筒井康隆さん新刊「誰にもわかるハイデガー」を語る
今回の本は筒井さんが平成2年に行った講演が基になっている。その2年ほど前、後のベストセラー小説『文学部唯野教授』などの執筆に追われた筒井さんは、胃を痛めて入院。死が身近にある病院生活の中、手に取ったのが『存在と時間』だった。約1カ月で通読し「死を魅力的にとらえている。これを分かりやすく、面白く伝えたい」と思ったという。
「死への恐怖は自分固有のものだから、どんなに仲間を集めたってやはり震え上がる。でも死が避けられず来ることを認識し、きちんと向かい合うことで自分のすべきことに『真剣さ』がうまれる-というわけです。将来死ぬということに落ち込む人は相当いるけれど、これで多少はね、気が楽になると思うんです」
出版から90年が過ぎても『存在と時間』への関心は衰えず、国内でも入門書や新訳の刊行が相次ぐ。興味深いのは死をめぐる思想だけではない。〈世間に流通している普通の既成の解釈のパターンで何でもしゃべってしまうしゃべり方〉などと説明される〈空談(くうだん)〉への批判的なまなざしは、瞬く間にネット上で言葉が拡散するSNS全盛時代に重く響く。
《参照:産経=筒井康隆さん新刊「誰にもわかるハイデガー」 死を思い、生を見る》
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