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2018年7月 1日 (日)

文芸時評(東京新聞6月26日)村上春樹「三つの短い話」=佐々木敦s

  『文学界』7月号に、「最新短編3作同時掲載」として、村上春樹「三つの短い話」が掲載されている。実はこれは、ちょっとした事件である。村上の小説が狭義の「文芸誌」に載ったのは、二〇〇五年に『東京奇譚集』としてまとめられる諸編が『新潮』に連載されて以来、じつに十三年ぶりのことであるからだ。最新短編集『女のいない男たち』は、『文学界』と同じ版元ではあっても、総合誌の『文芸春秋』に載ったものだった。だからどうということでもないのだが、現在の「日本文学」における最大の異端児と言ってもよい、この特異な作家の「文芸誌的世界」への帰還(というのも大袈裟(おおげさ)だが)が、何かを意味しているのかどうか、少しだけ気になりはしている。
  「三つの短い話」は、実際どれも、かなり短めの作品である。だが、むしろそれゆえにこそ、村上春樹という小説家の個性と才能を端的に表した、純度の高い仕上がりになっている。三編とも作家自身を思わせる「僕/ぼく」が語り手であり、語られる物語は、いずれも彼がまだ非常に若かった頃の思い出が中心である。
《参照: 村上春樹「三つの短い話」佐々木敦

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