文学の原理をガイドした菊池寛とヘーゲル哲学
「菊池寛の「日本文学案内」という著書が昭和13年に刊行されている。ここには、菊池寛の当時の日本の作家志望者に向けた指針と、文学の本質に沿った原理論が記されている。(現在絶版)。
なかには、作家になるために読んでおくべき必読者として、国内外の作品の解説がある。私が注目したのは、さ作家志望者に示した文学原理論であった。そこで、現代に共通するこの原理論を抜き書きした。その原理が、現在に至るまでの変化を比較してみたのが、「文学が人生の役に立つとき」である。《参照:暇つぶし以上「文学が人生に役立つとき」(伊藤昭一)解説》
これを読むと、日ごろの文学に関する漠然とした疑問が解決したように思えるが、実はそれはすでに古い時代のものなのである。
ただ、現役作家が世界と日本の古典から近代文学まで、俯瞰し展望を書くという作業を行ったことは不思議である。それが、菊池寛「半自叙伝」によると、彼は若い頃、作家になれるとは思えずに、大学の講師にあるつもりでいたようなのだ。だから、古今東西の文学論や、作家の傾向を研究していたらしい。その成果を「日本文学案内」にまとめたらしい。その思想の基本はヘーゲル哲学である。人間社会の意識は、段階的に発展する論理から、25歳以前に小説を書いても、知識だけだという、発想はがあるようだ。
原本は、旧仮名遣いで、ルビつき、いまはまったく知られない海外作家の解説などあるのを、必要部分だけチョイスしたが、ルビをはずし、時には旧仮名をそのままにして、時代の空気を残してみた。それで、純粋抜粋でもなく引用でもない、変な形になってしまたのであった。
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