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2018年8月10日 (金)

季刊文芸誌「日曜作家」第23号(大阪府)

【「ふわふわスクランブルエッグ」椿山滋】
 母親が40代半ばの時、交通事故で亡くし、残された父親と高校生の娘のその後の生活を描く。およそ、父親と若い娘との関係交流はむずかしいとイメージがある。。しかし、ここでは亡くなった母親のおかげか、お互いに気遣いしながら、そこを支え合うように努力する。ある意味羨ましいような……。タイトルにあるように、ほっこりとしたテレビドラマ風な作品。
【「斜陽館の怨念」秋葉清明】
 斜陽館を巡る旅の文学的な旅行記。太宰治の作品「津軽」を通して、斜陽館の細部が学べるようになっている。また、話の橋渡しとして夏目漱石の「坊ちゃん」の登場人物のキャラクター性をもってくるのは、クスリと笑わせる。太宰ファンなら、知っているはずの事情や噂もよく取り入れて、大変な力技である。近年は、「桜桃忌」の参加者が増えているのか、減っているのかメディアの報道が少なくなっているように思う。SNSで「死にたい」と書き入れる人たちは、太宰の小説は読まないのであろう。本作を編集して写真入りにして、斜陽館向けに編集して、頒布したいような作品と思うのは、古い時代の人間であるためか。
【「底にいた蛙の話」夷井かづき】
 井の中の蛙になって、世界を見るとーーという想像力をで読む。蛙になった気分で物事を見るというのは、自分事でないという気楽さで読める。第四人称的な表現法によって、作者の「私」が書くという自分、読者にとっての自分という意識の転換をはかるのに有効であるとわかる。
【「五人五様(二)」野上史郎】
 「居酒屋だより」という作品もある。似たような構造のもの。人の噂話は小説の原点である。そのネタを書き連ねたようなものだが、それだけで、結構面白く読める。
【「悟りの果て空と海」大原正義】
 佐伯眞魚という密教修業者が、陰陽師の役小角を尊敬し、山野を駆け巡り修業をするという話。その佐伯が空海であるが、役小角と霊的な交流があったのではないか、という想像力の産物。これはこれで面白い。自分は、空海の鉱脈山の選別力や、中国での学問的な修得の早さから、一族が中国からの渡来人であったのではないか、と思える。日本仏教の傍流であったことにも合致するのではないか。
発行所=〒567-0064茨木市上野町21-9、「日曜作家」編集部。
紹介者=「詩人回廊」編集人・伊藤昭一。

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