い橋のかかった場所を見て不思議な感じがする。祖父は、その橋を神様が渡る橋だと説明する。それから、祖父の視点の独白、理沙の独白、祖母の独白の形で、後継者と理沙が結婚しないことで、ひと波乱ある話。語り手が変わることで、話がややこしくなるようにしたのか。また、赤い橋がどんな意味をもつのか、よく理解できないところがある。少女と赤い橋という組み合わせで、まったく別の物語の予断が入ってしまって、それが外れたので、とまどった。
発行所=〒460-0013名古屋市中区上前津1^4-7、松本方。
紹介者=「詩人回廊」北一郎。

|

« 「第二十七回文学フリマ東京」が1000を超えるブースに | トップページ | 同人雑誌季評「季刊文科」第75号(東京)=谷村順一氏 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 「第二十七回文学フリマ東京」が1000を超えるブースに | トップページ | 同人雑誌季評「季刊文科」第75号(東京)=谷村順一氏 »