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2018年4月20日 (金)

「砂」に読む2017「文学フリマ東京」出店録の余話(2)   北一郎

          ☆
 この文学フリーマーケットの発祥は、文芸雑誌「群像」に、マンガ原作者であり、社会的文化評論家である大塚英志氏が、大手出版社の純文学雑誌(「群像」、「文学界」、「新潮」など)の発行が、赤字となっており、出版社のまんが本による利益を食いつぶしているーーという趣旨の評論「不良債権としての文学」を発表した。
 そこには純文学作品が出版社の赤字のお荷物になると、やがて発表の場が消滅するか、純文学の質的な純粋性が失われるかもしれない。そうした危機感から、大塚氏は書き手自らが読者に作品を売るフリーマーケットを開催しようと、呼びかけたのです。
 その前年に、文芸同志会を一人で設立していた伊藤昭一が、文芸界の情報を集めるキューレーション新聞、「文芸研究月報」を発行していたので、その情報を得た。
 そこで、大塚氏に参加したいという手紙を書いた。すると、本来はもっと参加者が多いと思っていたが、予定の半数であるが、開催をしたいので、支援してほしいという返事が来た。そこで、大塚氏からチラシ(フライヤー)をもらい、文芸研究月報の読者である文芸同人誌に、それを配布し、参加を呼び掛けた。
 そのことによって、「群像」の読者で、マンガやライトノベルを中心とした大塚イズム賛同者のグループに、伝統的な文芸同人誌が多く参加する結果になったのである。しかし、いざ参加してしまえば、どこからそうした情報を 得たということは、忘れられる。運営者が代替わりしたらなおさらです。
 伊藤は、ちょうど「特選小説」という雑誌の編集部に創作を売り込んだところ、純文学的な官能表現部分を一部誇張して掲載された。(伊藤の記憶では、同誌にはかつて菊村到や勝目梓などの作家が書いていた。それが官能小説中心になっていたのである)。
  その後、それに女性の読者から本作が官能小説ではない文学性があるという投稿があった。編集長は官能小説雑誌を主婦が丁寧に読んでいることに注目。次作の注文を出し、伊藤鶴樹という筆名で、ロマンポルノの小説復活させる新人作家として、表紙にうたって作家デビューした時期でもあった。そこで、プロもアマも同時の文学市場で、作品を売るというのは、大変都合が良かったのである。
  第1回文学フリマの参加では、「砂」の会員も沢山いて、作品展示者も多かった。なかには作品を文芸春秋社の新人発掘担当者に読んでもらった人もいた。終わった時には、渋谷の飲食店で打ち上げ会を実施した。
  反省会でも、文学賞受賞に近い位置にいる新人作家の出店もあって「なかなか華やかだった」ということが話合われ、盛り上がった。その人たちのメンバーで、現在も会員でいるのは山川豊太郎氏と江素瑛氏と北一郎である。
  ただし、「砂」誌と文芸同志会の連携による文学フリマ参加活動は継続されてきた。 (つづく)
本稿は雑誌「砂」136号に掲載のーー「砂」の会と文芸同志会が2017文学フリマ東京に出店(北 一郎)-を連載形式で分載するものです。《参照:雑誌「砂」のひろば
文芸同志会の出店風景

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