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2018年8月 5日 (日)

「図書新聞」同人誌評(2018年8月4日)評者◆志村有弘氏

 岡山晴彦の戯曲童話「今様お伽噺 麦の穂」(Pegada第19号)。町の「廃校」の寂しさもあり、今はやりの「忖度」の言葉も見える。震災の傷を随所に示す哀しい作品でもあるが、心温まる力作。
 丸山修身の「古紙の裏から」(文芸復興第36号)が、推理小説を読む面白さ。名文句もある。古紙と共にあった位牌の一人ひとりの人生も知りたい。佳作。
 高原あふちの中篇小説「人間病患者」(あるかいど第64号)の登場人物は、それぞれ個性的だ。題名もうまい。ホームドラマになり得る作品。
 浅岡明美の「昼下がりの客」(創第12号)は、老人の罪の意識を綴る短編小説。老人の心に沈殿し続けた呵責。綺麗な文章で展開する良質の好短篇。
 福島遊の短篇「ひじり」(あてのき第45号)は、作中に『日本往生極楽記』などに見える賀古(加古)の教信上人の生きざまを記す。爽やかな読後感が心地好い。
 エッセーでは、岡谷公二の前号からの連載「山川方夫の葉書(二)」(飛火第54号)が、友人山川の書簡を紹介し、岡谷自身も含めて山川・「三田文学」を視座とする貴重な文学交友録を伝えている。
 同人雑誌連載の作品が単行本になるのを知ると、嬉しい気持ちになる。木村咲の小説『赤い土』(「九州文學」連載)は、一人の女性が厳しい異国の地で生き抜いてゆく姿を抒情豊かに展開させている。
 「浮橋」、「文の鳥」が創刊された。同人諸氏の健筆をお祈りしたい。追悼号ではないが、「民主文学」第663号に三浦光則が昨年十二月に死去した伊豆利彦、「天荒」第60号に岡崎万寿が二月に死去した金子兜太について(連載の上)、その熾烈な文学魂を綴る。ご冥福をお祈りする。
《参照:岡山晴彦の友情の絆を綴る童話劇(「Pegada」)――丸山修身の古い証文などから一家の歴史の謎解きをする小説(「文芸復興」)、孤愁・寂寥感を綴る詩歌群

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