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2018年3月 2日 (金)

第7回自由報道協会賞に「ブラックボックス」(伊藤詩織)が受賞

 今年の自由報道協会賞に《伊藤詩織『Black Box』(文藝春秋)》に決まった。この本は、強姦されて「いたい、いたい」と叫んだなどという、かなりエロい話が事実として書いてあるのだが、おそらくテレビや新聞で、あまり報じられていないであろう。
  実際に読むと、エロい感じは、どこかにいってしまう。ここには、前にも述べたが、作者の自我の確立の苦悩が伝わってくる。
  ただ「ブラックボックス」248頁に作者が、この事件の整理をしている箇所がある。
 ――あの日の出来事で、山口氏も事実として認め、また捜査や証言で明らかになっている客観的事実は次のようなことだ。――とする部分を引用する。
          ☆
・TBSワシントン支局長の山口氏とフリーランスのジャーナリストである私は、私がTBSワシントン支局で働くために必要なビザについて話すために会った。
・そこに恋愛感情はなかった。
・私が「泥酔した」状態だと、山口氏は認識していた。
・山口氏は、自身の滞在しているホテルの部屋に私を連れて行った。
・性行為があった。
・私の下着のDNA検査を行ったところ、そこについたY染色体が山口氏のものと過不足なく一致するという結果が出た。
・ホテルの防犯カメラの映像、タクシー運転手の証言などの証拠を集め、警察は逮捕状を請求し、裁判所はその発行を認めた。
・逮捕の当日、捜査員が現場の空港で山口氏の到着を待ち受けるさなか、中村格警視庁刑事部長の判断によって、逮捕状の執行が突然止められた。
 検察と検察審査会は、これらの事実を知った上で、この事件を「不起訴」と判断した。
 あなたは、どう考えるだろうか。
           ☆
 本書は、これだけの事実の間における、内面的な苦痛と、刑事事件として告訴することによる、社会な人間関係の破綻と、個人のプライナシーの情報の公開による苦悩が記されている。
  それでも、悪いことをしても逮捕されない出来事がある。警察人が、どのようにして出世するかが学べるのだが、お茶の間でのテレビとは相性が悪く、放送されない事件もあるということが、わかるのだ。

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